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573.それぞれの思惑12
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「くっくくく、くだらない、くだらない。
貴様のくだらない物差しで俺を計るなよ。
貴様がどう思おうが、貸しは貸だ。必ず取り立てる」
バッシュは語るべきことを語り切ったのだろう。
黒い顔は全く声を発することなく、黒い瞳は誠一を映していた。
しかし、誠一はその瞳から何の感情も読み取ることは出来なかった。
暫くすると、どす黒い色は黒い男の全身を覆い尽くした。
突然、黒い腕で自ら喉元を抑えつけた。
言葉を発することなく、低い呻き声が室内に響いていた。
コトリ、そんな音が相応しいように頭が窓の外で地面向かって落ちた。
そして、続いて身体がどさりと地に落ちた。
窓の外から酔っ払いの声が聞えて来た。
誠一は窓の外に顔を出して、声の主を見た。
そこにはほろ酔い加減の剣豪と
如何にも酔い潰れているようなロジェ、
そして、何事も無い様な澄ました表情のキャロリーヌがいた。
剣豪の右手には刃の薄い刀が握られていた。
薄い刀身は、星明りすら透過させているようであった。
「いけませんな。どうもいけませんな。
私が暇を頂いていた間にどうにも良からぬ者たちと
約定を結んだようですな」
暇など出した覚えもなく、勝手に出て行っただけだと
誠一は心の中で呟いた。
「いかなる形であれ闇の勢力と繋がりを
持つのはよろしくありませぬ。
バッシュなる下劣なモノなどとの繋がりは
さっさと切るべきでござる。
あの手のモノたちは騙し騙されるが当たり前の
世界の住人でござる。
アルフレート様とは住む世界が違います」
「だが約定を違えば、それは彼等と同じ世界の住人に
堕ちるということはないでしょうか?」
「まあ、その通りでござる。ではこういたましょう。
我らがクランに纏わりつく蠅を叩き潰しましょう。
それならば、問題ございませんな」
剣豪の言わんとすることを理解した誠一は、
四六時中監視されているのもうざったいと思い、頷いた。
次の瞬間、夜の闇に青白い光が舞ったように誠一には見えた。
短い悲鳴が聞こえたと思うと、ばたりと何かが倒れる音が何度か聞えた。
「これで暫くは蠅がたかることはないでしょうな」
剣豪の側でどさりと人が倒れる音がすると、
続いてゲロゲローと嫌な音が聞えた。
今日はどうも不快な音をよく聞く夜だと
誠一は不快な気分になった。
「まったくこの男は、あれだけ呑んでも
あれほどの技の冴えとかあり得ないわ」
キャロリーヌの言葉に誠一も全く同意であった。
常在戦場という格言を体現しているような男だと誠一は思った。
「さて、夜も遅いことですし今日のところは
さっさと寝るべきでござるな。
死体はどの道、溶けて消えるでしょうし、
明日にでも残された衣類から何かしらの痕跡を探るしかないでござる」
カラカラと笑いながら、剣豪は当たり前のようにエンゲルス家の客室に
向った。
誠一は外に倒れているロジェを介抱するために部屋を出た。
貴様のくだらない物差しで俺を計るなよ。
貴様がどう思おうが、貸しは貸だ。必ず取り立てる」
バッシュは語るべきことを語り切ったのだろう。
黒い顔は全く声を発することなく、黒い瞳は誠一を映していた。
しかし、誠一はその瞳から何の感情も読み取ることは出来なかった。
暫くすると、どす黒い色は黒い男の全身を覆い尽くした。
突然、黒い腕で自ら喉元を抑えつけた。
言葉を発することなく、低い呻き声が室内に響いていた。
コトリ、そんな音が相応しいように頭が窓の外で地面向かって落ちた。
そして、続いて身体がどさりと地に落ちた。
窓の外から酔っ払いの声が聞えて来た。
誠一は窓の外に顔を出して、声の主を見た。
そこにはほろ酔い加減の剣豪と
如何にも酔い潰れているようなロジェ、
そして、何事も無い様な澄ました表情のキャロリーヌがいた。
剣豪の右手には刃の薄い刀が握られていた。
薄い刀身は、星明りすら透過させているようであった。
「いけませんな。どうもいけませんな。
私が暇を頂いていた間にどうにも良からぬ者たちと
約定を結んだようですな」
暇など出した覚えもなく、勝手に出て行っただけだと
誠一は心の中で呟いた。
「いかなる形であれ闇の勢力と繋がりを
持つのはよろしくありませぬ。
バッシュなる下劣なモノなどとの繋がりは
さっさと切るべきでござる。
あの手のモノたちは騙し騙されるが当たり前の
世界の住人でござる。
アルフレート様とは住む世界が違います」
「だが約定を違えば、それは彼等と同じ世界の住人に
堕ちるということはないでしょうか?」
「まあ、その通りでござる。ではこういたましょう。
我らがクランに纏わりつく蠅を叩き潰しましょう。
それならば、問題ございませんな」
剣豪の言わんとすることを理解した誠一は、
四六時中監視されているのもうざったいと思い、頷いた。
次の瞬間、夜の闇に青白い光が舞ったように誠一には見えた。
短い悲鳴が聞こえたと思うと、ばたりと何かが倒れる音が何度か聞えた。
「これで暫くは蠅がたかることはないでしょうな」
剣豪の側でどさりと人が倒れる音がすると、
続いてゲロゲローと嫌な音が聞えた。
今日はどうも不快な音をよく聞く夜だと
誠一は不快な気分になった。
「まったくこの男は、あれだけ呑んでも
あれほどの技の冴えとかあり得ないわ」
キャロリーヌの言葉に誠一も全く同意であった。
常在戦場という格言を体現しているような男だと誠一は思った。
「さて、夜も遅いことですし今日のところは
さっさと寝るべきでござるな。
死体はどの道、溶けて消えるでしょうし、
明日にでも残された衣類から何かしらの痕跡を探るしかないでござる」
カラカラと笑いながら、剣豪は当たり前のようにエンゲルス家の客室に
向った。
誠一は外に倒れているロジェを介抱するために部屋を出た。
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