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国王の褒美

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 当然、ハナンの起こした出来事は大騒ぎになってしまった。
 しかし、それに乗じて、クレセンド家の悪事を暴露する人々が増え、誰もオズベル家の悪口を言うことはなかった。
 それどころか、悪を倒した正義の大魔女として、有名になってしまったのである。
 
 自室にて、ハナンは頭を抱えていた。
 これでは……。スミリーたちの婚約に水を差してしまう。

 いっそ全ての手柄をレイダーのものにしようかと思ったが、レイダーが頑なに固辞した。

 そして今日、ハナンは王室に呼び出されている。

「ハナン・オズベル。そなたは本当に素晴らしい」

 てっきり、騒ぎを起こしたことを怒られるのかと思えば、送られたのは賞賛の言葉。

「ありがとうございます……?」

 予想外だったせいで、疑問形になってしまった。

「クレセンド家には手を焼いておったのだ。いつ何をしでかすかわからない連中だったのでな……」

 国王は満足そうに頷いている。
 目立ちたくないと思っていたのに……。国王に認められてしまったら、もうおしまいだ。
 
 これから忙しくなると思うと、非常に憂鬱だった。

「と、いうわけで、褒美を与えよう。何でも良いぞ。土地だろうと財宝だろうと。好きなものをくれてやる」
「いえ……。私は弟たちの幸せさえあれば、それで十分ですから……」
「なんと……」

 本心だった。
 元から、弟のために始めた復讐である。
 ……少し、やりすぎてしまったが。

「ではそうだな……。ハナン。君の弟が式をする時は、是非この王宮を使ってくれ」
「え……。そ、そんな。恐れ多い」
「何を言う。これから君は、国の看板を背負うことになるのだから。その弟の結婚は、国民の祝福すべきイベントになるのが当然だ」

 ハナンは、すでに二人の式をどこでやるかということも、計画していた。
 綺麗な城を森の中に建て、自然に囲まれたパーティを……。

 ……しかし、さすがに国王のご厚意を無駄にはできない。

「……ありがとうございます」

 ただ、感謝を述べるのみだった。

「しかし結局それでは、ハナンへの直接の褒美にはならぬな……。やはり、何か形になるものを与えたいのだが」
「でしたら……。クレセンド家の跡地に、公園を作ってはもらえませんか? 王都には公園がありません。子供たちが健康に身体を動かす場が必要だと思うのです」
「……また、他人のための褒美だな」
「私は満ち足りています。毎日静かに、魔法の研究をして、家族の幸せな顔を見ることができれば、それでいいのです……」

 国王はその後も、何とか褒美を与えようと粘ったが、出てくるのは国や国民に対する援助を求める内容ばかりだった。
 そしてとうとう、直接の褒美に関しては保留という形で、話し合いは終わった。
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