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16章

第一王子と第二王子 (※お知らせアリ)

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 いつも読んでいただきありがとうございます。
 今回も本編の前にお知らせを。

 Twitterではお先に情報解禁しておりましたが……
 この度、大変お待たせしておりました第二巻の発売が決定しましたー!!
 予定日は7月19日!


 コミカライズ化に続いて嬉しいお知らせができて嬉しい限りでございます。
 本日の夜に改めまして近況ボードを更新したいと思っておりますので、読んでいただけると幸いです。

 以上お知らせでした。
 引き続き本編をお楽しみください。


--------キリトリ線--------


 作っておいてもらって申し訳ないとは思うものの、口に合わない料理の数々にだんだんと会話が減っていく。
 私はピーマンの丸焼きが出てきた時点でギブアップ。いつも通りグレンとジルが食べてくれるでしょ! なんて思っていたのに、二人が私のお皿に手を伸ばすことはなかった。つい一品前まで食べてくれてたのに!

 盛り上がらない食事を終えた私達は二手に分かれた。私、グレン、ジル、ガルドさん、コルトさんの五人はサロンで、他のメンバーは宿である。
 なんでかって、アーロンさんとナノスモ親子の話し相手兼護衛だ。とうに日は暮れているし、調べ物は捗っていないみたいで時間がかかることが簡単に予想できたから。
 ニキーダとジィジがいれば大抵のことには対処できそうだけど……ジィジいわく、〝護衛〟っていうのが大事なんだって。

 一応言っておくと、ヴィルシル側は必死に調べてくれている。怒号が飛び交うくらいには。
 ただ、謝罪をしてくれたのはアデトア君だけで、ヴィルシル王からはされていない。ニキーダが「そちらの対応次第で期限を延ばす」って言ったのを「さっさと調べろ」と受け取ったっぽい。


 サロンに戻った私達はアデトア君待ち。王様達より話が通じるからね。
 メイドが壁際に二人ほどいるものの、フラーマ王子一行が現れないため、先ほどより気を張らなくていい。押し問答の末、チビっ子のワガママという形でガルドさんとコルトさんもソファに座っている。
 口直しご飯を食べたり、設置してあるピアノで演奏したり、本を読んだりと時間を潰すことになった。

 私がジルの膝枕で束の間の睡眠に身を委ねていた夜中――日付けが変わる少し前にアデトア君が顔を出した。
 夕方庭で会ったとき以上にお疲れなオーラが滲み出ている。

「んん……アデトア君おかえりなさい」
「……ただいま。遅くなって悪い。寝てたのか?」
〈当たり前だ。いつもならとっくに寝てる時間だぞ〉
「悪いって! 殺気を出すな、殺気を!」
〈フンッ。殺気ではない、威圧だ〉
「オレ達からすれば変わらないんだよ……」
「ほらほら、座ってお話しよ?」

 向かい側のソファを示す。
 ガルドさんとコルトさんがアイコンタクトを取り、二人の間にアデトア君を座らせた。逃さないというよりも護衛として。
 アデトア君もそれがわかったのか、嫌な顔をすることもなく、一連の動作はスムーズだった。

「結界石使ってもいい?」
「は?」
「メイドさん、倒れたら危ないから」
「……あぁ、なるほど、そうだな。キミ達、こんな時間までありがとう。今日はもう下がってくれ」

 私の意図を汲んだアデトア君がソファから立ち上がって指示を出すと、二人のメイドさんは一瞬驚いた後、すぐに会釈して退出した。
 それを見送った私はジルに結界石を設置してもらい、さらに念話でプルトンに頼んで防音の結界を張ってもらった。
 嫌な感じはしないけど、念には念を入れないとね。

「もう喋って大丈夫だよ」
「では報告としよう。夕刻に聞いた人相の人物達は拘束して尋問中だ。これはおそらく時間がかかる。最低でも明日にならなければわからないだろう。そして問題の死んだやつだが――」

 アデトア君からの報告ではくだんの人物についての進展は芳しくないらしい。っていうか、別件の横領と用途不明の使い込みが発覚して、今現在、経理部門だけの問題では済まされない自体にまで発展してるんだそう。

「うげぇ……それ、また第二王子に国王に意見して国を改革させた~とか言われるパターンじゃん。今回のことは私被害者側なのに……」
「あいつも身動きが取れないからな。自由なセナが羨ましかったんだろう。すまん。わかりにくいが、悪いやつではないんだ」
「えぇー、そうなの?」
「ハハッ。まぁ、聞けよ。オレが王太子とされたのは母……王妃が呪われし子……〝忌み子を産んだ〟と精神的に追い詰められたからだ――」

 精神を病んだ王妃は心身ともに衰弱。第二子は望めない。そのため、第二妃を娶った。
 しかしその事実が、幼馴染みで小さなころから愛を育んできた王妃の精神状態を悪化させることとなる。
 第二子が産まれ、それが男であることが判明すると王妃の精神に追い打ちをかける。王妃の精神的負担減少と生命を繋ぎ留めるため、〝忌み子〟を王太子とした。
 過去の記録から忌み子は総じて短命である。ならば忌み子が王太子となっていても、実際に王位に就くのは第二王子であろう。

「だが、実際にはどうだ? 忌み子と呼ばれたオレはしぶとく生きている。オレは〝忌み子〟だったがために母に好かれていなかった……いや、嫌われている。オレが生まれたせいでからな。だが、あいつの母親……第二妃と王は完全なる政略結婚で、仲は決してよくはない。そのせいかあいつは人の顔色を見るのが上手く、打算的になった」
「え? 上手くはないよね? 私達の地雷踏みまくってるよ?」
「フッ。そうだな。オレもだが、セナのようなタイプには会ったことがないから、今までのことが通じないんだろ」
「えぇ……」

 そうかな? 私的には打算的とは別に、腹に一物どころか二物も三物もありそうな感じがするよ?

「話を聞いている限りでは仲よさそうだよね?」
「いや、仲よくはない……が、悪くもないってところだな。話すこと自体は少ないものの、なぜかあいつはオレに臆することがない。昔からな」
「ふーん」

 強メンタルなのはちょっと納得。でもイマイチ何がしたいのかわからないんだよね。そこがなんかモヤっとする原因だと思うんだけどさ。こちらに害をなす嫌なモヤモヤとはまたちょっと違うの。

「アデトア殿下、これからのことを考えて一つ質問をよろしいですか?」
「ん?」
「アデトア殿下は王位に就くおつもりですよね?」
「……それは……悩んでいる。……前は王となることが存在を認めてもらえる唯一の手段だと思っていた。でもセナと会い、火山での一件、グレンの里……今までの概念は木っ端微塵だ。あんなに固執していたのに、今はそれほど惹かれていない」
「え!?!? マジで言ってる??」

 え、どうしよ……それだと計画の根底から覆るぞ……アーロンさんやフェムトクトさんまで巻き込んだのに……! お金うんぬんより大事だわ!

「は? そんなに驚くことか?」
「驚くでしょ!! 作戦が……!」
「ちょ、ちょっと待て。今聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ。作戦ってなんだ? お前は何を考えている?」
「どうしよう……ジルぅぅ」
「そうですね……まずはニキーダ様とジャレッド様に連絡を……」
「おい!! オレの話を聞け! 何を企んでるんだ!」
「だぁ゛ー! 落ち着けって!」
『ちょっと! 落ち着きなさい!』

 狼狽する私にクラオルからパンチが、叫ぶように咎めていたアデトア君にガルドさんからのデコピンが繰り出されたのはほぼ同時だった。


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