朝、私の手は誰かに触れている

三十二歳。独身。在宅ライター。特に不満のない生活だと思っていた。
背中に、顔が生えていると気づくまでは。
医者には見えない。写真にも写らない。でも毎朝、誰かに触れた感触だけが残る。土の感触。誰かの髪の毛。そして——引っ張った感触。
近所で行方不明者が出始める。消えていくのは全員、かつて自分が切り捨てた人間たちだった。
私は何もしていない。ただ眠っていただけだ。
でも背中の「それ」は、私が忘れようとしていたものを、全部覚えている。
——本当に、私は何もしていないのか?
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