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9章
王都へ
◇
娘さんの突撃がちょっとしつこくて、アルヴィンに聞いたりプルトンに調べてもらったりしたんだけど、私からしたら大した悪口じゃなかったんだよね……
「セナちゃんは変。じいじ達とよくわかんない話してる」
「薬草詳しいなんてヘルバ婆みたい。セナちゃんはお婆さん?」
「村に残ったら使用人みたいにしなくていいのに」
「セナちゃんのせいでパパもママも褒めてくれなくなった」
「ジルベルト君ばっかり働いてて、セナちゃんは何もしてないんだね」
可愛くないとか、練習すれば自分も魔法が使えるとか、他にも言っていたみたい。
後は自分と結婚した未来を勝手に想像して語っていたらしい。ジルにベッタリとくっつきながら。
でも、娘さんは上手く表現できる言葉を知らなかっただけだと思う。なんとなくだけど言いたいことがわかる。で、ジルは言葉通りに受け取っちゃった感じ。ほら、ジル……信者だし。
中でもジルが怒ったのは「そんなの家族じゃない」って言葉。これは状況を考えると、血の繋がりがないことに対して娘さんは発言したっぽい。
村っていう閉鎖的空間だから、年齢よりも精神年齢が幼いんじゃないかな? ジルに迫るって点ではそうとも言えないかもしれないけど。
本人は眠り病に罹っていたから危機感みたいなのもないんだろう。目が覚めたらイケメンとおじゃま虫がいた。みたいな。
一応、念の為に村長に伝え、私達は私達で娘さんを避けることにした。
この先、ジルが私の悪口を言われただけでブチ切れたりしないように、ジルともちゃんと話して納得してもらったから大丈夫だと思う。
それでも娘さんに関しては好きになれないし、関わりたくないらしいけど。
◇
それから二日、村長夫妻の手をかいくぐった娘さんの押しかけを回避しながら、魔物を狩りに行ったり、精霊の国に遊びに行ったりとのんびり過ごした。
三日目の朝、コルトさんの体調も大丈夫になり、私達はヒュノス村を出てベヌグの街へ。
朝早い時間にも拘らず、村人総出でお見送りしてくれた。村長の娘さんはジルと話したそうだったけど、ジルは村人に頭を下げて早々に御者席に乗り込んでいた。
道中はニヴェスが飛ばしてくれたため、午前中にベヌグの街へ到着した。
ネルピオ爺や兵士さんが歓迎してくれ、すぐに宿を手配してくれた。
頼まれていた薬草を納品すると、ネルピオ爺は大量の薬草に大喜び。ついでにグレンが狩ったモントモンキーも買い取ってもらった。
一度報告のために揃って教会へ向かい、会話だけの報告を終え、その後ガルドさん達と別れて買い物を済ませた。
ガルドさん達より一足先に宿に戻って一息つく。
「セナ様、疲れてはおりませんか?」
「うん。心配してくれてありがとう」
〈機嫌がいいな〉
「ふふっ。みんな一緒で嬉しいなって」
「セナ様……」
〈そうだな〉
ガルドさん達とは会えたし、ジルも村に残らなかった。
もう村長の娘さんに邪魔されることもない。
パパ達は眠り病に罹って眠ったまま亡くなってしまった人達と、生き残った村人を夢の中で会えるようにしてくれるらしい。
あと、パパ達が村長の娘さんにちょっとしたお仕置きを行使したって報告された。パパ達いわく、「子供だから軽い試練」だそう。頑張ってもらいたい……
夜までまったりすごして、戻ってきたガルドさん達と一緒にご飯を食べた。
「セナさんにお土産です。新発売だと言っていました」
「わぁー! モルトさんありがとう!」
「食べたけど美味しかったよー」
ジュードさんの感想を聞いて、モルトさんから受け取った麻袋を開けてみると……なんとドライフルーツパンだった。
「もう発売してたんだね! 仕事早い!」
「ん? 知ってんのか?」
〈それはセナのレシピだ〉
「「「「は!?」」」」
驚いたガルドさん達に登録レシピの話をすると、ガルドさんはため息をつき、ジュードさんは大爆笑、モルトさんとコルトさんには感心された。
「セナ様はパン以外にもレシピを登録しています」
「なっ!?」
「アハ」
「笑って誤魔化すんじゃねぇよ……」
「すごいねー! 何登録したのー? オレっちも食べてみたい!」
テンションの上がったジュードさんは、レシピが全部料理だと思ったらしい。ガルドさんに「ちょっと落ち着け」と怒られていた。
◇
二日後、私達は王都へ向けて出発。今回は報告に帰るアーノルドさんも一緒に大きい方の馬車に乗り込んだ。
ネルピオ爺と兵士さん達は私達が遠く離れるまで手を振って見送ってくれていた。
いくらニヴェスでも王都までは時間がかかるので、申し訳ないけどウェヌスに眠らせてもらって転移で道中を端折らせてもらう。
一日で着くとアーノルドさんに怪しまれてしまうため、四日くらいで着けるように調整するつもり。そのためにポーションも作っておいたから準備はバッチリ!
