文字の大きさ
大
中
小
266 / 500
11章
馬と罠
朝からテンションの高いネラース達を宥め、みんなでラジオ体操して準備はバッチリ。
「今日は森を歩きながら進みます! 離れてもいいけど、ちゃんと位置は確認してね? お昼ご飯には私のところに集合すること」
『『『『はーい!』』』』
「行ってきていいよ」
私がネラース達に声をかけると、『わーい!』と飛び出して行った。
「んじゃ俺達も出発するか」
「うん!」
歩き出した私達の話題は、魔女おばあちゃんが言っていた〝私達の望むモノ〟について。
心当たりはないのか聞かれたんだけど、食材くらいしか思い浮かばないんだよね……
「でも、おばあちゃんの言い方だと食材じゃないと思う」
「どういうことだ?」
「〝望むモノがいる〟って言ってたでしょ? 食材ならあるって言うと思うんだよね。だから生き物じゃないかと思ってたの。ただ、ケチャップが魔物だったから、食材関係の魔物の可能性もあるけど……」
「なるほどな」
「あ! ペンペン草! あっちはサヴァ草だ!」
話している途中で薬草を見つけて採取していく。
「あんま離れんなよ」
「はーい!」
「セナ様、先ほどクロバ草が生えておりましたので採取しておきました」
「わー! ジル、ありがとう!」
「っつーか、セナもジルベルトもこの森ん中でよく見つけられるな……」
「セナっちだからねぇー。ジルベルトはヒュノス村のお婆さんに鍛えられてたし」
なんか呆れられてる感じがするんだけど、何でだろ? 薬草はあって困るもんじゃないのに……
「あ! グレン、魔物いたけど、狩ってくる? それとも一緒に狩る?」
〈暇だから狩ってくる。セナはジルベルトとガルド達から離れるな〉
「はーい。気を付けてね」
グレンを送り出して私は薬草採取を再開。
この森は薬草が多い。採取に来る人が少ないのかな?
なんてことを考えながらウロチョロしていると、ニヴェスから念話が届いた。
『((ご主人様、罠にかかった魔物がいますン))』
「((罠?))」
『((はい。いっぱいあって近付けないですン))』
ガルドさん達に理由を説明して、グレンに念話を飛ばしてからニヴェス達のところへ向かう。
私はガルドさん、ジルはジュードさんの背中におぶわれて向かった先には、太い蔓に巻かれた馬が七頭いた。
馬は苦しげな声を漏らし、息も絶え絶え。
「何これ……」
《酷いな……》
《セナちゃん、無闇に近づいちゃダメよ。魔法があちこちに仕掛けられてるわ》
私達に気が付いた一番大きな馬が暴れて、さらに蔓に締め上げられてしまった。
「助けてあげるから暴れちゃダメ! もっと苦しくなっちゃう!」
『そうよ! 大人しくしなさい! 死にたいの!?』
クラオルの援護が効いたのか、私を睨みつけていた目が驚きに染まった。
《セナちゃん、これ、多分だけど、あのサーカス団の呪術師の魔法だと思うわ》
「え!?」
《ただ、魔法がかけられたのは三週間くらい前ね》
三週間っていうと、あの街でサーカスの催しが始まる前だ。サーカス団がフォースタンケの街に来る前に仕掛けたと思ってよさそう。
自然に生えている蔓に魔法をかけ、触れたモノに絡みつくようになっているらしい。
切っちゃえばいいんじゃないかと思ったけど、動けばさらに絡みつかれるなんて悪循環に陥ってしまう。しかも、魔物は魔法を使えない個体も多く、使えたとしても自身を傷付けずに蔓だけを切るような精密な魔法は難しいそう。
(こうやって罠にかけた魔物に隷属の首輪を着けてたのね……なんてヤな奴! 見つけたらとっ捕まえてやる!)
《数が多いが、一つずつ解除すれば大丈夫そうだ》
「よし! やろう!」
エルミスとプルトンに教えてもらいながら無効化していく。解除というよりも魔法を上書きして作動しないようにする感じ。
闇魔法だったのでネラース、ジル、プルトンにも手伝ってもらう。ガルドさんは手伝ってくれようとしたんだけど、調整が難しいのかできなかった。
〈何だコイツらは?〉
「あ、グレン。おかえり。あのサーカス団の呪術師が仕掛けてた罠を解いてるの。近付いちゃダメだよ?」
〈わざわざ解除しなくても引きちぎればいい〉
「ちょっと、グレン!」
〈うおっ!〉
「だから言ったのに……」
ズンズンと近寄ったグレンに蔓が絡みついてしまった。腕も足も捕られて、引きちぎるどころじゃなくなっている。
「グレン、大人しくしてて。火はダメだよ? 森が燃えちゃうでしょ」
〈ムゥ……わかった……〉
グレンを助け出し、一つ一つに魔法を重ねがけしていく。
こんな厄介な罠よく作ったよね……
蔓が解かれた馬達はかなり衰弱していて、ヒールでは骨折や引き裂かれた皮膚しか治らなかった。
クラオルに許可をもらい、チートなリンゴを食べさせていく。
「あ……この子……」
《そうなの。助けたときにはもう……》
「間に合わなくてごめんね……」
最後の一頭、一番小さい子は既に手遅れだった。
私が子馬を撫でてあげていると、回復した六頭の馬が集まってきた。
馬達はしきりに子馬に鼻を擦り寄せていて、その姿は「起きなさい」と言っているように見える。
馬達から離れ、様子を見守っていると隣りに来たガルドさんにガシガシと頭を撫でられた。
「気に病むな。セナは助けてやっただろ? 誰もお前さんを責められねぇよ」
「でも……」
「両手で救おうとしても手から零れちまうのだってある。そんなもんだ」
「それ、仏様の手の話?」
「何だそれは」
「ううん、何でもない。ありがとう」
確か仏様は手から零れちゃう人も救おうと、手に水かきみたいなのが付いている。それでも零れ落ちる人もいるから、何度も救いの手を差し伸べる――みたいな話だったと思うんだけど……昔、観光地でチョロっと聞いただけだから記憶が定かじゃない。
――――ヒヒィィィィィン!!
