転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

630.神堕ちの儀6

ボスッ、誠一に冷たい雪の塊がぶつかった。
ヴェルがにやにやとしながらこっちを見ていた。

「やってくれた、ヴェル！」
誠一は立ち上がり、両手で雪を固めて、
ヒョイとヴェルに向けて投げた。
それは、ヴェルにいとも簡単に躱された。

するとまた、誠一に2発、3発の雪の塊が当たった。
「ぶはっ、ヴェルとその一党、覚悟しろよ」
誠一はきょろきょろと力になる仲間を探した。

「全く仕方ないわね。アル、助太刀するわよ」
キャロリーヌがひょいひょいと何個か雪玉を投げると、
左程の速さでないにも関わらず、ヴェル、アミラ、
サリナにヒットした。
誠一はシエンナに向けて、雪玉を投じた。
何故か容易くシエンナに避けられた。

「アルーずるいぞ。専門職を仲間に引き入れるなんて、
正々堂々と勝負だ。ぐえっ」
ヴェルの口には雪が詰まっていた。

「そろそろ、遊びは終わりよ。まったくシエンナまで。
夕食の用意と明日の準備、打ち合わせを始めないとでしょ、アル」

「そっそうだね。そろそろ、日も落ち始めるしね」
キャロリーヌの容赦ない投擲に誠一は引き気味だった。

翌日の朝、その日も晴天だった。

「まじかーこの天気で暗い洞窟に向かうのか」

両手を大きく広げて、全身で陽光を浴びながら、
誠一は肺に冷たく清涼な空気を引き入れた。
吐く息は白かった。
それが誠一は気持ち良く何度かそれを繰り返した。
凍える程に寒くはないが、冷たい空気が誠一の
ぼんやりした気分をはっきりとさせた。

朝食を取り、誠一たちは片づけを終わらせた。

「そろそろ、洞窟の探索を始めようか。
先頭はサリナ、よろしく。
その後にヴェル、アミラ。
中央はシエンナとキャロ。最後尾は僕で」

誠一たちは明るい地上から闇の支配する洞窟へと足を踏み入れた。

洞窟内にはスノーウルフや雪猿が集団で
誠一たちに襲いかかって来た。
最早、誠一たちにとってその程度の魔物の群れは
脅威でなくなっていた。

「なんだろ、こいつらってもう少し知能が高いと思って、
警戒してたんだけどな」
余裕綽々の態で魔石を拾い上げるヴェルだった。

「ほんとスライムを前に泣きべそを
かいていた頃が懐かしいわよね。ヴェル」

「うるせーおまえだって、ゴブリンを
前に護衛に担がれて逃亡しただろ」

ぐっぐぐっーと睨み合う両者だった。
いつものことで本気でいがみ合う程にはならないと思い、
我関せずに魔石を拾う誠一だった。

「おい、アル、おまえが仲裁しないと終わんないだろ」

「ちょっと、アル、何、無関心を装っているのよ」

「まったく困ったリーダーです」

余計な一言が追加されていた気がしたが、
幻聴と思い聞き流した誠一だった。

「はいはい。それより粗方、魔石は回収したから、先に進もう。
シエンナ、冒険者のガイドマップによると一層を
かなり長く進まないといけないんだろう？」

「ふう、まあいいわ。
そうね、この洞窟の特徴は魔獣や魔物の強さより
洞窟の最深部までの長さだからね。
到達する前や帰路で水や食料が枯渇したりして、
力尽きることが一番の心配事になるのかな。
つまり引き際を見誤らないこと」

誠一は頷いた。誠一自身、少し拍子抜けしていたところが
あったために一度、自分自身を含めて喝を入れるために
力強く話した。

「目的は氷雪系の魔石を50個以上、入手すること。
洞窟の攻略が目的じゃないからね。
欲に駆られないようにして行動しよう」

「おっおう、アルの言う通りだな。
ちょっと寒いし、体調に気を付けて進もうぜ」

誠一たちは得物を求めて、サリナを先頭に再び、
行軍を再開した。

暫く誠一たちが進むと巨大な湖畔に出くわした。