619 / 718
610.鍛冶師13
しおりを挟む
「さて、リーダーアルフレート。この場をどう収める?」
当事者のマリアンヌが含み笑いをした。
誠一は焦った。何か言わなければと思うが、
それが余計に焦りに拍車をかけた。
誠一は自分の薄ぺらな人生経験からは
何の言葉も浮かばないことを如実に感じさせられた。
無論、気の利いた言葉など、浮かぶことはなかった。
どうしよもなく気分が沈みそうだった。
何となく卑屈になるサリナの気持ちが
分かったような気がした。
「まっまあ、これは訓練だから。
はははっ少しサリナも熱くなりすぎたかな。
マリアンヌが冷静に対処してくれて助かったよ。
そうこれは訓練だったね」
つい卑屈な薄笑いを浮かべながら、誠一は言った。
マリアンヌはがっかりした様な残念そうな目を誠一に向けた。
「アル、そりゃないだろ?」
「むっ誤魔化したです」
誠一は表裏のあまりない二人を置いておいて、
ロジェの方を気にした。
一瞬だが、彼の表情が失望で暗くなったように誠一には見えた。
くそっ、この世界でロジェは無論、歳上で頼れる存在であった。
常に自分を試し、成長を促してくれた兄貴分のような存在であった。
だがよくよく考えてみれば、元の世界とこの世界で過ごした年数を
足せば、ロジェは誠一と同じ位しか生きていなかった。
そう思うと誠一はねめつける様にロジェを誠一は見てしまった。
無論、それに気づかない程、鈍感なロジェではなかった。
「アルフレート君、何か言いたいことがあるのか?」
君呼びね、誠一は明らかに下に見られている様な気がした。
俺だって、高校、大学と挫折を味わいながら、過ごしたんだ。
それなりの経験は積んできたつもりだ。
ふらふらと魔物や盗賊を斬ってのうのうと過ごしていた奴より
下に見られるつもりはない。
「言いたいことはあるのはロジェさん、あなたの方でしょう」
誠一の言葉には棘があった。
ロジェは困ったような表情で首を傾げた。
「言えないなら、僕があなたの気持ちを代弁しましょう。
さっきのサリナとマリアンヌの件、クランを率いる身なら、
もっと上手く差配しろと。
そして僕のリーダーとしての資質に疑問を感じたんでしょう。
正直に言ったらどうですか、失望したと」
心を抉られたのは誠一だった。
勝手に思い込み、自分で自分の心を抉っていた。
上手く立ち回れずに誤魔化す様に愛想笑いを
浮かべた自分がたまらなく嫌で自分で自分に失望していた。
言っていて情けなくなった。
「アルフレート君、概ね間違いではないな」
否定されないことが更に誠一へショックを与えた。
「しかしだがな、俺が最も気に入らないのは、そこじゃない。
できることできないことがあるだろ。
君は、リーダーだ。卑屈になるな、笑い飛ばすくらいでいい。
アルフレート君、君はああいった調整事は苦手なんだろう。
俺やキャロリーヌがその辺はサポートするさ。
だから、堂々としていろ」
正論で正道を求められても誠一には
それができそうな自信がなかった。
それをここに居るメンバーは察したのだろう。
「アル、俺らはまだまだ、兄貴の様に歳喰ってないんだぞ。
これからだろ」
「リーダーはまだまだ、学ぶことが多そうです」
相変わらずヴェルは絶妙なタイミングで
自分を鼓舞してくれる。ヴェルに合わせるアミラも同様だった。
「アルフレート君、2人の言う通りだ。
顔色を窺ったり、卑屈になって誤魔化すことはない。
物事に背を向けるな、失敗を恐れるなよ。
君の至らぬ所は仲間が助けるさ」
ロジェの言葉に頷くことしか誠一にはできなかった。
「ほう、そう言うことなら、私も協力するか。
少なからずクランを率いたことがあるからな。
聞きたいことや相談事があれば、尋ねて貰って結構」
本日、何度目になるのだろうか、この雰囲気にラッセルが苦笑した。
当事者のマリアンヌが含み笑いをした。
