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623. 閑話 とある夜の会社の情景5

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島崎は千晴を机の上に力任せに寝かせた。
千晴の頬をざらついた舌で撫でながら、
耳元に近づき、囁いた。

無論、愛の囁きでなく、千晴を絶望に陥れる囁きであった。

「ここは本日、徹夜作業となります。
壁山から警備会社へ連絡ずみです。
無論、カメラは故障中です。
警備会社は俺を課長と思っているから、
修理は明日以降に依頼済みです。
そうそう、課長代理様は、今頃、熊須莉々子とお楽しみ中です。
いいかい、佐藤さん、報連相はこのようにしなさい」

島崎は、千晴のブラウスを引き千切った。
ボタンが床をコロコロと転がった。
間髪入れずにブラジャーを引き千切った。

「ほう、これは」

島崎は感嘆の声を上げた。

「いや、いやいや。いやー」
千晴は絶叫した。島崎が頬を叩くが、絶叫は収まらなかった。
島崎が強引に唇を奪おうと顔を近づけた。

「むぐむうう」

「はあはあ、これも興奮するな」
島崎は片足を千晴の両脚の間にねじ込んだ。

「ひっ、いやあーやめて、やめて」
暴れる千晴は近くの書類などにぶつかり、床に落とした。
落ちた時の音は虚しく千晴の耳に響いた。
にやにやとしながら、千晴の胸を手と顔で堪能する島崎だった。
島崎の手が千晴の下着に手をかけた。

「ほほう、嫌がっている割に身体は
やる気があるようだな」

「いや。誰か助けて助けて、お願い助けて」

先程、落ちた千晴のパッドがその声に
呼応してぶるぶると震えた。

画面には『ヴェルトール王国戦記』が映っていた。

「あああ、佐藤。もっと叫べ叫べ。朝まで十分に時間はある」
島崎は掴んだ下着を太腿の付近までずり降ろした。

千晴のパッドはぶるぶると島崎の声にも
呼応しているようだった。
千晴の目に『ヴェルトール王国戦記』の画面が
一瞬、映った。
落ちた時の衝撃のためか、書き込みモードから
音声入力モードになっていた。

千晴は無駄と思いながらもゲームのキャラクターである誠一に
助けを求めた。

「嫌、お願いやめて。助けて、誰か助けて。
誠一さん、助けてー。お願い助けて。
できる限り課金するから、助けて」
千晴の悲痛な叫びと島崎の悪意ある囁きが
間断なく『ヴェルトール王国戦記』に書き込まれていった。

島崎は一瞬、呆気に取られて、嘲笑した。

「課金?なんだそりゃ。
おまえ、少し頭が軽いと思っていたが、本当に馬鹿なんだな」
島崎は千晴のパッドを拾い上げた。

「馬鹿なりに証拠を残そうとしたのかよ」
島崎は千晴の側にパッドを放り投げると、笑い転げた。

「こんなもの証拠になるかよ。自作自演を疑われて終わりだ。
証拠ってのはな、俺がさっき録音したお前の謝罪の言葉だよ。
アレは、有効な証拠になるだろうよ、バカが」

島崎が再びスカートに手を潜り込ませた。
島崎の生臭い口臭が千晴の鼻をついた。

千晴は絶望したが、助けを求める叫びが止むことはなかった。
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