文字の大きさ
大
中
小
134 / 502
8章
気分はお祭り【2】
私達が泊まっている宿屋から一番近いのは、貴族エリアにある教会。パパ達が忙しい合間をぬって時間を空けてくれたらしいので、貴族に会わないことを願いながら貴族エリアの教会に向かう。
〈このゲタと言うのは音が面白いな〉
「この靴はとても楽ですね。グレン様のニジゲンもそうですが、セナ様はいろいろな服を知っているのですね」
「これは私がいたところのお祭りの日とかに着る服なんだよ」
こちらの世界にもお祭りがあるのか聞いてみると、国によってはあるらしい。ただ内容は、厳かな神事だったり、平民まで盛り上がるお祭りらしいお祭りだったりと、バラバラなんだそう。
楽しめるお祭りはぜひ参加してみたい!
◇
教会には他の貴族がおらず、私達の貸し切り状態だった。
みんなでお祈りをすると、ガイ兄の声で「手間取らせて悪いけど、コテージから神界に呼ぶよ」と言われてしまった。
ここからだと何か不都合があるらしい。
急いで宿屋に戻って部屋からコテージに入ると、パパ達が待ち構えていた。
「セナさーん!」
「おぶっ!」
エアリルパパが突進してきて、思いっきり顔がエアリルパパの胸にぶつかった。
痛いぞ、パパ。
「セナさんとっても可愛いですー!」
「うむ、うむ! 皆も似合っておるの」
「とりあえず神界に移動しようか」
ガイ兄の指パッチンで神界に移動した後、リビングのソファでなぜかイグ姐の膝の上に座らされた。
「可愛い、可愛い」と髪の毛が崩れないように私の頭を撫で続けるイグ姐を気にしないようにして、あの教会ではダメだったのか聞くと、教会の関係者に私達が注目されていたんだそう。
「おそらくセナさんのその浴衣が珍しかったからだと思うんだけど、こちらに呼んでいる間に何かあっても困るからね。行ったり来たりさせちゃってごめんね」
「ううん。そっか……ありがとう」
ガイ兄が説明してくれた。
貴族のことしか考えてなかったけど、まさか浴衣のせいで教会の人にまで注目されちゃうとは……
「最初から俺達がコテージに来れば良かったんだ。気にするな。それにしても、セナの浴衣は可愛いな」
「パパ達のサイズがわからなかったからパパ達のは作ってないの。その代わりにコレ作ったよ!」
アクエスパパとエアリルパパには浴衣の帯で作った片耳ピアス、イグ姐とガイ兄には髪を結ぶ用のリボンを手渡す。
「わぁー! ありがとうございます!」
「セナと一緒の模様だな!」
早速パパ達二人はとても嬉しそうに着けてくれた。
喜んでもらえて私も嬉しいよ!
「私達、お昼ご飯まだなの。パパ達も一緒に食べよ?」
隣りに座るエアリルパパにガゼボがいいとリクエストして、ガゼボの草原に移動した。
「今日はお祭りメニューだよ!」
ガゼボのテーブルにお好み焼き・広島風お好み焼き・たこ焼き・焼きそば風うどん・イカ焼き・フランクフルト・じゃがバター・タンドリーチキンモドキをどんどんと出していく。
ほとんど炭水化物! そして半分ソース味!
「へぇー。これはなんだ?」
「それはたこ焼きだよ。中にタコが入ってるの。ソースが手に入ったから作りたくて」
「セナの新メニューじゃな!」
冷めないうちにと、みんなで「いただきます」をしてから食べ始める。
うん。美味しい! めっちゃ久しぶり! 幸せの味がするー!
