文字の大きさ
大
中
小
138 / 502
8章
ミラー☆ボール
私達が話しているとグティーさんとボンヘドさんが執務室に訪れた。
あのキアーロ国にきていた隠密さんは天井裏に行ったらしい。
私が気配のする場所に手を振ると驚かれた気配がした。
「ん? アーノルドはどうした?」
「あの隠密さんなら上にいるよ」
「そうか。降りてこい」
アーロンさんが言うと、天井がパカッと開いてキアーロ国のパーティーにいた人物がスルッと降りてきた。
「!」
「オオォー! ホントですねェ!」
「俺自信なくなるんだけど……」
「まぁ、相手はセナだからな」
グティーさんは驚いてピンッとしっぽを立てていて、ボンヘドさんは喜んだ。
アーロンさんのフォローはフォローになっていなさそうな気がするけど、隠密さんにドナルドさんが“ドンマイ”とでも言うように肩を叩いていた。
改めて紹介してもらうと、アーノルドさんという人物で普段は諜報をメインに活動しているらしい。
アーノルドさんはジルのことを知っているからか、ジルを観察するように見ている。ジルは無表情だけど居心地が悪そうなので、グレンに頼んでアーノルドさんに気付く程度の威圧をピンポイントで当ててもらう。驚いたところにニッコリと微笑むと、察してくれたのかジルから目線を外してくれた。
「決まったのか?」
「一応は。素材がいい分、武器にしても防具にしても高くなりそうだぜ」
私は素材だけで、武器と防具を売るつもりはない。
どういうことか聞いてみると、兵士さんの武器と防具を新しくするのに、私が売る素材を使うらしい。そのため、その武器と防具に使う素材を上乗せしてギルドが私から買い取るんだそう。
安く売っても構わないんだけど、それを言う前にクラオル達に念話で止められた。
「そんなにいい素材なのか?」
「それはモウ! 素晴らしい素材ですヨ!」
笑いそうになるから見ないようにしてたのに、ズイッとアーロンさんに寄って力説するボンヘドさんのアフロはまたもポワンと揺れた。
「その鱗を見せてもらえるか?」
「くっ……はーい」
アーロンさんに言われてウツボの鱗を出すと「暗いな……」と呟かれた。
確かに私がお城にきたときよりも空は暗くなっていて、部屋の明かりの魔道具がついていても細部までは見えなさそう。
【ライト】を付けてあげると、「いかがですカナ!?」と興奮気味にボンヘドさんがアーロンさんの近くに擦り寄っていった。
「ぶふっ!」
ボンヘドさんの頭上からスポットライトのように【ライト】が当たり、身振り手振りを交えて大げさに説明をしている後ろにレナードさんやドナルドさんが立っているから、ミラーボールに当たっているかのように暗くなったり明るくなったりしている。
シルバーのジャケットに厚底靴を履いている日本の有名人のよう。あの有名人は黒髪アフロにサングラス着用だったけど。
しかもまたプルトンがボンヘドさんのアフロで遊び始めてしまい、私は噴き出してしまった。
(ヤバい! 耐えられない!)
