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171.新学期3

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ファブリッツィオの連続攻撃も同世代の中では、
最優秀の部類にはいる実力であった。
そのファブリッツィオにシエンナは、
しょうもない掛け声と共に躱していた。

「はっほっ、はっぁーはっほう!ほう、はっ」

奇妙な掛け声に周囲から、押し殺した笑いが聞えた。
それは、攻め切れぬファブリッツィオの焦りと激昂に
拍車をかけた。

ヴェルは我慢できなくなったのか、杖を止めて、
笑い出した。

誠一は、軽くヴェルの頭を杖で叩いた。

「いや、アル。無理だろ!
おまえだって、アレをやられて、
シエンナから一撃を受けているだろ。
無理無理、シエンナの相手から冷静さを失わせる術は、
秀逸すぎるって!傍から見てると無理、面白過ぎ」

周囲すら利用して、相手を翻弄するシエンナの術に
誠一は、感心していた。
いつの間にか他の生徒も杖を止めて、
二人の組打ちの行方に注目していた。

「ぐっ、くそおぅー。真面目にやれ」
腕力にものを言わせて、
シエンナを押し切ろうしたとき、上手くいなされて、
よろけるファブリッツィオであった。

そのまま、足元への一撃がシエンナから放たれた。
何とか直撃をさけたファブリッツィオであったが、
そのまま、しりもちをついてしまった。

肩に杖を置き、見下ろすシエンナ。

「ぬううぅー我慢ならん」
ファブリッツィオは、素早く立ち上がると、
5mほどの距離を素早く取った。

杖を剣のように握り、瞳を閉じて、構えた。
彼の高まる集中力は、周囲の面々にも
十分に感じることができた。

「おいおい、アル。ありゃちょっと不味くないかな?
ストラッツェール家の秘剣を繰り出すつもりじゃないか?
しかも気力に体力十分な状態で!」
流石にヴェルは心配しているようだった。

シエンナは誠一、ヴェル、そしてファブリッツィオと違い、
訓練も努力もしているが、純然たる魔術師に重きをおいていた。

シエンナはローブを素早く脱ぎ、
ファブリッツィオの視界を覆うように放り投げた。

瞳を開いたファブリッツィオの視界は
紺のローブで遮られていたが、
慌てて技を繰り出すような愚かな真似はしなかった。

ローブはひらりひらりと地面に向かって
落ちていった。

ファブリッツィオは後出しでも先にシエンナを
捉えられることを確信していた。

故に待ち。

 ファブリッツィオの眼前に広がる紺一色の世界から、
次第に普段の風景が広がりはじめた瞬間、
杖が凄まじい勢いで飛来した。
杖による突きか!
瞬時でそれを認識したファブリッツィオは、
必殺の一撃を放った。

「剣閃二段切りりぃー」
剣でないが、その技は充分に
シエンナを捉えることができる力を有していた。
杖は粉々に砕かれ、シエンナも地に臥すだろうと
思える威力であった。

シエンナに当たりさえすれば。
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