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11章
迷子の兄弟
翌朝、従魔のみんなに森を通るか迂回するか聞いてみると、全員一致で『森がいい!』と返ってきた。ガルドさん達にも了承を得て、森を突っ切ることが決定。
ガルドさん達はネラース達に騎乗して、私とジルは精霊に抱っこしてもらう。
急ぐ旅じゃないから歩いてもよかったんだけど……野営した場所の周りの魔物を狩っちゃったから早く移動したいらしい。森の中だからそこまで急げないのに……多分、気持ちの問題。
ネラース達もそこはちゃんとわかってくれているみたいで、乗せているガルドさん達を気遣って、無茶な動きはしていない。
魔物と遭遇することなく、しばらく進むと、開けた場所に出た。
少し時間は早いけど、お昼ご飯を食べることに。
ジルにも手伝ってもらい、ジュードさんと三人でご飯作り。
今日のお昼はアジフライ定食。これはアクランからのリクエスト。たまにお魚が食べたくなるみたい。白熊だもんね。
いつもお肉ばっかり求められるから、お魚と野菜のリクエストは私も嬉しい。
「セナっちの料理は面白いよねー。油で揚げるだけで美味しくなるなんて! 魚なんて丸焼きしか食べたことなかったよー」
「ジュードさん達も気に入ってくれたら嬉しいな」
「大丈夫! 大丈夫! セナっちの料理は全部美味しいから!」
ジュードさんの私の料理に対する信頼が厚い! 失敗しないように気を付けないと!
できたご飯をみんなに渡し、いざ食べようとすると、魔物以外の気配を察知した。料理に夢中で、近くに来るまで気が付かなかった。
「セナ様? いかがいたしました?」
「多分人間二人、あっちにいる」
〈いるな。冒険者か?〉
「そこまではわかんないけど、動きはゆっくり……あ! ちょっと早くなったっていうか魔物に追われてるっぽい」
私が言うと、みんなは顔を見合わせた。
〈助けるのか?〉
「ちょっと気になるから見てこようかな? グレンは食べてていいよ?」
〈ダメだ。盗賊の可能性もあるから我も行く。ニヴェスとネラースもだ〉
『『!』』
グレンに名指しされた二人は驚いたように顔を上げた。絶対食べたかった反応だよ。
残るメンバーは食べずに待っていてくれることになり、私はネラースの背中に乗せてもらう。
ネラース達に指示を出し、森の中を三キロほど急いで進むと、声が聞こえてきた。泣き声と急かす声。
「この声って……子供!?」
さらにネラースにスピードを上げてもらい、魔物に襲われる間一髪のところに滑り込む。
今にも襲いかかろうとしていたフォレストウルフを風魔法で吹き飛ばすと、後ろから「「ひぃぃ!」」と悲鳴が聞こえた。
吹き飛ばしたウルフをニヴェスとグレンに任せ、振り返ると十歳と七歳くらいの男の子二人。痩せていて、服もボロボロ。泣いている小さい子の方が大きい子にしがみついているし、クリクリとした目のパーツが似ているから兄弟だと思う。
「大丈夫?」
「え……? しゃ、喋った……」
兄と思われる方が驚きに目を見開いた。ネラースに隠れて私が見えていないらしい。しゃがみこんでいるから余計に。
私がネラースの背から下りると、「子供……」と呟いたのが聞こえた。
私も子供だけど、そういうキミ達も子供じゃんと苦笑いが零れる。
「大丈夫? ケガは?」
「にぃちゃん……」
「だ、だいじょぶ」
兄の方が弟を庇うように答えてくれたけど、ガッツリ膝に転んだ証が付いている。
「うーん。とりあえず、このポーション飲んで。その膝のすり傷治るよ」
「ポ、ポーション買うお金ない」
「え? あぁ! 私達、冒険者だからポーションいっぱい持ってるの。請求なんかしないから安心して。はい! どーぞ」
警戒されないようにニッコリと笑いかけながら渡すと、おずおずと受け取って、迷う素振りを見せながらも飲んでくれた。
「「お、おいしい……」」
「それはよかった! うん、ケガも治ったね」
〈で、こやつらはなぜここにいる?〉
「「ひぇっ」」
ウルフが一匹だったからか、遭遇したのが子供だったからか、ちょっと不機嫌そうなグレン。
そんなグレンを見て、少年達は身を寄せ合ってしまった。怖いらしい。
グレンに少し待っててもらおうとパンを出すと、少年達のおなかが鳴った。
少年達にもパンを渡し、どうして魔物に追われていたのかを聞く。
「ボク達お金ない……匂い鉱石採りにきた。いつもより奥、進んで……帰り道わからなくなった……」
なるほど迷子か。
「村の名前は? あと、匂い鉱石ってなーに?」
「フィメィ村。匂い鉱石は、匂いがする」
フィメィ村ね。マップだと森の反対側か。結構離れてるから、二、三日迷子だったのかも……森を突っ切って行くとしたら寄れる場所だ。
匂いがする鉱石を匂い鉱石ってまんまじゃない? もうちょっと詳しい説明が欲しかったんだけど、子供だからしょうがないか……
〈どうするんだ?〉
「放置はできないから、送ってあげようと思う。とりあえず、みんなのところに戻らないと」
グレンを怖がっている二人に、まずは私達の自己紹介。
その後、私の仲間が待っていること、私達もお昼ご飯の途中だったこと、私以外にももう一人子供がいること、をギルドカードを見せながら説明していく。
「なんか……説明すればするほど怪しい人みたいだね……グレンも怖くないから安心して欲しいんだけど……」
力説した後、肩を落とすと「ふふっ」と二人に笑われた。
何が面白かったのかはわからないけど、緊張を解すことに成功したみたい。
グレンに頼んで二人をニヴェスの背中に乗せてもらう。私も再びネラースに騎乗して、彼らに質問しながらみんなのところへ出発。
兄がツィンクで九歳、弟がセブダルで六歳。四日前から森を彷徨っていた。森で見つけたナッツと薬草で飢えを凌いでいた。
匂い鉱石は、熱すると香りを放つ鉱石の総称で、いろいろな匂いの鉱石がある。
それは通常は鉱山で採掘されているけど、森の地面を掘っても出てくる。
兄弟は幼さから坑道に入れない。でも生活は苦しい。そこで、少しでも両親の手助けをしようと今回森に入った。
村は匂い鉱石を街に卸して生活しているけど、安く買い叩かれているため、村全体が貧しい。
「なるほど。使い道ありそうなのに……」
とりあえず、聞きたいことは聞けた。
さっきからグレンに〈遅い〉と念話でせっつかれている。指輪からウェヌスを呼んで、彼らを眠らせてもらった。
二人が眠ったところで転移。みんなのすぐ近くまで移動したら、ウェヌスに二人を起こしてもらう。ウェヌスはすぐに精霊の国に戻って行った。
彼らからしたら、話している間に移動した感じになっていると思う。迷子になっているくらいだから、現在地はわからないハズ。
「着いたよ~。ただいまー!」
「おかえ、りっ!?」
「セナ様、そちらは……?」
私が声をかけると、ガルドさん達は驚き、ジルは警戒するように目を細めた。
「んとね、森でウルフに襲われてたの。森の反対側の村の子で、ツィンク君とセブダル君。迷子だったから送ってあげようと思って、連れて来ちゃった」
「そっかー。大変だったねー。もう大丈夫だよー」
ジュードさんが兄弟を撫でてあげると、安心したのか泣き出してしまった。
落ち着いたところを見計らって、お互いに自己紹介。
彼らには作り置きしていたスープを渡し、みんなお待ちかねのお昼ご飯。
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