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9章
お仕事モードの国王
みんなで朝ご飯を食べ終わって少しすると、リシクさんが馬車で迎えに来てくれた。
リシクさんの魔力が宿を中心にグルグル回ってたから、気を利かせて時間を潰してくれていたんだと思う。
人数が多いため馬車は二台。ガルドさん達とは別の馬車になった。
馬車の中でリシクさんはもうすぐカレーが販売されると教えてくれた。なんでも、食堂で提供する人達の練習に時間がかかったらしい。
お城の食堂では週一のカレー以外でも食べたいという声が多く、通常のメニューにも加えられたらしい。すき焼きとベビーカステラも大人気で、ベビーカステラは持ち歩く兵士さんが続出しているんだそう。
リシクさんと話しているとあっという間にお城に着いた。
お城では私がナイフを投げられたあの日から、身体検査をしているらしい。
私達もガルドさん達も特に何もされなかったけど、ガルドさん達は武器をマジックバッグに入れるようにお願いされていた。
「セナ様とお知り合いのパーティですので、身体検査は無意味だろうと」
「どういう意味だ?」
リシクさんの言葉にガルドさんが眉間にシワを寄せながら訊ねた。
「信頼しているという意味です。私共はセナ様を信頼しています。そのセナ様が信頼しているあなた方も信頼のおける人物だと思っています。……が、考えてもみてください。グレン様が本気を出したらお城なんて瓦礫の山です。この身体検査は主に貴族向けなんですよ」
リシクさんはニッコリとガルドさん達に微笑みかけた。
ガルドさん達はそんなリシクさんに気が抜けたらしく、肩の力が抜けていた。
「では、参りましょう」
「はーい」
「今回はある目的のため、申し訳ありませんが謁見という形を取らせていただきます」
「えー!?」
「げっ!」
リシクさんの説明の途中、私とガルドさんの声が被った。
朝ご飯のときに、私が「執務室で話すだけだと思う」とガルドさん達に言ったばっかなのに!
うっ……ガルドさんからの視線が痛い!
「ふふふ。大丈夫です。頭などは下げる必要はありませんし、返事だけしていただければ陛下が勝手に喋って終わります」
「は? そんなんでいいのか?」
「はい。後は流れに身を任せていただければ」
意味がわからないと放心気味のガルドさんに、ジュードさんが「諦めなよ」と言わんばかりに肩を叩いていた。
ごめん! ごめんね! ガルドさん!
リシクさんの案内で私達は謁見の間に通された。
謁見の間には貴族と思わしき人達が七人ほど壁際に並んでいる。貴族は私達を睨むようにガン見。
アーロンさんの視線に促されて謁見の間の中ほどまで進んだ。
心なしかアーロンさんがいつもよりシャキッとしているように見える。
「セナのパーティと【黒煙】のパーティだな? 今回、我が国に起こった未曾有の奇病……眠ったまま起きることなく死ぬ病に尽力してくれたと報告を受けている。間違いはないか?」
「…………はい」
ガルドさんは返事に迷ったみたいで結構な間があった。
「その病は終息を迎えたと。間違いはないか?」
「はい」
「この奇病が国中に広まっていたら我が国民は非業の死を遂げる者で溢れかえっただろう。国を治める王として最大の感謝を」
アーロンさんとレナードさんが二人揃って頭を下げると、私達の後ろにいるガルドさん達がギョッとしたのがわかった。
「その功績を称え、我が国からメダルを送る。セナのパーティメンバーであるジルベルトと【黒煙】パーティのリーダーであるガルド、前へ」
ジルとガルドさんがアーロンさんの前まで歩いて行くと、アーロンさんが「感謝する」と二人にメダルを渡した。
「この国での指名依頼は受けたくないものは受けなくて構わん。国の恩人に無茶な依頼などする者はいないだろう」
アーロンさんは壁際に並んでいる貴族に牽制するように視線を向けた。
なるほど。多分これが目的だ。
「この後セナのパーティと【黒煙】のパーティには報奨についてレナードから話がある。リシクに案内させよう。以上で今回の謁見は終わりだ。下がっていい」
アーロンさんはそう言ってジルとガルドさんに元の位置に戻るように促した後、玉座に座り直した。
タイミングよく謁見の間の扉が開き、入ってきたリシクさんに促されて私達が謁見の間から出るまで、貴族達は私達をガン見していた。
足早にアーロンさんの執務室に入ると、リシクさんが「お疲れ様でした」と紅茶を淹れてくれた。
「おそらく陛下が来るまで少し時間がかかると思いますので、くつろいでいてください」
〈セナ、おやつは? 我はポテチが食べたい〉
「コンソメとノーマルどっちがいい?」
〈コンソメだな!〉
「はぁ……どうして普通なんだ……つーか、メダルってなんだよ……」
グレンはいつも通りだけど、ガルドさんは完全にお疲れモード。ジュードさん達も困惑している。
「ソレ、アーロンさんがバックにいるよーって証だから、持ってて損はないと思うよ。私も前にもらったし」
「は!?」
〈むぐっ。確か、気にいらん貴族叩きのめしていいって言ってたな〉
「は!?」
「今回の目的はソレ渡して、貴族へ牽制することみたいだし……多分今、貴族からいろいろ聞かれてるんじゃないかな?」
「ふふふ。さすがセナ様ですね。大正解です。セナ様のレシピの件で怪しい動きをしていた者がおりましたので、先手を打たさせていただきました」
リシクさんが微笑みながら言うと、ガルドさんはまたため息を吐いていた。
私と会ってからガルドさんはため息をついてばっかりだ。
今回は私のせいじゃないと言いたいけど、レシピが関係しているなら私のせい。
申し訳なくなって、ガルドさん達にもポテチを渡した。ガルドさんから「こんなんじゃ誤魔化されないぞ」って視線をチクチクと感じたけど、何も言われないからスルーさせてもらう。
ガルドさんごめんね!
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