「美味しいです!」
「熱゛っ! いが美味い!」
「さすがセナじゃの!」
「美味しいね」
〈セナ! この肉はなんだ!? 美味いぞ!〉
パパ達が感想を言ってくれていると、グレンが興奮した様子で聞いてきた。
グレンはタンドリーチキンモドキが気に入ったらしい。
ヨーグルトがないため、牛乳を使った完全になんちゃってタンドリーチキン。ソースとスパイスのおかげでなんとかモドキくらいまで味を似せられた。ちなみに肉は怪鳥と呼ばれていたダチョウの肉を使ってみた。
みんなパクパク食べてくれて、どんどんおかわりを出していく。
みんなが満足したところで、デザートのいちご飴を出すと大喜びされた。
「これも絶品じゃのぅ」
「ふふっ。良かった」
『ねぇ、主様。結局ユカタの模様の意味ってなぁに?』
「あぁ、それはね……」
質問してきたクラオルを撫でながら、「“五(い)つの四(よ)までも末永く”って意味だよ」と教えてあげる。
本当は、昔通い婚が主流だった時代に奥さんから旦那さんに送ったモノだけど、その辺の説明は省かせてもらった。じゃないと結婚と受け取られちゃいそうだからね。
ポラルだけは前に説明したから知っているけど、たぶん内緒にしていてくれると思う。
『主様……』
「素敵な意味が込められているんだね」
「おわっ!」
ガイ兄に反応しようと思ったらエアリルパパに抱きしめられた。グリグリと頬ずりしてくるエアリルパパを見上げると、ウルウルと泣きそうな顔をしていた。
「ふふっ。パパ泣きそう」
「うぅ……セナさ~ん」
「長い!」
「あぁっ!」
アクエスパパがエアリルパパから私を奪い取った。
ちょこんとアクエスパパの膝の上に横座りさせられ、アクエスパパからも頬ずりされた。
「俺達とずっと一緒ということだろ?」
「うん、そんな感じかな? これからもよろしくねって」
「俺達はそう思っていたが、セナから言われると嬉しいもんだな」
「改めて言うと恥ずかしいね」
「うぅ……セナさーん!」
えへへと恥ずかしさを誤魔化すように笑うと、エアリルパパがギュムゥと抱きついてきた。
「エアリルはさっきまでくっ付いていただろうが!」
「いいじゃないですか! 僕のセナさんです!」
「俺のセナでもある!」
パパ達二人が言い合いを始めてしまったので、いそいそと膝の上から降りると、ガイ兄に手招きされた。
「お祭りってどんなことするのかな?」
「んー。屋台でご飯食べて、神社にお参りしたり、お神輿とか見るかな? 屋台が集まったらお祭りって感じなんだけどね。花火大会とかなら食べながら鑑賞したりするよ」
「ハナビ?」
わかっていないガイ兄に花火の絵を描きながら説明すると、クラオルが『素敵ねぇ』とうっとりと呟いた。
「ふむ。それはいいの!」
「イグ姐もガイ兄も浴衣似合いそうだよね」
イグ姐は花魁も似合いそうだし、パパ達はイケメンだからグレン同様何着てもカッコイイ。
「なら、セナさんが私達の浴衣のデザインを考えてくれるかな?」
「いいよ~。今?」
ガイ兄に確認を取ると、頷かれたので紙とペンを出して描いてみる。
デザインと言われてもたぶん浴衣の柄は私達と同じ方がいいだろうし、帯の結び方も同じ。ほとんど似顔絵の浴衣バージョンを描くことになった。
ただ、せっかくなので私達とは色違いにしてみる。カラーマーカーペンで色付けしている最中に、イグ姐に「妾も!」と言われて、結局パパ達四人のを描くことになった。
「下手っぴでごめんね」
「なるほど。これならできそうだね」
「へ?」
何ができそうなのかわからず首を傾げると、ガイ兄が指を鳴らした。
「えぇー!?」
「どうかな?」
「どうかなって、想像以上に似合っててカッコイイけど……なんで? どういうこと?」
目の前でデザイン画通りの浴衣姿になったガイ兄に説明を求めると、実際に作ったワケではなく、見た目だけ変えたんだそう。いつの間にか髪紐も私があげた八重山ミンサー織の髪紐に変わっていた。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。