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572.それぞれの思惑11
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その夜、誠一はベッドに寝転びながら暗がりの中、
天井を見つめていた。
「早まったかな」そう誠一はぽつりと呟いた。
後先考えずに威勢のいいことを言うヴェルですら、
何も言わなかった。
最上級の遺跡の難度を肌で触れるだけでも
自分たちに足りないものが何かを明確に知る機会になると
誠一は思った。
しかしそれは、どうやら早計過ぎた思い付きだったのだろうか。
誠一は暗い天井を見つめながら自問自答した。
誠一はベッドから立ち上がり窓に目を向けた。
空気が揺れたような気がした。
この部屋は二階であり、壁を音もなく昇って来られる訳ないと
かぶりを振り、風かなと誠一は思い直した。
コンコン、窓が叩かれる音がした。
誠一はベッドから跳ね起き、7面メイスを手にした。
真っ黒な顔の輪郭をしたモノが窓越しに誠一の目に映った。
真っ黒な顔の口の辺りが蠢いた。
「バッシュ様の使いだ」
誠一は窓を開けた。にぃと黒い顔が笑ったような気がした。
「部屋に入る必要はないだろう。用件を言え」
「くっくくく、強気のだな。
しかしあまり舐めた口を聞くようならば、我が主にも考えがある。
バッシュ様に対して舐めた態度を改めろ」
これはバッシュの言葉は無いなと誠一は察した。
そして、気にした様子も見せずに軽く受け流した。そして、強く出た。
「貴様の意見など俺には必要ない。さっさと用件を言え」
「クソガキが。盛った猿の如く貴様が毎夜のように女を
引き入れてお楽しみだったから接触が遅れた。
バッシュ様に詫びろ」
言い終えた直後に黒顔の口の辺りから突然、
どす黒い血が涎の様にだらだらと流れ出した。
突然のことであったが、目の前の男の安否を気遣うでもなく
誠一は7面メイスを構えた。
「この男の非礼は死をもって詫びさせよう」
どす黒い血を流す口が動いた。先ほどとは打って変わって、
抑揚のない生気を感じさせない声であった。
「貴様、バッシュか」
「察しがいいな。そうだ。
貴様は随分と神とやらに気に入られているようだな。
この世界の住人の願いを聞き入れる神なんぞ聞いたことも無い。
まあ、それはどうでもいい。大会戦でのアレは神の頼みとは言え貸だ。
必ず貸は返して貰う」
何のことを指しているのかは誠一も察していたが、
ここは知らぬふりをすることにした。
「一体、何のことを指して貸と言っているのは分からないな。
そもそも神に俺がお願いしたことをどう証明する?」
黒顔はだらだらと血を流しながら、誠一の話を聞いていた。
星明りしかない闇の中でもそのどす黒い色は誠一の目でも確認できた。
自然、誠一の眉間に皺が寄った。
天井を見つめていた。
「早まったかな」そう誠一はぽつりと呟いた。
後先考えずに威勢のいいことを言うヴェルですら、
何も言わなかった。
最上級の遺跡の難度を肌で触れるだけでも
自分たちに足りないものが何かを明確に知る機会になると
誠一は思った。
しかしそれは、どうやら早計過ぎた思い付きだったのだろうか。
誠一は暗い天井を見つめながら自問自答した。
誠一はベッドから立ち上がり窓に目を向けた。
空気が揺れたような気がした。
この部屋は二階であり、壁を音もなく昇って来られる訳ないと
かぶりを振り、風かなと誠一は思い直した。
コンコン、窓が叩かれる音がした。
誠一はベッドから跳ね起き、7面メイスを手にした。
真っ黒な顔の輪郭をしたモノが窓越しに誠一の目に映った。
真っ黒な顔の口の辺りが蠢いた。
「バッシュ様の使いだ」
誠一は窓を開けた。にぃと黒い顔が笑ったような気がした。
「部屋に入る必要はないだろう。用件を言え」
「くっくくく、強気のだな。
しかしあまり舐めた口を聞くようならば、我が主にも考えがある。
バッシュ様に対して舐めた態度を改めろ」
これはバッシュの言葉は無いなと誠一は察した。
そして、気にした様子も見せずに軽く受け流した。そして、強く出た。
「貴様の意見など俺には必要ない。さっさと用件を言え」
「クソガキが。盛った猿の如く貴様が毎夜のように女を
引き入れてお楽しみだったから接触が遅れた。
バッシュ様に詫びろ」
言い終えた直後に黒顔の口の辺りから突然、
どす黒い血が涎の様にだらだらと流れ出した。
突然のことであったが、目の前の男の安否を気遣うでもなく
誠一は7面メイスを構えた。
「この男の非礼は死をもって詫びさせよう」
どす黒い血を流す口が動いた。先ほどとは打って変わって、
抑揚のない生気を感じさせない声であった。
「貴様、バッシュか」
「察しがいいな。そうだ。
貴様は随分と神とやらに気に入られているようだな。
この世界の住人の願いを聞き入れる神なんぞ聞いたことも無い。
まあ、それはどうでもいい。大会戦でのアレは神の頼みとは言え貸だ。
必ず貸は返して貰う」
何のことを指しているのかは誠一も察していたが、
ここは知らぬふりをすることにした。
「一体、何のことを指して貸と言っているのは分からないな。
そもそも神に俺がお願いしたことをどう証明する?」
黒顔はだらだらと血を流しながら、誠一の話を聞いていた。
星明りしかない闇の中でもそのどす黒い色は誠一の目でも確認できた。
自然、誠一の眉間に皺が寄った。
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