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2.婚約回避のための偽装を頑張ります
2-29.
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わたしは内心混乱していた。どうやってこの場を切り抜ければ良いのだろうか。
走って逃げる?
いや、すぐに追いつかれて捕まってしまうだろう。そんなことになれば不審者として突き出されてしまうかもしれない。
遠くから誰かを呼ぶ声がする。
「ロベルトー。どこに行ったんだー」
残念王子を探しているようだ。
えぇ……。さらに増えるの?
王子様を呼ぶ声がどんどん近くなっている。やっぱりこっちにくるよね……。
残念王子は見つかってしまったと嫌そうな顔をする。
このまま逃げてくれないかなぁ。
「ロベルト、こんなところにいたのか。駄目だろう。主役が姿を消しては。……そちらのご令嬢は?」
わたしの存在に気がついたようだ。この人も残念王子のような人だったらどうしよう……。
「残念ながらお茶会の招待客ではないそうだ。なので今から招待してやろうと……」
「はぁ……」
突然現れた男の子は大きなため息をついた。青い髪で王子様とは違ったタイプの美形だ。
「殿下、どうみてもこちらのご令嬢は困っていますよ。無理を言ってはいけません。急に招待客を増やすなんてどれだけ周囲に迷惑をかけるかわかっているのですか? 見たところ、この方はこれから帰るところでしょう」
「では名前を教えてくれ。後日改めて……」
「いえ、名乗るほどの者ではございません……」
「殿下。おびえていますから。殿下がご迷惑をおかけしたようですみません。すぐに連れて帰りますので」
青い髪の男の子はわたしにニコリと微笑みかけてくれる。もしかしてこの人は救世主?
「待て、迷惑などかけていない。僕はこの子と……」
「はいはい、戻りますよー」
少年は有無を言わさず、残念王子を連れて帰っていった。
何だったんだろう……。嵐のようだった。
名前も呼び捨てにしていたし、王子様へのあの態度。よっぽど近しい人間なのかもしれない。
残念王子とは違い、まともな人みたい。会場にいたような気もするけど……。
残念王子が去っていってくれたことにわたしはほっと胸をなで下ろす。
人が増えて一瞬焦ったけれど、残念王子を回収してくれて本当に良かった……。
二人が去ったのを見届けてからリネットが近づいてきた。
「大丈夫でしたか? 戻ってきたら殿下がいて驚きました」
「わたしもよ。急に話しかけられてびっくりしたわ。早く帰りましょう。ここにいては危険だわ」
「そうですね。戻ってきてしまっては大変です」
わたしたちはすぐさま馬車に乗り、帰ることにした。
「それで、レティシア様は上手くいったのですか? なぜずぶ濡れに?」
「殿下に正面からブスと言われて、自分の伴侶は美人が絶対条件と言われたわ。成功だと思う。ずぶ濡れになったのは知らない令嬢に噴水につき落とされたのよ」
「えぇっ! つき落とされた?」
「そう。三人に絡まれてね。殿下に近づかないようにと釘を刺されたわ」
「? 殿下には正面から不美人と言われ、伴侶にふさわしくないといわれたのですよね?」
「そうよ。それでも徹底的に潰したかったんじゃないかしら。家格とか派閥などでわたしより不利なのかもしれないわ。……単純に性格が悪いだけな気もするけど」
「なんてひどいことを……」
「殿下にもそのご令嬢たちにもちゃんと殿下の婚約者は狙っていないって宣言したのにね」
わたしは呆れてため息をついたが、リネットは静かに怒っている。
「でも、そういった行動も全部チェックされているみたいね。騎士様もわたしが噴水に落とされたとわかっていたようだし……」
「そうなんですか……。そういえば、いただいたお土産もレティシア様が気に入ったものや好きそうなものを選んだと言っていました」
リネットが受け取ったのは焼き菓子とわたしが気に入ったお茶だった。帰ってからゆっくりどうぞ、とあの騎士様が用意してくれたらしい。わたしが好きそうなものを選んでくれたそうだ。
最後まで完璧過ぎるんですけど。
でも、ここまで細かく観察されているなんてあの悪役令嬢たちはかなりのバツがついているんだろうなぁ。
きっとほかにもやらかしていると思う。
「かなり細かいところまで見ているのね。でも、目的は果たせたから良かったわ」
「わたしも安心しました。少しゆっくりなさってください」
これからはアイドルになるための準備やメイク道具の開発よ!
