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624. 閑話 とある夜の会社の情景6
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「お願い助けて、誠一さん。
昔、書き込んだことは謝ります。
本当にごめんなさい。助けて助けて助けて」
パッドには島崎の笑い声と千晴の悲痛な叫び声が
間断なく書き込まれていた。
その行間にゲームからの告知が一文、挟まれた。
『異世界人の誘い』の称号が発動されました。
そして、千晴のパッドのゲーム画面が突然、
歪みはじめ、ゲームの画面が消失した。
画面は様々な紋様を表示しながら、変化していた。
そして島崎が硬直したように動かなくなっていた。
千晴は押さえ付けていた島崎の手を振り払った。
千晴の腕を離れた島崎の手はだらりとした。
島崎は、汗でびっしょりとなり、床に汗を滴り落としていた。
突然、画面が激しく点滅した。
余りの激しい光を千晴のパッドが放った。
突然のことに千晴は混乱した。
机から降り、恐る恐る動かない島崎の目を覗いた。
「ひいいいっ」
島崎の目が不規則に動いていた。
黒目がひっきりなしに上下左右に痙攣しながら、
動いていたが、その眼は何も捉えていないようであった。
稀に黒目が隠れて、白目だけになっていた。
逃げ出そうとしたが、足がもつれて、島崎にぶつかった。
島崎の弛緩した身体は少し揺れたのちに
人形が倒れる様にばたりと仰向けに床へ倒れた。
どさり、ばんと派手な音が部屋中に響いた。
無防備な島崎の後頭部と床がぶつかった音であった。
あの派手な音で島崎が死んだのではないかと思い、
千晴は動顛してしまった。
しかし島崎の目は相変わらず忙しそうに痙攣していた。
「ひいいいっ」
先程の恐怖とは違った種類の言いようのない恐怖が
千晴を襲った。
下着を引き上げて、薄いコートを羽織ると、
安物のバッグと画面の暗くなったパッドを
持つと一目散に逃げ出した。
写真はまき散らされ、珈琲は零れたまま、
島崎は株式会社山田電設の総務兼経理部の部屋に
置き捨てられた。
千晴はタクシーでマンションに戻ると、
直ぐに震えながらも何とかベッドに潜り込んだ。
布団を頭から被り、寝ろ寝ろ忘れと念じながら、
いつの間にか眠りに落ちた。
島崎は目を覚ました。前後の記憶が朧気であったが、
千晴に何かをされて意識を失ったことは記憶に残っていた。
目の前に広がる光景は時代錯誤であり、
島崎の理解の範疇を越えていた。
脳には様々な情報が流れ込んできたが、
彼の理解の及ぶ内容は何一つとしてなかった。
目の前で跪く者たちの呼ぶ声がする。
「王ヨ、よくぞご無事」
「おおっ、王の帰還だ」
「我が王は、不死身だ」
こいつら一体、何を言っているんだ。
島崎は差し出された銀色のコップに映る自分の姿を見て、
愕然とした。
コイツは一体、誰だ?
島崎は混乱した。
昔、書き込んだことは謝ります。
本当にごめんなさい。助けて助けて助けて」
パッドには島崎の笑い声と千晴の悲痛な叫び声が
間断なく書き込まれていた。
その行間にゲームからの告知が一文、挟まれた。
『異世界人の誘い』の称号が発動されました。
そして、千晴のパッドのゲーム画面が突然、
歪みはじめ、ゲームの画面が消失した。
画面は様々な紋様を表示しながら、変化していた。
そして島崎が硬直したように動かなくなっていた。
千晴は押さえ付けていた島崎の手を振り払った。
千晴の腕を離れた島崎の手はだらりとした。
島崎は、汗でびっしょりとなり、床に汗を滴り落としていた。
突然、画面が激しく点滅した。
余りの激しい光を千晴のパッドが放った。
突然のことに千晴は混乱した。
机から降り、恐る恐る動かない島崎の目を覗いた。
「ひいいいっ」
島崎の目が不規則に動いていた。
黒目がひっきりなしに上下左右に痙攣しながら、
動いていたが、その眼は何も捉えていないようであった。
稀に黒目が隠れて、白目だけになっていた。
逃げ出そうとしたが、足がもつれて、島崎にぶつかった。
島崎の弛緩した身体は少し揺れたのちに
人形が倒れる様にばたりと仰向けに床へ倒れた。
どさり、ばんと派手な音が部屋中に響いた。
無防備な島崎の後頭部と床がぶつかった音であった。
あの派手な音で島崎が死んだのではないかと思い、
千晴は動顛してしまった。
しかし島崎の目は相変わらず忙しそうに痙攣していた。
「ひいいいっ」
先程の恐怖とは違った種類の言いようのない恐怖が
千晴を襲った。
下着を引き上げて、薄いコートを羽織ると、
安物のバッグと画面の暗くなったパッドを
持つと一目散に逃げ出した。
写真はまき散らされ、珈琲は零れたまま、
島崎は株式会社山田電設の総務兼経理部の部屋に
置き捨てられた。
千晴はタクシーでマンションに戻ると、
直ぐに震えながらも何とかベッドに潜り込んだ。
布団を頭から被り、寝ろ寝ろ忘れと念じながら、
いつの間にか眠りに落ちた。
島崎は目を覚ました。前後の記憶が朧気であったが、
千晴に何かをされて意識を失ったことは記憶に残っていた。
目の前に広がる光景は時代錯誤であり、
島崎の理解の範疇を越えていた。
脳には様々な情報が流れ込んできたが、
彼の理解の及ぶ内容は何一つとしてなかった。
目の前で跪く者たちの呼ぶ声がする。
「王ヨ、よくぞご無事」
「おおっ、王の帰還だ」
「我が王は、不死身だ」
こいつら一体、何を言っているんだ。
島崎は差し出された銀色のコップに映る自分の姿を見て、
愕然とした。
コイツは一体、誰だ?
島崎は混乱した。
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