誠一は焦った。何か言わなければと思うが、
それが余計に焦りに拍車をかけた。
誠一は自分の薄ぺらな人生経験からは
何の言葉も浮かばないことを如実に感じさせられた。
無論、気の利いた言葉など、浮かぶことはなかった。
どうしよもなく気分が沈みそうだった。
何となく卑屈になるサリナの気持ちが
分かったような気がした。
「まっまあ、これは訓練だから。
はははっ少しサリナも熱くなりすぎたかな。
マリアンヌが冷静に対処してくれて助かったよ。
そうこれは訓練だったね」
つい卑屈な薄笑いを浮かべながら、誠一は言った。
マリアンヌはがっかりした様な残念そうな目を誠一に向けた。
「アル、そりゃないだろ?」
「むっ誤魔化したです」
誠一は表裏のあまりない二人を置いておいて、
ロジェの方を気にした。
一瞬だが、彼の表情が失望で暗くなったように誠一には見えた。
くそっ、この世界でロジェは無論、歳上で頼れる存在であった。
常に自分を試し、成長を促してくれた兄貴分のような存在であった。
だがよくよく考えてみれば、元の世界とこの世界で過ごした年数を
足せば、ロジェは誠一と同じ位しか生きていなかった。
そう思うと誠一はねめつける様にロジェを誠一は見てしまった。
無論、それに気づかない程、鈍感なロジェではなかった。
「アルフレート君、何か言いたいことがあるのか?」
君呼びね、誠一は明らかに下に見られている様な気がした。
俺だって、高校、大学と挫折を味わいながら、過ごしたんだ。
それなりの経験は積んできたつもりだ。
ふらふらと魔物や盗賊を斬ってのうのうと過ごしていた奴より
下に見られるつもりはない。
「言いたいことはあるのはロジェさん、あなたの方でしょう」
誠一の言葉には棘があった。
ロジェは困ったような表情で首を傾げた。
「言えないなら、僕があなたの気持ちを代弁しましょう。
さっきのサリナとマリアンヌの件、クランを率いる身なら、
もっと上手く差配しろと。
そして僕のリーダーとしての資質に疑問を感じたんでしょう。
正直に言ったらどうですか、失望したと」
心を抉られたのは誠一だった。
勝手に思い込み、自分で自分の心を抉っていた。
上手く立ち回れずに誤魔化す様に愛想笑いを
浮かべた自分がたまらなく嫌で自分で自分に失望していた。
言っていて情けなくなった。
「アルフレート君、概ね間違いではないな」
否定されないことが更に誠一へショックを与えた。
「しかしだがな、俺が最も気に入らないのは、そこじゃない。
できることできないことがあるだろ。
君は、リーダーだ。卑屈になるな、笑い飛ばすくらいでいい。
アルフレート君、君はああいった調整事は苦手なんだろう。
俺やキャロリーヌがその辺はサポートするさ。
だから、堂々としていろ」
正論で正道を求められても誠一には
それができそうな自信がなかった。
それをここに居るメンバーは察したのだろう。
「アル、俺らはまだまだ、兄貴の様に歳喰ってないんだぞ。
これからだろ」
「リーダーはまだまだ、学ぶことが多そうです」
相変わらずヴェルは絶妙なタイミングで
自分を鼓舞してくれる。ヴェルに合わせるアミラも同様だった。
「アルフレート君、2人の言う通りだ。
顔色を窺ったり、卑屈になって誤魔化すことはない。
物事に背を向けるな、失敗を恐れるなよ。
君の至らぬ所は仲間が助けるさ」
ロジェの言葉に頷くことしか誠一にはできなかった。
「ほう、そう言うことなら、私も協力するか。
少なからずクランを率いたことがあるからな。
聞きたいことや相談事があれば、尋ねて貰って結構」
本日、何度目になるのだろうか、この雰囲気にラッセルが苦笑した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
118
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる