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第三部 12章
閑話:召喚したい女
とある一室、床一面に描かれている魔法陣の前で、女が一人、気合いを入れていた。
「ふっふ~ん。今回こそは成功してみせるわ! 呼び出した美丈夫と今夜は…………うふふふふ」
自分の妄想を脳内再生していた女は締まりのない表情を浮かべている。それは他人が見れば引くほどのニヤケ顔だった。
「……は! それを現実に! ってあら? え? えぇ!? 何なのよこの子!」
自分が描いた魔法陣のド真ん中に、先ほどまではいなかった少女がうつ伏せで横たわっていた。
少女は頭から血を流し、髪から覗く顔色は白すぎるくらいだった。
目がおかしくなったのかと女が自分の目を擦っても、目の前からは消えない。
「え? イイ男を召喚するための魔法陣描いたハズなんだけど……」
女が困惑している間に、少女は透明な球体に囲われ、宙に浮かび上がった。
「え!? アタシ何もしてないのに何で!?!?」
女はこの状況を何とかしようと試みるが、起動していないハズの魔法陣を止める術はわからない。
「どうやって止めろって言うのよ! 大体なんで女の子なのよ! ここはせめて男の子でしょ!」
浮かぶ少女を見ていると、グッタリしている少女の首元の何かが弾け飛ぶと同時に、透明な球体も弾けた。それによって少女は床に落ちるところをすんでで女がキャッチした。
「キャア! ちょっと、大丈夫!? 我が癒しの心を持って、この少女の回復を願う。【ヒール】…………何で効かないのよ!」
女は少女を助けようと、何回も回復魔法をかけても効かず、女は焦り始めた。
いくら見ず知らずの子供だとしても、自分の魔法陣の誤作動で呼んでしまったかもしれない少女を見殺しにはできない。
「この子の中の魔力がおかしいわ……」
女は、この少女の中にある膨大な魔力の渦に自分の魔力が呑み込まれてしまうから回復ができないのではないかと思い当たった。
「……ポーション! ポーションがあったハズよ!」
少女を横たえ、女は隣りの部屋に急いで向かう。
棚をひっくり返し、小箱の中に入れてあったポーションを発見した。
戻った女は、ゆっくりと少女に中級ポーションを飲ませる。
「お願いだから飲んで……ここで死なないで……」
何とか二本目で傷が塞がり、三本目で顔色が少しよくなった。
それでも少女が目を覚ます気配はない。
「あぁ……こんな予定じゃなかったのに……」
女の少女が助かった安堵と、想定外の疲労の滲んだ声が虚しく部屋に響いた。
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