その後、残念王子が変装したわたしを探していることをこのときのわたしは知らなかった。
走って逃げる?
いや、すぐに追いつかれて捕まってしまうだろう。そんなことになれば不審者として突き出されてしまうかもしれない。
遠くから誰かを呼ぶ声がする。
「ロベルトー。どこに行ったんだー」
残念王子を探しているようだ。
えぇ……。さらに増えるの?
王子様を呼ぶ声がどんどん近くなっている。やっぱりこっちにくるよね……。
残念王子は見つかってしまったと嫌そうな顔をする。
このまま逃げてくれないかなぁ。
「ロベルト、こんなところにいたのか。駄目だろう。主役が姿を消しては。……そちらのご令嬢は?」
わたしの存在に気がついたようだ。この人も残念王子のような人だったらどうしよう……。
「残念ながらお茶会の招待客ではないそうだ。なので今から招待してやろうと……」
「はぁ……」
突然現れた男の子は大きなため息をついた。青い髪で王子様とは違ったタイプの美形だ。
「殿下、どうみてもこちらのご令嬢は困っていますよ。無理を言ってはいけません。急に招待客を増やすなんてどれだけ周囲に迷惑をかけるかわかっているのですか? 見たところ、この方はこれから帰るところでしょう」
「では名前を教えてくれ。後日改めて……」
「いえ、名乗るほどの者ではございません……」
「殿下。おびえていますから。殿下がご迷惑をおかけしたようですみません。すぐに連れて帰りますので」
青い髪の男の子はわたしにニコリと微笑みかけてくれる。もしかしてこの人は救世主?
「待て、迷惑などかけていない。僕はこの子と……」
「はいはい、戻りますよー」
少年は有無を言わさず、残念王子を連れて帰っていった。
何だったんだろう……。嵐のようだった。
名前も呼び捨てにしていたし、王子様へのあの態度。よっぽど近しい人間なのかもしれない。
残念王子とは違い、まともな人みたい。会場にいたような気もするけど……。
残念王子が去っていってくれたことにわたしはほっと胸をなで下ろす。
人が増えて一瞬焦ったけれど、残念王子を回収してくれて本当に良かった……。
二人が去ったのを見届けてからリネットが近づいてきた。
「大丈夫でしたか? 戻ってきたら殿下がいて驚きました」
「わたしもよ。急に話しかけられてびっくりしたわ。早く帰りましょう。ここにいては危険だわ」
「そうですね。戻ってきてしまっては大変です」
わたしたちはすぐさま馬車に乗り、帰ることにした。
「それで、レティシア様は上手くいったのですか? なぜずぶ濡れに?」
「殿下に正面からブスと言われて、自分の伴侶は美人が絶対条件と言われたわ。成功だと思う。ずぶ濡れになったのは知らない令嬢に噴水につき落とされたのよ」
「えぇっ! つき落とされた?」
「そう。三人に絡まれてね。殿下に近づかないようにと釘を刺されたわ」
「? 殿下には正面から不美人と言われ、伴侶にふさわしくないといわれたのですよね?」
「そうよ。それでも徹底的に潰したかったんじゃないかしら。家格とか派閥などでわたしより不利なのかもしれないわ。……単純に性格が悪いだけな気もするけど」
「なんてひどいことを……」
「殿下にもそのご令嬢たちにもちゃんと殿下の婚約者は狙っていないって宣言したのにね」
わたしは呆れてため息をついたが、リネットは静かに怒っている。
「でも、そういった行動も全部チェックされているみたいね。騎士様もわたしが噴水に落とされたとわかっていたようだし……」
「そうなんですか……。そういえば、いただいたお土産もレティシア様が気に入ったものや好きそうなものを選んだと言っていました」
リネットが受け取ったのは焼き菓子とわたしが気に入ったお茶だった。帰ってからゆっくりどうぞ、とあの騎士様が用意してくれたらしい。わたしが好きそうなものを選んでくれたそうだ。
最後まで完璧過ぎるんですけど。
でも、ここまで細かく観察されているなんてあの悪役令嬢たちはかなりのバツがついているんだろうなぁ。
きっとほかにもやらかしていると思う。
「かなり細かいところまで見ているのね。でも、目的は果たせたから良かったわ」
「わたしも安心しました。少しゆっくりなさってください」
これからはアイドルになるための準備やメイク道具の開発よ!
その後、残念王子が変装したわたしを探していることをこのときのわたしは知らなかった。
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