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11章
ラブロマンス
ガルドさん達も復活して、今日は魔女おばあちゃんが言っていた貴族エリアの催し物の日。
私達は全員でお昼ご飯を食べた後、貴族エリアに赴いた。
貴族用の催し物と聞いていたから、私はパパがくれた装備品の中から選んだ高そうな赤いワンピース、ジルは執事服、グレンは軍服コスプレを着ている。ガルドさん達四人はいつも通りの服装で、私達三人を警護する冒険者という設定。
「セナ達が着替えてくれて正解だったな……」
「そうだねー。全員がいつもの格好だったら目立ってたねー」
ガルドさんとジュードさんの会話の通り、冒険者の格好をしてたらかなり浮いていた。
街ゆく人はほとんどが明らかに貴族とわかる服装で、冒険者や平民の格好をしている人は極少数。
おかげで、街を歩く貴族達はガルドさん達を見て驚きの表情を浮かべる。ただ、私達三人を見て納得した表情もするから、今回の設定は正解だったみたい。
「ガルドさん達も着替えればよかったのに」
「そんな堅苦しい服着てたら、いざってときに動けねぇだろうが」
「そんなにしょっちゅう何かが起きたりしないと思うよ?」
「……そうだといいがな」
ガルドさんは私にジト目を送ってくる。私はトラブルメイカーだと思われているらしい。
ガルドさん達と一緒になってからは問題らしい問題も起こっていないのに……解せぬ。
「アハハ。そんなむくれないのー。劇とサーカスがあるらしいけど、セナっちは先にどっち見たいのー?」
口を尖らせていた私に、配られていたビラを見ていたジュードさんに話しかけられた。
ビラを見せてもらうと、開演時間が載っていた。一時間ほどで劇が始まるらしい。
「ここから近いし、劇を先に見よ!」
劇は屋内で行われているらしい。
ビラの地図を頼りに向かった先には、豪華な装飾が施してある建物が現れた。
簡易的なものではなく、元々建っている劇場を使っているみたい。
建物はアーチが並び、尖塔がいくつも伸びていて、窓はステンドグラス、よくわからないこちゃこちゃとした装飾。
ロマネスク様式? ゴシック様式? バロック様式? 学校の授業でチョロっとやった気がするけど、よく覚えていない私にはどれだと断言はできない。とりあえず世界遺産とかの建物っぽい!
貴族が乗ってきた馬車で建物前は大混雑。
私達は馬車を避けて劇場内に入った。
チケットを買いに行ってくれていたジルが、チケットを持って戻ってきた。
「セナ様、一階席と二階席があり、二階席は個室となっているようです。セナ様は二階席をご希望なさるかと、二階席のチケットを購入してしまいましたがよろしかったでしょうか?」
「さすがジル! ありがとう!」
二階席は個室だから周りに気を遣わなくていい。個室故の値段だったことを後で知り、かなり多めにお金を渡しておいてよかったと胸を撫で下ろすことになった。
ジルは気を利かせて言わなかったけど、アルヴィンによると、一階席だと冒険者の格好をしているガルドさん達は一緒に見られないと言われたらしい。私ならみんなで見たがるだろうし、値段を聞いたらガルドさん達が気にしそうだと即決したみたい。私にはもったいないくらい素晴らしくできる子!
係員に案内されて二階席へ。着いた先はテーブルとイスがあり、出窓のようにセリ出たところからステージを見られる部屋だった。
なんか映画で見たことあるわ。あれは貴婦人がオペラ観賞するシーンだったような……
「飲み物や食べ物を注文できますが、皆様は何か頼まれますか?」
〈こういうところのは信用できないぞ。我はセナの料理がいい〉
「多分、持ち込みは禁止だと思うから、カモフラージュのために適当に頼んでもらってもいい? あと、イス四つ追加で用意してもらって」
「かしこまりました」
おそらく用意されていないイスはガルドさん達の分。警護の冒険者だから必要ないと思われたのかも。
イスと料理を運んできたスタッフに訝しげな視線を送られたから「劇はちゃんとお行儀よく座って見なくちゃダメなのよ。お母様が言ってたもの」と、子供らしく舌っ足らずに言っておいた。これで納得してくれることを願う。
〈((セナ、盗聴されている気配はしないが、念の為結界を張れ))〉
「はーい。もう喋っても大丈夫だよ」
グレンに言われて結界を張ると、ガルドさんに話しかけられた。
「さっきのは何だ?」
「ん?」
「いつもと口調変えただろ?」
「怪しまれてるっぽかったから、貴族の子供っぽくしてみたんだけど……変だった?」
「アハハ! なるほどねー! ぽかった、ぽかった!」
「少しツンとした雰囲気がまたお嬢様みたいでしたね」
ジュードさんとモルトさんが笑っている。その笑いがディスりじゃないといいんだけど……
料理は鑑定した結果、特に毒とかは見当たらなかった。念の為ジルが毒味をして、私が好きそうなものだけ取り分けてくれた。
ブザー音が鳴って、始まった劇は……女性が好きそうな恋愛劇。
貴族の女性が舞踏会で、とある男性と出会う。出会った男性に心が惹かれるけど、女性には婚約者がいる。政略結婚であるため、家族は裏切れない。
何回か舞踏会で秘密の逢瀬を重ねて、女性は相手に「もう会えない」と告げる。男性は「僕のことが好きなら迎えに行く」とその場を去った。
数日後、隣国の王太子が女性を迎えに来てプロポーズ。めでたし、めでたし。
……という、内容のラブロマンス。
幕が閉じた瞬間、会場からウットリとしたため息がそこかしこから聞こえてきた。
私は……正直言って好みじゃない。山場がないんだよ! 盛り上がる山場が!
婚約者と決闘したり、かけおちしたり……すれ違いやジレジレなんてこともなく、全部が出来レース。
王太子の自国で問題にならないのも不思議。
普通さ、国を背負う王太子から「好きな人ができました。結婚したいと思います」って報告受けたら「どこの誰だ?」ってならない? 王様は「そうか」とだけ返事をして、その相手のことを調べる描写もなかったんだよね。っていうか、何故隣国の王太子ともあろう人が普通の貴族が開いた舞踏会という名の夜会に出席してんの? 謎すぎない? こんなこと思っちゃう私がおかしいの?
「セナ様はこういったお話がお好きなのですか?」
「好き……だと思う?」
「ククク。お前さん、途中から料理食うスピード上がったもんな。飽きたんだろ?」
ガルドさんに見られてたなんて恥ずかしっ!
食べちゃうのもしょうがないと思うの。だってつまんないんだもん……
「うん。恋愛劇ってもっと紆余曲折があって結ばれる感じかと思ってた。こんなにすんなり事が進むなんて……サーカスに期待しよう!」
私達の好みじゃなかっただけ。実際他の人には好評だったみたいだし。料理が不味くなかっただけよしとしよう!
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