「おい、大丈夫か?」
グティーさんが心配してくれたけど、見たら確実に笑っちゃう気がして顔を上げられないまま頷くしかなかった。
「きょ、今日中に決めなくても大丈夫だよ?」
「大丈夫だ。もう決定事項だからな。職人もやりがいがあるだろ」
アーロンさんは声が震える私を特に気にした様子もなく、鱗を観察していた。
◇
宰相のレナードさんに誘われて一緒にお昼ご飯を食べることになった。一緒に食べるのかと思ったけど、ギルマス達はギルドに帰って素材について会議するらしい。ご飯中に吹き出してぶちまける危険から逃れられた。
案内されたのは食堂は食堂でも王族が食べるような場所ではなく、お城の使用人や兵士の人が使う食堂。カリダの街の騎士団の食堂を思い出した。
「こっちの方が気楽だろ?」
「何言ってるんですか。大体ここで食べてるくせに。セナ様、申し訳ございません」
「ううん。私もこっちの方がいい。監視されながら食べるの好きじゃない」
私がリシクさんに返すと、アーロンさんがリシクさんに「ほれみろ」と言わんばかりにドヤ顔を披露していた。
ちょうどランチタイムで賑わっていたけど、食べている人達は私達を気にする素振りはなかった。リシクさんが言うように、アーロンさんはいつもこの食堂で食べているみたい。
この食堂は食べ物が数種類から選べるようになっていて、なかでも驚いたのがニャーベルの街の領主が手土産に持ってきたシュガーコーティングされたクッキーがデザート枠であったこと。
「ん? これが好きなのか?」
「ううん。驚いただけ」
意外にも甘党が多いらしくそこかしこで食べている人が見受けられ、人気度が窺えた。
私は野菜が多めの炒め物、グレンはジルにも肉の大盛りを頼ませていた。
私の料理を受け取るのも運ぶものリシクさんがやってくれて、席に着こうとすると問題が露見した。
イスが高くてよじ登らないと座れない。グレンが持ち上げてくれて座れたけど、今度はテーブルが高かった。カリダの街の騎士団のところは大丈夫だったのに。
ジルは? と見てみると、ジルはギリギリ食べられそう。
結果……私はグレンの膝の上で、隣りに座っているジルに食べさせられるという恥死案件となった。
なんでグレンじゃないかって? グレンが食べさせようとする一口が大きすぎるのと、スピードについていけなかったから。
ジルは微笑みがら「美味しいですか? あーん」と甲斐甲斐しく食べさせてくれ、アーロンさん達からは温かい目で見られて恥ずかしいことこの上ない。
ご飯を食べ終わり紅茶でひと息ついていると、アーロンさんが何かを思い出したらしく口を開いた。
「そういえば、昨日不思議な服着てたか?」
「え?」
不思議な服を着た三人組が街を急いで歩いていたと貴族の中で噂になっているらしい。
「あぁ……それたぶん私達だね。目撃されてたのか……」
「やはりそうか。まぁ、誤魔化しておいたから大丈夫だろ」
「ありがとう」
「怪鳥は狩ったのか?」
「うん。まさか飛ばない鳥だとは思わなかったよ。しかも巣とかなかったし」
「ん? そうなのか?」
アーロンさんにダチョウの一件の話しをすると「ハーハッハッハ」と笑われた。
「ククッ。悪い、悪い。オレは現地に行ったことがないからな。そうとは知らなかったんだ。しかし一帯のを狩り尽くすとはな」
〈あやつらはセナが作った我のご飯を食べたのだぞ! 許すわけがない。八つ裂きにしてやりたかったが、セナが素材を確保しろと言ったからな……それなら全て狩ってやろうと思ったのだ〉
鼻息荒く言うグレンにアーロンさんも苦笑い。
たぶんここにいる人は“食べ物の恨みは恐ろしい”って思ってるんじゃないかな?
「まぁ、良かった……のか?」
「うん。とりあえずは素材手に入ったしね。あ、そうだ。言おうと思ってたんだけど、ここって闘技場あるんでしょ?」
「あぁ」
「強さを見せろとかって言われても戦わないからね。面倒臭い」
「ん?」
「先に言っておこうと思って」
私が言うと、アーロンさんは一瞬目を丸くさせた後爆笑した。
なぜかアーノルドさんまで笑いを堪えて肩を震わせている。
「ハーハッハッハ! 相変わらず面白いな! まぁ、セナにやられるのも一興だとは思うが、オレの国の兵士ではかなわんだろ。安心しろ」
「ならいいんだけど」
「ククク。キアーロ国を出てからの話も聞きたいし、そろそろ戻るか」
アーロンさんの一声で私達は席を立った。
感想 1,825
あなたにおすすめの小説
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。
七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!!
初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。
2024年5月 書籍一巻発売
2025年7月 書籍二巻発売
2025年10月 コミカライズ連載開始
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。