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8章
ミラー☆ボール
私達が話しているとグティーさんとボンヘドさんが執務室に訪れた。
あのキアーロ国にきていた隠密さんは天井裏に行ったらしい。
私が気配のする場所に手を振ると驚かれた気配がした。
「ん? アーノルドはどうした?」
「あの隠密さんなら上にいるよ」
「そうか。降りてこい」
アーロンさんが言うと、天井がパカッと開いてキアーロ国のパーティーにいた人物がスルッと降りてきた。
「!」
「オオォー! ホントですねェ!」
「俺自信なくなるんだけど……」
「まぁ、相手はセナだからな」
グティーさんは驚いてピンッとしっぽを立てていて、ボンヘドさんは喜んだ。
アーロンさんのフォローはフォローになっていなさそうな気がするけど、隠密さんにドナルドさんが“ドンマイ”とでも言うように肩を叩いていた。
改めて紹介してもらうと、アーノルドさんという人物で普段は諜報をメインに活動しているらしい。
アーノルドさんはジルのことを知っているからか、ジルを観察するように見ている。ジルは無表情だけど居心地が悪そうなので、グレンに頼んでアーノルドさんに気付く程度の威圧をピンポイントで当ててもらう。驚いたところにニッコリと微笑むと、察してくれたのかジルから目線を外してくれた。
「決まったのか?」
「一応は。素材がいい分、武器にしても防具にしても高くなりそうだぜ」
私は素材だけで、武器と防具を売るつもりはない。
どういうことか聞いてみると、兵士さんの武器と防具を新しくするのに、私が売る素材を使うらしい。そのため、その武器と防具に使う素材を上乗せしてギルドが私から買い取るんだそう。
安く売っても構わないんだけど、それを言う前にクラオル達に念話で止められた。
「そんなにいい素材なのか?」
「それはモウ! 素晴らしい素材ですヨ!」
笑いそうになるから見ないようにしてたのに、ズイッとアーロンさんに寄って力説するボンヘドさんのアフロはまたもポワンと揺れた。
「その鱗を見せてもらえるか?」
「くっ……はーい」
アーロンさんに言われてウツボの鱗を出すと「暗いな……」と呟かれた。
確かに私がお城にきたときよりも空は暗くなっていて、部屋の明かりの魔道具がついていても細部までは見えなさそう。
【ライト】を付けてあげると、「いかがですカナ!?」と興奮気味にボンヘドさんがアーロンさんの近くに擦り寄っていった。
「ぶふっ!」
ボンヘドさんの頭上からスポットライトのように【ライト】が当たり、身振り手振りを交えて大げさに説明をしている後ろにレナードさんやドナルドさんが立っているから、ミラーボールに当たっているかのように暗くなったり明るくなったりしている。
シルバーのジャケットに厚底靴を履いている日本の有名人のよう。あの有名人は黒髪アフロにサングラス着用だったけど。
しかもまたプルトンがボンヘドさんのアフロで遊び始めてしまい、私は噴き出してしまった。
(ヤバい! 耐えられない!)
「おい、大丈夫か?」
グティーさんが心配してくれたけど、見たら確実に笑っちゃう気がして顔を上げられないまま頷くしかなかった。
「きょ、今日中に決めなくても大丈夫だよ?」
「大丈夫だ。もう決定事項だからな。職人もやりがいがあるだろ」
アーロンさんは声が震える私を特に気にした様子もなく、鱗を観察していた。
◇
宰相のレナードさんに誘われて一緒にお昼ご飯を食べることになった。一緒に食べるのかと思ったけど、ギルマス達はギルドに帰って素材について会議するらしい。ご飯中に吹き出してぶちまける危険から逃れられた。
案内されたのは食堂は食堂でも王族が食べるような場所ではなく、お城の使用人や兵士の人が使う食堂。カリダの街の騎士団の食堂を思い出した。
「こっちの方が気楽だろ?」
「何言ってるんですか。大体ここで食べてるくせに。セナ様、申し訳ございません」
「ううん。私もこっちの方がいい。監視されながら食べるの好きじゃない」
私がリシクさんに返すと、アーロンさんがリシクさんに「ほれみろ」と言わんばかりにドヤ顔を披露していた。
ちょうどランチタイムで賑わっていたけど、食べている人達は私達を気にする素振りはなかった。リシクさんが言うように、アーロンさんはいつもこの食堂で食べているみたい。
この食堂は食べ物が数種類から選べるようになっていて、なかでも驚いたのがニャーベルの街の領主が手土産に持ってきたシュガーコーティングされたクッキーがデザート枠であったこと。
「ん? これが好きなのか?」
「ううん。驚いただけ」
意外にも甘党が多いらしくそこかしこで食べている人が見受けられ、人気度が窺えた。
私は野菜が多めの炒め物、グレンはジルにも肉の大盛りを頼ませていた。
私の料理を受け取るのも運ぶものリシクさんがやってくれて、席に着こうとすると問題が露見した。
イスが高くてよじ登らないと座れない。グレンが持ち上げてくれて座れたけど、今度はテーブルが高かった。カリダの街の騎士団のところは大丈夫だったのに。
ジルは? と見てみると、ジルはギリギリ食べられそう。
結果……私はグレンの膝の上で、隣りに座っているジルに食べさせられるという恥死案件となった。
なんでグレンじゃないかって? グレンが食べさせようとする一口が大きすぎるのと、スピードについていけなかったから。
ジルは微笑みがら「美味しいですか? あーん」と甲斐甲斐しく食べさせてくれ、アーロンさん達からは温かい目で見られて恥ずかしいことこの上ない。
ご飯を食べ終わり紅茶でひと息ついていると、アーロンさんが何かを思い出したらしく口を開いた。
「そういえば、昨日不思議な服着てたか?」
「え?」
不思議な服を着た三人組が街を急いで歩いていたと貴族の中で噂になっているらしい。
「あぁ……それたぶん私達だね。目撃されてたのか……」
「やはりそうか。まぁ、誤魔化しておいたから大丈夫だろ」
「ありがとう」
「怪鳥は狩ったのか?」
「うん。まさか飛ばない鳥だとは思わなかったよ。しかも巣とかなかったし」
「ん? そうなのか?」
アーロンさんにダチョウの一件の話しをすると「ハーハッハッハ」と笑われた。
「ククッ。悪い、悪い。オレは現地に行ったことがないからな。そうとは知らなかったんだ。しかし一帯のを狩り尽くすとはな」
〈あやつらはセナが作った我のご飯を食べたのだぞ! 許すわけがない。八つ裂きにしてやりたかったが、セナが素材を確保しろと言ったからな……それなら全て狩ってやろうと思ったのだ〉
鼻息荒く言うグレンにアーロンさんも苦笑い。
たぶんここにいる人は“食べ物の恨みは恐ろしい”って思ってるんじゃないかな?
「まぁ、良かった……のか?」
「うん。とりあえずは素材手に入ったしね。あ、そうだ。言おうと思ってたんだけど、ここって闘技場あるんでしょ?」
「あぁ」
「強さを見せろとかって言われても戦わないからね。面倒臭い」
「ん?」
「先に言っておこうと思って」
私が言うと、アーロンさんは一瞬目を丸くさせた後爆笑した。
なぜかアーノルドさんまで笑いを堪えて肩を震わせている。
「ハーハッハッハ! 相変わらず面白いな! まぁ、セナにやられるのも一興だとは思うが、オレの国の兵士ではかなわんだろ。安心しろ」
「ならいいんだけど」
「ククク。キアーロ国を出てからの話も聞きたいし、そろそろ戻るか」
アーロンさんの一声で私達は席を立った。
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