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629.神堕ちの儀5

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翌日には吹雪は止み、誠一たちは氷雪系の魔石を求めて、
氷結の洞窟に向けて出発した。
山道も獣道も雪に覆い尽くされていた。

見渡す雪原には誠一たちの歩んで来た足跡しかなかった。

強い陽光は雪に反射されて、誠一たちには眩しく感じられた。

「全く見渡す限り白いな。こっちで方向は合っているのかよ」
ヴェルは眩しそうに周囲に目を向けた。

「大丈夫よ。陽の位置と昇る方向と
地図を照らし合わせながら向かっているから問題なし。
それよりヴェル、足下に注意して。
雪下には何があるか分からないわ」

「了解だ」
ヴェルは足裏で強く雪を踏み固める様に歩いて進んだ。

「結構、体力を消耗するな。アミラ、大丈夫か?」
ヴェルのすぐ後ろを歩くアミラをヴェルは気遣った。

「大丈夫です。ヴェルの踏み固めた足跡を歩くと楽です」
ヴェルは振り返ることなく手で軽く合図を送った。

「アル、そろそろ休憩を取らないと。
雪山の移動は思った以上に体力を消耗するわよ」

「そうだね。そろそろ、休憩にしよう。
キャロが疲れているようだしね」
誠一はくすりと笑った。

キャロリーヌも少し膨れっ面の顔でくすりと笑った。

誠一たちは休憩を取る事にした。

「それにしても氷雪系の魔物一匹見当たらないわね。
これは『氷結の洞窟』に期待するしかないかな」
シエンナは地図をにらめっこしながら、呟いていた。

「あとどのくらい?」

誠一の問いにシエンナは地図の縮尺から計算を始めた。
「うん、今のペースなら後、3時間ってとこかな。
今日は洞窟の付近で野営だね」

「あと三時間か。なら目的地に到着したら、
明日に備えるべきか。
もう少し大きいアイテムボックスが
入手できないと中級以上の迷宮攻略は難しいな。
そろそろ出発しよう。みんな、準備して」

誠一の掛け声で各々、出発の準備を始めた。
そこからの旅程は予定通りであった。
『氷結の洞窟』の入り口を確認して、
野営に都合の良い場所で誠一は準備を開始した。

「雪山の行軍はきついな。
荷物もだけど、何より歩くのがきちいな」
ヴェルがぼやいた。

「うー。目がチカチカしているです」
アミラがぼやいた。

2人の噛み合っているとは言い難い会話を聞きながら、
誠一も二人のぼやきに納得していた。
野営の準備が終わったヴェルがコロコロと
丸めた雪を転がしていた。
あれだけ疲れたなどぼやいていたヴェルは
雪だるまを作っていた。
誠一はその体力と気力に感心するより呆れていた。
身体を休める様に促すより好きなようにさせていた。
いつの間にサリナとシエンナも加わっていた。
うん、良い傾向だと思いながら、ぼんやりと眺めていた。

想像以上の雪だるまが完成しそうな勢いだだった。
しかし、どうやって上に丸めた雪をのせるのだろうかと
素朴な疑問が生じていた。
なんだろ、シエンナが補助魔術を唱えているような気がした。
4人がかりで持ち上げて丸い雪を重ね上げた。

誠一の目の前には、優に人の倍はある巨大な雪だるまが完成していた。
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