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551.大会戦23

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「くそっ。逃げられたか。臆病者め」
誠一がシャクマトを罵ったが、反応は別の方から返って来た。
「くそっ。アルに先を越された!」
ヴェルが地団駄を踏んでいた。

「ヴェルぅぅー!そんなことどうでもいいって。
それより敵はわらわらと際限なく現れてるから」

「まっそれもそうか。倒した数で圧倒すればそれでいいかな」
誠一の言葉を上手く脳内変換したヴェルは、
ハルバートを掲げて巨大な槍を振るう槍兵と対峙した。
無論、ヴェルの隣にはアミラが拳を構えていた。

「そうなのです。ヴェルの言う通りなのです」
ヴェルの隣に立ちアミラが拳を構えていた。

威勢よく振舞うが、彼等に立ちはだかるのは、
世に名の知れた強者たちの冒険者。
じわりじわりと誠一たちは押し込まれていった。

「流石にこの数と高レアリティの面々が相手だと、
押し込まれざるを得ないな」
辛うじて致命傷は避けているが、かなりの傷を負っているロジェは
肩で息をしていた。

対峙する敵は余裕綽々であった。
「レア度がRにしては中々やるが、所詮はそこまでだ。
拝跪して足を舐めるなら、命まで取らんがどうする?」

答えるのもきついのか、息を荒げながらロジェは
愛用のツヴァイヘンダーを振り下ろした。

「それが答えか。なら死んどけって。あーったく、うぜえ」
寸前のところで矢を払った敵は、矢の飛来した先を睨みつけた。

「まったくロジェは少し走り込みが足りないようですわ。
次の旅では一番走って貰いましょう」
キャロリーヌはまだまだ余裕があるようだった。
しかし、矢玉の数は心許無くなっていた。

「アル、このままじゃジリ貧だぞ。どうすんだ!」
「アルフレートさん、このままですと不味いです」

突っこみ担当が二人になり、余計にうざく感じる誠一だった。
「分かっているって!ここは戦場だ。
必ず変化があるそれまで耐えて」
一瞬だが、誠一は遠くにいるダンブルを見た。
ダンブルは興ざめした表情であった。
飽きたのか誠一に全く興味を示さなかった。

カァーと誠一の頭に血が上った。
馬鹿にしやがって、今の状態にコールバーサークを
重ね掛けすれば、この程度の距離は一瞬で詰められる。
「狂え狂え、我に眠る狂戦士を目覚めよぉぉーいてっ」

「アル、落ち着きなさいって。らしくもなく熱くならないでよ。
ヴェルじゃあるまいし」
シエンナに叱責されて我を取り戻す誠一であった。
再びダンブルの方へ目をやると可笑しそうに笑っていた。

「シエンナ、ありがとう」
シエンナに声をかけながら、対峙する敵を薙ぎ払う誠一だった。
少しでも余力があるうちに撤退すべきかその思いが
誠一の心の片隅を過ぎった。

「アルフレート君!心を強く持て!初心を貫徹しろ。
必ず変化が訪れるんだろう」
ロジェが気力を絞って叫んだ。その時だった。
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