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8章
モフモフ天国の危機【3】
交換してもらえるなら、毎日搾乳して渡してもいいと思っていたらしい。でも、話すら聞いてもらえなくて這う這うの体で逃げるしかなかったそう。
『よかったらアタイ達と契約して欲しいわ』
「へ? めっちゃ利用しますみたいな発言してたのに?」
『アタイ達は物心ついたときには親と離れてて、偶然知り合ったの。それ以来二人で生活してるのよ。多少は戦えるけど、ずっと穏やかな生活を夢見てたの。お嬢様が優しいのは見ていてわかるわ。せっかくお知り合いになれたから仲良くしてもらいたいのよ』
「別に契約しなくても仲良くできるよ?」
『アタイ達だけじゃないっていう繋がりが欲しいの。同族にも会ったことはあるけど、好戦的で平和に暮らしたいアタイ達とは相容れなかったのよ』
クラオルは私がお姉さん達の生クリームと練乳に喜んだからか『そりゃワタシ達は食材生み出せないわよ』なんて言いながら了承してくれた。クラオルの誤解はあとでたっぷりと時間をかけて解かせていただこう。
『改めて。アタイは女だからミノタウローナよ。ミノタウロースは男を示すわ』
『あたいはサテュロナよ。サテュロスは男を示すわ』
(あぁ! そうそう! サテュロスだ! やっぱサキュバスと語感が似てるわ!)
「私はセナ。一緒にいるのがジルベルト、クラオル、グレウス。精霊がエルミスとプルトン。他にも家族がいるんだけど……今、増えた魔物狩るのに散らばってるから後で紹介するね」
『それなんだけど、あたい達のせいかもしれないわ』
どういうことかと聞いてみると、もしかしたら追いかけてきたやつのせいで、クラオルファミリーのところに他の魔物が追い立てられてるのかもしれないとのことだった。
「うーん。強い気配はしないんだけど……隠れてるのかな?」
『アイツは夜行性なの。夜になるとどこからか現れるの!』
「なるほど……ファミリー達に被害が出たら困るから、このまま倒したいね」
グレン達に念話で声をかけて、魔物狩りが一段落したら私達がいる場所まできて欲しいと伝える。ニヴェスとルフスにはファミリー達の護衛を頼んだ。
「ねぇ、お姉さん達はこれが解決したらどうしたい? 平和な暮らしはさせてあげられると思うけど……それは契約しなくてもできることだから」
『契約はしてもらえないの?』
「ぶっちゃけ私はお姉さん達のお乳が欲しい。でも、そのために契約するのは違うと思うんだよね。利用されてる気がして嫌でしょ? だから普通に取り引きにしてもいいと思うの」
『ミノちゃん聞いた!? お嬢様優しいわ!』
『サテュちゃん、もちろん聞いてるわ! 少年の言っていた通りね!』
『『なおさら契約してもらいたいわ』』
あれ? おかしいな? 契約しなくてもいいんだよって言ったハズだったんだけど……
その後も「私と契約すると縛られちゃうよ?」とか「生活していくのに契約は必要ないんだよ?」とかいろいろと説明したら、逆に『もっと契約して欲しくなったわ』と言われてしまった。
あれれ? おかしいな? まぁ、本人が納得してるならいいんだけどさ。
「じゃあ名前決めて契約しないとだね。うーん……何がいいかな?」
牛頭と馬頭は片方が馬じゃないし……昔のお笑い番組の牛のお姐さんキャラでもいいんだけど、山羊はどうしようかと悩んでしまう。
「よし! 決めた! ミノタウローナのお姉さんはシュティー! サテュロナのお姉さんはカプリコ!」
小一時間ほど悩んで決めた名前を告げると、お姉さん達がピカーっと光った。
久しぶりの契約の光に眩しさから瞼を閉じると、お姉さん達から『あら?』と声が聴こえた。
どうしたのかと目を開けると、お姉さん達が一回り大きくなっていた。
「え? なんで?」
《ククク。主との契約で進化したようだな。キヒターのときと似たようなものだ》
「マジか……」
エルミスの説明でキヒターが契約時に一気に成長したことを思い出した。
お姉さん達は『力が湧いてくるわ!』『オッパイが張りを取り戻したわ!』と喜んでくれているみたいなので良しとしよう。
従魔の首輪は『可愛いのがいい』とのことで二人共ローズクォーツみたいな石に決まった。
魔力登録をすると、なぜか牧場の牛と山羊の首に付いているカウベルみたいなデザインに変わってしまい、私は顔が引きつってしまった。
ローズクォーツは金属のカウベルにワンポイントとして付いていて『オシャレだわ!』とお姉さん達は喜んでいるけど、私にはカウベルにしか見えない。
(どこから現れた!? その金属! 従魔の首輪……謎すぎでしょ!)
契約したのでお姉さん達がこれからどこで生活をしたいかを話し合って、キヒターの教会に行くことが決まった。
戦闘が好きじゃないことと、街や村にトラウマがあることが要因だ。
家事妖精のブラウニーがいると伝えると、『まぁ! 息子だと思って可愛がるわ!』とキラキラした笑顔で宣言された。
キヒターに念話で連れていくことをお知らせすると、《かしこまりました。女神様に会えるのを楽しみにしています!》と返ってきた。
大丈夫かな?
◇
夕方近くになってからグレン達が来てくれた。クラオルファミリーの周りの魔物はあらかた狩ってくれたらしい。
グレン達にシュティーとカプリコを紹介してから呼んだ理由を説明した。
戦力が揃ったので魔獣の詳しいことを聞いてみる。
「どんな魔獣なの?」
『大きくて硬いわ』
『突き刺して吸われるの』
「えっと……見た目とか系統とかは?」
『見た目はアントに似てなくもないけど、アントじゃないと思うわ』
『アタイ達もあんなのは初めて見たの。魔獣の名前はわからないわ』
蟻に似てるけど蟻じゃないのね。
二人から細々とした情報を引き出してわかったことは……虫系統であること、夜行性であること、目が赤色であること、高さは二メートルほどで長さはそれ以上であること、細長い口を突き刺して吸引してくること、六本ある足が鋭いことくらいだった。
「そんなの図鑑に載ってたっけ?」
「いえ、僕も見た記憶がありません」
《儂らもわからん。夜、いつの間にか現れるということは気配を消せるとは思うが……》
「グレンは何かわかる?」
〈該当する魔物はいるが、それかどうか判別できないな。それにこの森に生息しているとなれば、変異種もありえる〉
結局、見てみないことにはわからないと、先に夜ご飯を食べることになった。
魔獣を倒すための野営なので、結界は張らずにグレンと精霊達が見張りを担当。私とジルは夜に戦いのために早く休ませてもらう。
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