子馬が起きないことがわかったのか、馬達の悲しげな嘶きが響き渡った。
感想 1,821
あなたにおすすめの小説
「子を産めない妻はいらない」と離縁されたので、七人の孤児がいる辺境伯家に嫁ぎます~なぜか全員に懐かれました
ゆぷしろん「子を産めない妻はいらない」
七年尽くした夫にそう告げられ、伯爵夫人アメリアは若い愛人にすべてを奪われた。
手元に残ったのは、わずかな生活費と母の形見だけ。居場所を失った彼女のもとへ届いたのは、北の辺境伯グレンからの求婚状だった。
そこに記されていたのは、前夫が一度も見ようとしなかったアメリアの功績。求められたのは跡継ぎを産む妻ではなく、戦争で荒れた領地と屋敷を共に守る伴侶だった。
だが、嫁ぎ先で待っていたのは、親を失い心に傷を抱えた七人の孤児たち。
反発する少年、言葉を閉ざした幼子、飢えを恐れる少女。アメリアは叱るのではなく、一人ずつ寄り添っていく。
やがて子どもたちは彼女を「かあさま」と呼び始める。
そんな幸せを取り戻しかけたある日、彼女を捨てた前夫が再び現れて――。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
由香神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
お飾り継母のはずでしたが、冷酷侯爵家の幼女たちが離してくれません
五十嵐紫義母と異母妹に虐げられながら生きてきた子爵令嬢セシリアは、ある日突然、“氷の侯爵”と恐れられる辺境侯爵レオンハルトへ嫁ぐことになる。
それは愛のない政略結婚——のはずだった。
けれど侯爵家で待っていたのは、冷たい侯爵ではなく、母を亡くして寂しさを抱えた幼い姉妹だった。
「……おかあさま、いなくならない?」
夜泣きをする次女ミーナ。
無理に大人びようとする長女リリア。
セシリアは戸惑いながらも、温かな食事を作り、小さな手を握り、少しずつ姉妹との距離を縮めていく。
やがて冷え切っていた侯爵家に、笑顔とぬくもりが戻り始める。
しかしその裏では、亡き前妻の死にまつわる秘密と、侯爵家を狙う陰謀が静かに動き出していた——。
これは、“お飾りの継母”として嫁いだ女性が、不器用な侯爵と幼い姉妹に愛されながら、本当の家族になっていく物語。
悪役令嬢の幼女時代に戻ったので、お兄様を救います ~断罪回避より家族優先です!~
由香断罪され、すべてを失った悪役令嬢ルシア。
死んだはずの彼女が目を覚ますと、そこは五歳の頃の世界だった。
今度こそ病弱なお兄様を救い、家族の破滅を回避したい!
幼女になった元悪役令嬢が、前世の知識を武器に運命へ立ち向かう家族愛たっぷりの逆行ファンタジー。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
最強の魔王ですが、転生したら公爵家の愛され幼女でした ~平和に暮らしたいだけなのに、家族も王子様も聖獣も過保護すぎます~
由香かつて世界を統べた最強の魔王。
長き眠りの果てに目覚めると、公爵家の五歳の令嬢リリアーナへと転生していた。
今度こそ平穏な人生を送ろうと決めたのに、父も母も兄たちも超過保護。
さらには王子や聖獣まで集まり始めて……?
本人は世界最強なのに、なぜかみんなに守られてばかり。
愛され幼女が巻き起こす、勘違いだらけのほのぼのファンタジー!
旦那様には好きな人がいる
えくれあ私の旦那様である、テオドール・セルヴァン侯爵様には好きな人がいる。
それは、幼馴染であり、王太子妃でもあるマチルダ様だ。
お二人は、いつもとても仲睦まじいご様子で、そんな叶わぬお二人の恋をそっと見守るのが私の日常だった。
そんなある日、夜会にめったに顔を出さない王太子殿下に、ダンスに誘われて。それがきっかけで、私の日常は少しずつ変化し始めた。