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681 氷竜26
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そりは軽快に滑り、誠一たちは
あっという間にヴェルたちに合流した。
近づくにつれて何やらシエンナの怒声が
空気を震わせていた。
誠一は、隣に座るキャロリーヌの表情を覗くと、
またかといった感じの呆れ顔だった。
「ふううぅまあ、ヴェルとアミラがまた、
いちゃいちゃしてたんでしょうね。
あんな状況だったから分からなくもないけど、ちょっとね」
こちらに気付いたシエンナが慌てて、
声のトーンと声色を変えた。誠一はついつい笑ってしまった。
「やあシエンナ、随分と元気が良かったね」
「なっまさか、いやあの距離だし、ありえないありえな。
アル、痛みは引いたの?」
「まだ痛むけど以前ほどではないかな。
それより風が全てを運んできてくれたよ」
突然、耳を塞いでよく分からない言葉を
シエンナが叫ぶとどこかへ走り去ってしまった。
「ちょっとシエンナ」
誠一がそれを制止する間もなかった。
「ようアル!どうやら大丈夫そうだな。
氷の雫は手に入れたぞ。これで依頼は完了だ。
後はスケードが巣に蓄えた素材やら魔石の山を持ち帰るだけだな。
これだけで一財産を築けるぞ。ラッセルさんへの支払いも
大丈夫だ」
ヴェルが「うししっ」と低い笑い声をあげた。
誠一は、ヴェルが金に毒されているように見えた。
隣で少し心配そうにヴェルを見るアミラがいた。
隣というには少し距離が近く、
べったりとくっついているようにしか
誠一には見えなかった。
これでは作業が進まないと思った。
少し離れた場所のサリナと目が合うとサリナが苦笑した。
二人への注意はロジェかキャロリーヌに任せるとして、
誠一は少しヴェルをからかう事にした。
「そうかヴェル!依頼は完了だね!
まあそれは置いておいて、ヴェル、おめでとう。
僕は心から祝福するよ」
「んあ、何をだ!何のことだ!」
ヴェルは何のことだが見当が付かないようだった。
「めでたいでしょ!二人は付き合う事にしたんだろう。
これでヴェルはアミラのことを妹のようにとか
言えなくなったよな。
これからは恋人とか彼女とか呼ぶことになるんだろうね」
ヴェルはその場に固まってしまった。
無言のヴェルに誠一は容赦なく追撃を加えた。
「それだけべったりだと、一つ言えることがあるけど、
聞くよね。
公共良俗を乱さない程度にねとアドバイスを送るよ。
友人がバカップルと噂されるのは流石にね」
ヴェルは固まったまま、真っ青になってしまった。
ヴェルが一言も話さないため、
心配になった誠一はからかうのを止めた。
「おーい、ヴェル」
「違う、ちがっ、いやその違うんだ。
いやアミラ、そうじゃなくてな。違うんだ」
ヴェルは誠一を見ては違うと言い、
アミラを見ては違うと連呼した。
誠一は何となくヴェルの心情を察したが、
彼の挙動が面白くて笑ってしまった。
アミラははっきりとしないヴェルの態度に不満なのか
頬を膨らまして、そっぽを向いてしまった。
あっという間にヴェルたちに合流した。
近づくにつれて何やらシエンナの怒声が
空気を震わせていた。
誠一は、隣に座るキャロリーヌの表情を覗くと、
またかといった感じの呆れ顔だった。
「ふううぅまあ、ヴェルとアミラがまた、
いちゃいちゃしてたんでしょうね。
あんな状況だったから分からなくもないけど、ちょっとね」
こちらに気付いたシエンナが慌てて、
声のトーンと声色を変えた。誠一はついつい笑ってしまった。
「やあシエンナ、随分と元気が良かったね」
「なっまさか、いやあの距離だし、ありえないありえな。
アル、痛みは引いたの?」
「まだ痛むけど以前ほどではないかな。
それより風が全てを運んできてくれたよ」
突然、耳を塞いでよく分からない言葉を
シエンナが叫ぶとどこかへ走り去ってしまった。
「ちょっとシエンナ」
誠一がそれを制止する間もなかった。
「ようアル!どうやら大丈夫そうだな。
氷の雫は手に入れたぞ。これで依頼は完了だ。
後はスケードが巣に蓄えた素材やら魔石の山を持ち帰るだけだな。
これだけで一財産を築けるぞ。ラッセルさんへの支払いも
大丈夫だ」
ヴェルが「うししっ」と低い笑い声をあげた。
誠一は、ヴェルが金に毒されているように見えた。
隣で少し心配そうにヴェルを見るアミラがいた。
隣というには少し距離が近く、
べったりとくっついているようにしか
誠一には見えなかった。
これでは作業が進まないと思った。
少し離れた場所のサリナと目が合うとサリナが苦笑した。
二人への注意はロジェかキャロリーヌに任せるとして、
誠一は少しヴェルをからかう事にした。
「そうかヴェル!依頼は完了だね!
まあそれは置いておいて、ヴェル、おめでとう。
僕は心から祝福するよ」
「んあ、何をだ!何のことだ!」
ヴェルは何のことだが見当が付かないようだった。
「めでたいでしょ!二人は付き合う事にしたんだろう。
これでヴェルはアミラのことを妹のようにとか
言えなくなったよな。
これからは恋人とか彼女とか呼ぶことになるんだろうね」
ヴェルはその場に固まってしまった。
無言のヴェルに誠一は容赦なく追撃を加えた。
「それだけべったりだと、一つ言えることがあるけど、
聞くよね。
公共良俗を乱さない程度にねとアドバイスを送るよ。
友人がバカップルと噂されるのは流石にね」
ヴェルは固まったまま、真っ青になってしまった。
ヴェルが一言も話さないため、
心配になった誠一はからかうのを止めた。
「おーい、ヴェル」
「違う、ちがっ、いやその違うんだ。
いやアミラ、そうじゃなくてな。違うんだ」
ヴェルは誠一を見ては違うと言い、
アミラを見ては違うと連呼した。
誠一は何となくヴェルの心情を察したが、
彼の挙動が面白くて笑ってしまった。
アミラははっきりとしないヴェルの態度に不満なのか
頬を膨らまして、そっぽを向いてしまった。
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