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644.神の名4

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「そっそうだね、もし千晴さんが
それを知っていたら、その人物を探そう」

「そうね、千晴様のご意向を汲んで行動しないとね」
シエンナが納得してくれた。
そのことにホッとする誠一だった。

「ったくどこのどいつだよ、その屑神め。
ざけやがって。なあ、アル。絶対に許せないよな」
憤っているヴェルに誠一は適当に相槌を打った。
ヴェルは誠一とこの件に関する温度差を感じて、
若干、不満げであった。

「とりあえず、千晴様から啓示が下賜されるまでは、
待ちということね。それでアル、狩りを続けるの?」
誠一は話題を転じられることにホッとした。
神でも何でもない単なるゲームプレーヤーの千晴を
手放しで賞賛する気には誠一には到底、なれなかった。

それから数日間、誠一たちは『氷結の洞窟』で
雪狼、雪猿といった魔物を倒して、魔石を入手した。
一層から二層、三層、そして最下層の最深部に
進むことは無かった。
2層の途中までで十分な魔石を入手すると、洞窟を出た。

「くうううっ!あの大魔法の発現がなければ、
絶対に『氷結の洞窟』を攻略できたよな。
なあ、シエンナ、最深部にあるお宝って何だったんだ?」

「確か『氷結シリーズ』って呼ばれる武具や防具が
ランダムで入手出来たはずよ。
単独では大した物じゃないけど、
剣、鎧、兜、盾、外套を揃えれば、
相当な力を発揮するらしいわ」

ガイドブックに目を走らせながら、シエンナが説明した。

「あれっ、それって確か昔、モーリス隊商を護衛した時、
クラン『氷帝』のリーダーが揃えてなかったかな」

「そう言えば、そうだな。
あのリーダーが白く輝いて見えたのは
『氷結シリーズ』全て纏っていたからか」

そこに着目するかと誠一は笑ってしまった。
「いやまあ、確かに輝いていたね。
それより魔物と戦っていた時の冷気の方が
気になったけどね」
周りを凍てつかせそうなほどの冷気を
放っていたように誠一は感じた。

「ふん、確かにあれはすごかったが、
今の俺様のフレイムチャージを前にすれば、
温く感じるぜ」
キリッと決め顔で言い放つヴェルであった。
アミラの熱い尊敬の眼差し以外は、
しらーッとした雰囲気に包まれて、
場は凍るように冷たくなっていた。

「はあ、まあヴェルだし。
取り敢えず山麓の村を目指そうか」
ため息混じりに歩き出す誠一。

「ちょっと、ヴェル。
将来の旦那の前で恥をかかせないでよ」
若干、お怒りのキャロリーヌ。

「まっ、ヴェルが凍らなければいいけどね」
あきれ顔のシエンナ。

「どんまい」
言うべき言葉の見つからないサリナ。

「ヴェル、あの技は最強です!
北関で私を救ったです」
一生懸命に励ますアミラ。

ヴェルは歩き出した皆の後を
アミラに励まされながらトボトボと歩き始めた。
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