馬車の中でジュードさんが買い集めた食材を披露してくれたんだけど、面白いものがいっぱいだった。
中でもビックリしたのがホヤ。
日本でホヤは海の生き物だったけど、この世界ではキノコみたいに山や森に生えているらしい。「見た目から嫌厭されているけど、食べられなくはないから、ショユの実みたいに美味しくなるかなーって」とジュードさんは笑った。
ちなみに、私が教えたシラコメもベヌグの街で買い付けていた。
朝、昼、夜とジュードさんと一緒にご飯作り。レシピ登録した物から肉じゃがやお好み焼きまでいろいろと作った。
ガルドさん達は見たことない料理だと毎食「美味い美味い」と大絶賛。特にアーノルドさんは「こんなに美味い飯が食えるなんて! アーロンに命令されてよかった!」と喜んでいた。
食後はみんなでたき火を囲んでおしゃべり。
和気あいあいとした旅をしながら、四日目のお昼に王都に到着した。
アーノルドさんと別れて、私達は一度冒険者ギルドへ。テンションの高いグティーさんと話した後、私達はお昼ご飯を食べにオジサンのお店へ移動した。
オジサンのお店は以前はスカスカだったけど、今日は若い女性達で席が埋まっている。
オジサンは私達に気が付くと、急いでお皿を片付けて席に案内してくれた。
「なぁ……女しかいないぞ」
「そう……ですね。少々気まずいです」
「セナっちが言うなら美味しいんだろうねー! 楽しみだなー!」
「……」
ジュードさんは私の呼び方を〝セナっち〟に決めたらしい。
ガルドさんは気後れ、モルトさんは苦笑い、ジュードさんはワクワク、コルトさんは無。
四者四様の反応をする中、オジサンがメニューを持ってきてくれた。
「大盛況だね」
「お、おう……ベビーカステラのおかげだ」
「そっか! よかった!」
私がオジサンに微笑みかけると、オジサンは顔を真っ赤にしてキッチンに戻って行った。
シャイなところは変わっていないらしい。
みんなで好きな料理を頼み、美味しくいただくと、オジサンがベビーカステラをサービスで持ってきてくれた。
ガルドさん達も甘い物は好きらしく、「美味いな」とパクパク食べてお皿を空にしていた。
お会計はガルドさんがいつの間にか払ってくれていて、私達の分を払おうとすると「大人に花を持たせるもんだ」と拒否られた。グレンが山盛り肉頼んでたのに……
そんな表現がこの世界にもあることにもビックリだよ!
ご飯を食べたらイペラーさんの宿〝憩い亭〟へ。
迎えてくれたイペラーさんから手紙を渡された。
「アーロンさんから? 早いね」
「届けたのは前回と同じく、変な喋り方のやつだったよ。泊まるならうちの宿だろうからってさ。セナ様は前と同じく五階、【黒煙】のパーティは四階の右側にしておいた。これが鍵だよ」
あの武士っぽい話し方の人かと納得してイペラーさんから鍵を受け取った。
階段はグレンに抱っこしてもらい、腕の中で手紙を開ける。
「謁見は明日だって。で、宿代はアーロンさん持ちだから気にするなって」
「明日!?」
「大丈夫だよ。アーロンさんだし」
「国王だぞ……大丈夫なワケねぇだろ……つーか、なんでジュード達は平気そうなんだよ」
「セナっちが大丈夫って言うなら大丈夫かなーって」
「自分は腹をくくるしかないかと」
「……なんとなく」
ガルドさんはジュードさん達の返答に長いため息を吐いた。
「明日、朝ご飯の後迎えにきてくれるらしいよ」
私が言うと、再びため息をついたガルドさんは、疲れたように「わかった」と言って頭を押さえながら部屋の方へ歩いて行った。
「大丈夫かな?」
「大丈夫だよー。また夜ご飯のときにね」
「うん!」
ジュードさん達と階段で別れ、私達は階段を登って私達の部屋に入った。
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