黒衣の姫は、奪えない。~初めて恋をした相手は、家族を魔族に奪われた青年だった~

「安心して。あなたの魂は、すぐには奪わないわ」
 
嵐の翌朝、黒砂の浜に倒れていた少女はそう言って——
漁師の青年・カイルの家に居座った。
 
名前はリリス。魔族の第三王女。
魂を糧とし、感情を持てば力を失う種族。
 
「魔力が戻ったら、あなたの魂をもらうわ」
「楽しみにしてる」
 
怖がらない。逃げない。
どんな挑発にも、静かに的確に返してくる。
 
魔族の姫が初めて出会った——攻略できない人間。
 
温かい食事に戸惑い、
名前を呼ばれるたびに心臓がうるさくなって、
気づけば奪えなくなっていた。
 
でも彼女は知らなかった。
 
魂を奪えるのは、愛していない相手だけだということを。
そして目の前の青年がかつて、
魔族に家族を奪われていたということを。
 
黒衣が白に染まるとき、
彼女が選ぶのは魂を奪うことか。
それとも——
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