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666.氷竜11

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「ちっやるしかないな」
炎の勢いと熱風が収まると
ロジェが即座に動き出した。

「ツヴァイヘンダーの使い手、
ロジェ・エンゲルス。真空刃斬」
5本の真空刃が氷竜に向かって放たれた。
その直後にロジェは、氷竜に向かって
突撃を敢行した。

「うおおおっつ、行くぞ、パワーシフト」

「冗談でしょ。これ、本当に死ぬわよ。
アルフレート、何とかしなさいよ」
軽口を叩きつつもロジェに攻撃が集中しないように
牽制をするサリナだった。

「アミラ、俺の後ろにいろよ。怪我するなよ」
ヴェルがハルバートを地に水平に構えると
一気に距離を詰めた。

「駄目です、それは納得できないです」
アミラの瞳孔が小さくなり、氷竜の右前足に
彼女の焦点が集中した。

「まったくどいつもこいつも突撃・突撃。
牽制するだけなのにもう少し考えて行動なさい。速射」
キャロリーヌは容赦なく氷竜の瞳、鼻などの
柔らかい部分に向けて矢を放った。

幾つもの称号、幾つもの補助魔術が展開されていた。
彼らの基本能力は格段に向上していた。それでも氷竜に浅い
傷ばかりで深手を与えることはできなかった。

神剣を片手にマリアンヌが誠一の側に立った。
「さてリーダー殿。この戦いをどう収めるつもりかな。
そろそろ私も参戦するつもりだが」

「ええ、お願いします。
しかし、先生は全く動くつもりがないようですね。
ただ少し待ってください。
他のメンバーが氷竜を牽制しています。
僕も参戦しますが、危険ならすぐさま助けに入ってください。
シエンナ、準備はいい?」
誠一はシエンナの方を振り返った。
「ええ、魔力は十分に練り上げたわよ。
それよりもアル、大丈夫?」

誠一は頷いた。それと同時にシエンナが
仲間に合図を送った。
誠一は7面メイスを握り直すと精神を集中した。
氷竜の世界がぐにゃりと歪んだ。

歪んだ世界で氷竜は不快な空気に纏わり憑かれた。
瞬間、氷竜の一挙手一投足が誠一に把握された。

 マリアンヌは氷竜の様子から氷竜に
何かしらの魔術なり技が発動されたことを察した。
「ほう、阻害魔術か何かしらの技か。
察するに触覚、聴覚辺りが阻害されているな。
あの顎の動き、味覚もか」

「あまり使いたくはないが仕方ないな。
シエンナ、後の指示よろしく。
限界はここになし、狂い舞い踊れ、狂気に身を任せ、
赴くままにその力をふるえ、コールバーサーク」

氷竜は突然、3つの感覚が失われ、
纏わりつく淀んだ空気に不快感を露わにした。
しかし、戸惑い、慌てることは無かった。
数百年の時、惰眠を貪り怠惰に過ごした氷竜だったが、
右前足や背に感じる強い痛み、白い雪を染める竜の血、
身体の至る所に増え続ける傷、
それらが眠っていた竜種にある本能を目覚めさせた。

 誠一は氷竜の左前足を殴打した。
一撃で竜鱗が潰れて竜の血がにじみ出て来た。
誠一は容赦なく同じ個所を殴打した。

氷竜の目が誠一を見定めるだけで
反抗も防御もしてこなかった。
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