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261.宴7

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「魔道槍兵を舐めるな!」
魔道槍兵のスキルの一つが発動していた。
槍の穂先に宿らせる魔術を破る術が発動していた。
拳を槍の穂先と見立てて上手くヴェルは発動させていた。
ヴェルの拳が障壁に触れた瞬間、勢いは削がれたが、
障壁を構成する魔術陣がガラス細工のように砕け散った。
ヴェルはそのまま、ゼリアムに突撃せずに側方に転がった。
その真後ろには、最小の風を纏っている誠一が
勢いそのままにゼリアムに突っ込んだ。
余裕綽々で全く防御の姿勢をとっていなかったゼリアムは、
鳩尾に強烈な突きを喰らって、その場に膝をついた。
地面に臥すまでに至らなかったのは、能力の高さ故であった。

ガイダロフは、咄嗟に叫んだ。
「司祭、回復だ!回復させろ」

ガイダロフの後方に隠れていた司祭のグレームは、
回復の祈りをゼリアムに唱え始めた。
「苦しき者への癒しを与え、ぎゃっ」

ごつん、嫌な音が大広間に響くとグレームは
祈りを中断して、額を抑えていた。額からは血が流れていた。
グレームの足元に一個のジョッキが転がっていた。
ガイダロフの両手には各々ジョッキが握られていた。
そのまま、ガイダロフはジョッキを握り潰した。

ガイダロフの眉間は幾層にも皺がより、
こめかみには青筋がたっていた。
「てめーら、舐めてんじゃねえぞ。もはや、遊びじゃねえ。
四肢を潰して尚、生きてること一生後悔させてやれ」

「あらあらー当たってもないのに頭から血が噴きでそうね」
ジョッキを投擲したのはキャロリーヌのようだった。

痛い痛いと騒ぎ立てるグレームをガイダロフが一喝し、
ゼリアムを回復させる様に急かした。
「アル、頭を蹴り飛ばせ!」
ヴェルが絶叫した。

誠一は、人の頭を容赦なく蹴り飛ばすことを一瞬、躊躇した。
そして、その一瞬を見逃すほどゼリアムは甘くなかった。

「ぐあああー」
どちらの叫びか定かでなかったが、
誠一はゼリアムの両腕によって胴を締め上げられていた。

「馬鹿野郎、何躊躇してんだ!アル、甘いぞ」
ころころ転がっていたヴェルは、ゼリアムの背に回っていた。
そして、躊躇なくゼリアムの股間を蹴り上げた。

「ぐあああー」
今回は、明らかにゼリアムの叫び声であった。
両腕の戒めが解けた瞬間、誠一は前のめりになっている
ゼリアムの腹部に膝蹴りを放った。

ロジェは、盗賊と弓兵らしき男と対峙していた。

「死んで後悔しろ」
盗賊は短剣を右手に構えた。
無論、ただの短剣ではなく、毒が塗布されていた。

「ふん、弓がなく狙撃できぬと思っているのか。
まあ、あの女の様にジョッキを投げるような下品な真似はせんよ」
弓兵は手にスリングと小さな鉄球とを持っていた。
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