289 / 533
11章
ラブロマンス
しおりを挟むガルドさん達も復活して、今日は魔女おばあちゃんが言っていた貴族エリアの催し物の日。
私達は全員でお昼ご飯を食べた後、貴族エリアに赴いた。
貴族用の催し物と聞いていたから、私はパパがくれた装備品の中から選んだ高そうな赤いワンピース、ジルは執事服、グレンは軍服コスプレを着ている。ガルドさん達四人はいつも通りの服装で、私達三人を警護する冒険者という設定。
「セナ達が着替えてくれて正解だったな……」
「そうだねー。全員がいつもの格好だったら目立ってたねー」
ガルドさんとジュードさんの会話の通り、冒険者の格好をしてたらかなり浮いていた。
街ゆく人はほとんどが明らかに貴族とわかる服装で、冒険者や平民の格好をしている人は極少数。
おかげで、街を歩く貴族達はガルドさん達を見て驚きの表情を浮かべる。ただ、私達三人を見て納得した表情もするから、今回の設定は正解だったみたい。
「ガルドさん達も着替えればよかったのに」
「そんな堅苦しい服着てたら、いざってときに動けねぇだろうが」
「そんなにしょっちゅう何かが起きたりしないと思うよ?」
「……そうだといいがな」
ガルドさんは私にジト目を送ってくる。私はトラブルメイカーだと思われているらしい。
ガルドさん達と一緒になってからは問題らしい問題も起こっていないのに……解せぬ。
「アハハ。そんなむくれないのー。劇とサーカスがあるらしいけど、セナっちは先にどっち見たいのー?」
口を尖らせていた私に、配られていたビラを見ていたジュードさんに話しかけられた。
ビラを見せてもらうと、開演時間が載っていた。一時間ほどで劇が始まるらしい。
「ここから近いし、劇を先に見よ!」
劇は屋内で行われているらしい。
ビラの地図を頼りに向かった先には、豪華な装飾が施してある建物が現れた。
簡易的なものではなく、元々建っている劇場を使っているみたい。
建物はアーチが並び、尖塔がいくつも伸びていて、窓はステンドグラス、よくわからないこちゃこちゃとした装飾。
ロマネスク様式? ゴシック様式? バロック様式? 学校の授業でチョロっとやった気がするけど、よく覚えていない私にはどれだと断言はできない。とりあえず世界遺産とかの建物っぽい!
貴族が乗ってきた馬車で建物前は大混雑。
私達は馬車を避けて劇場内に入った。
チケットを買いに行ってくれていたジルが、チケットを持って戻ってきた。
「セナ様、一階席と二階席があり、二階席は個室となっているようです。セナ様は二階席をご希望なさるかと、二階席のチケットを購入してしまいましたがよろしかったでしょうか?」
「さすがジル! ありがとう!」
二階席は個室だから周りに気を遣わなくていい。個室故の値段だったことを後で知り、かなり多めにお金を渡しておいてよかったと胸を撫で下ろすことになった。
ジルは気を利かせて言わなかったけど、アルヴィンによると、一階席だと冒険者の格好をしているガルドさん達は一緒に見られないと言われたらしい。私ならみんなで見たがるだろうし、値段を聞いたらガルドさん達が気にしそうだと即決したみたい。私にはもったいないくらい素晴らしくできる子!
係員に案内されて二階席へ。着いた先はテーブルとイスがあり、出窓のようにセリ出たところからステージを見られる部屋だった。
なんか映画で見たことあるわ。あれは貴婦人がオペラ観賞するシーンだったような……
「飲み物や食べ物を注文できますが、皆様は何か頼まれますか?」
〈こういうところのは信用できないぞ。我はセナの料理がいい〉
「多分、持ち込みは禁止だと思うから、カモフラージュのために適当に頼んでもらってもいい? あと、イス四つ追加で用意してもらって」
「かしこまりました」
おそらく用意されていないイスはガルドさん達の分。警護の冒険者だから必要ないと思われたのかも。
イスと料理を運んできたスタッフに訝しげな視線を送られたから「劇はちゃんとお行儀よく座って見なくちゃダメなのよ。お母様が言ってたもの」と、子供らしく舌っ足らずに言っておいた。これで納得してくれることを願う。
〈((セナ、盗聴されている気配はしないが、念の為結界を張れ))〉
「はーい。もう喋っても大丈夫だよ」
グレンに言われて結界を張ると、ガルドさんに話しかけられた。
「さっきのは何だ?」
「ん?」
「いつもと口調変えただろ?」
「怪しまれてるっぽかったから、貴族の子供っぽくしてみたんだけど……変だった?」
「アハハ! なるほどねー! ぽかった、ぽかった!」
「少しツンとした雰囲気がまたお嬢様みたいでしたね」
ジュードさんとモルトさんが笑っている。その笑いがディスりじゃないといいんだけど……
料理は鑑定した結果、特に毒とかは見当たらなかった。念の為ジルが毒味をして、私が好きそうなものだけ取り分けてくれた。
ブザー音が鳴って、始まった劇は……女性が好きそうな恋愛劇。
貴族の女性が舞踏会で、とある男性と出会う。出会った男性に心が惹かれるけど、女性には婚約者がいる。政略結婚であるため、家族は裏切れない。
何回か舞踏会で秘密の逢瀬を重ねて、女性は相手に「もう会えない」と告げる。男性は「僕のことが好きなら迎えに行く」とその場を去った。
数日後、隣国の王太子が女性を迎えに来てプロポーズ。めでたし、めでたし。
……という、内容のラブロマンス。
幕が閉じた瞬間、会場からウットリとしたため息がそこかしこから聞こえてきた。
私は……正直言って好みじゃない。山場がないんだよ! 盛り上がる山場が!
婚約者と決闘したり、かけおちしたり……すれ違いやジレジレなんてこともなく、全部が出来レース。
王太子の自国で問題にならないのも不思議。
普通さ、国を背負う王太子から「好きな人ができました。結婚したいと思います」って報告受けたら「どこの誰だ?」ってならない? 王様は「そうか」とだけ返事をして、その相手のことを調べる描写もなかったんだよね。っていうか、何故隣国の王太子ともあろう人が普通の貴族が開いた舞踏会という名の夜会に出席してんの? 謎すぎない? こんなこと思っちゃう私がおかしいの?
「セナ様はこういったお話がお好きなのですか?」
「好き……だと思う?」
「ククク。お前さん、途中から料理食うスピード上がったもんな。飽きたんだろ?」
ガルドさんに見られてたなんて恥ずかしっ!
食べちゃうのもしょうがないと思うの。だってつまんないんだもん……
「うん。恋愛劇ってもっと紆余曲折があって結ばれる感じかと思ってた。こんなにすんなり事が進むなんて……サーカスに期待しよう!」
私達の好みじゃなかっただけ。実際他の人には好評だったみたいだし。料理が不味くなかっただけよしとしよう!
1,129
あなたにおすすめの小説
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
4/10コミック1巻発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
2026/01/20追記
『魔王様、溺愛しすぎです!』のコミカライズ情報、解禁となりました!
TOブックス様から出版、1巻が4/10発売予定です。
キャラクターデザインに『蒼巳生姜(@syo_u_ron)』先生! 以前表紙絵をお願いした方です(*ノωノ)
漫画家は『大和アカ(@asanyama)』先生です° ✧ (*´ `*) ✧ °
連載については改めて発表させていただきますね_( _*´ ꒳ `*)_
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2026/01/20 1巻発売日(4/10)発表!
※2025/12/25 コミカライズ決定!
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。