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579.狩猟祭4

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「荷車に一人、息を潜めている。何のつもりだ」
盗賊らしき女性の指摘に誠一は何も答えなかった。
美人に聞かれたからと言って、こちらの手札をさらけ出す必要が
誠一にはなかった。

お互いの出方を探り合う状況に戦士が癇癪を
起してしまったようだった。
「ああああ!めんどくせー。
一気につぶしゃーいいだろ。シールドバッシュ」
大気が叩き飛ばされると誤認するほどに
戦士の周りの空気が渦巻いていた。

「待っ待て、莉々火!ちっ、莉々絵、補助魔術を展開だ」

「もう展開済みよ。それより彼等も既に補助魔術を
展開しているわ。奴らは無詠唱まで魔術を行使できるわ。
二重詠唱はできないようね、展開される魔術だけに注意なさい」

騎士も剣を構えて莉々火に続いた。
「ちっ、莉々絵ほどでもないが、奴らの魔術師もそれなりの技術を
持っているということだな。全く厄介なことだ!ラッシュソード」

「そびえ立て、氷の塔ヨ!」
シエンナの詠唱は、いくつもの氷塔を戦士の莉々火と
騎士の莉々の前に乱立させたが、2人はそれらを
意にも介さずに叩き壊して直進した。

「アルフレート君、冒険者ランク、個人のレア度も上、
おまけにパーティとしてのバランスがいい。
取り敢えずあの二人の勢いを二人で止めしかない、いいな」
ロジェの言葉を聞いて、誠一は『絆の仲間』、
『婚約者1キャロリーヌ』、『押し掛けられた男』の称号を
強く念じた。
すぐ後ろにいるヴェルとアミラは湧き上がる力を実感して、
騒いでいた。

称号の発動を確認できた誠一は莉々火のシールドバッシュの勢いを
防御魔術エアシールドで防ごうと試みた。

「潰すぞ」

莉々火に睨みつけられた誠一はぞくりとした。
防御魔術はシールドバッシュの勢いを僅かだが、
殺して莉々火に粉砕された。
巨大な盾に弾き飛ばされそうになったが、
何とか耐え切った誠一にモーニングスターが襲いかかった。
辛うじて躱して、反撃に転ずる誠一だった。

誠一の隣ではロジェが防戦一方に追い込まれていた。
莉々はヴェルがロジェの横合いから繰り出すハルバートの突きに
手を焼いているためにロジェは何とか持ち堪えているようであった。

「おいおい、リーダーの莉々様がそのざまじゃ。
後で女神様からお仕置きを受けちまう。
ちったあ気合いれろよ、騎士様よお」
誠一を責め立てながらも仲間に
檄を飛ばす余裕がある莉々火であった。

「おらあ、避けてみろよ。大旋風豪爆棍」

莉々火のモーニングスターが地面に向かって振り下ろされた。
モーニングスターが叩きつけられた地面には巨大なクレータが作られて、
砂埃を舞い上げた。
それは以前、誠一が冒険者ギルドの練兵場で見た技により出来た
窪地の何倍もの大きさであった。
その技は、隣で戦う莉々や少し後方で弓を番えていた弓兵の莉々矢を
巻き込んでいた。
二人の美女、誠一、ロジェ、そしてヴェルは
咄嗟にその場から大きく後退した。
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