春夏秋冬、花咲く君と僕

えつこ

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第二章:夏

23 *

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「俺、初めて、だった……」

 顔から首までをかぁっと赤くした椿は、自分からけしかけたことだったが狼狽えていた。それを見た秀悟は、ごくりと唾を飲む。目の前の獲物を食べてしまいたいという本能は、αそのものだった。秀悟は胸に当てられていた椿の手を掴むと、ぐっと引き寄せた。

「もっとしていい?」

 秀悟の言葉に、椿の瞳は揺れる。そして、一瞬の逡巡の後、小さく頷いた。

「おいで」

 椿の手を引いた秀悟は、あぐらをかいた大腿部に椿を跨らせた。二人の距離はぐっと近くなり、椿が秀悟を見下ろす体勢になる。

「七村さん……」

 戸惑いと躊躇いが混じる椿を安心させるように、秀悟は優しく微笑んだ。
 秀悟は自分が何をしているか、何をしようとしているか理解していたが、身体が勝手に動く状況に混乱していた。ただ、椿のフェロモンの匂いが良い香りだということは認識していた。

「大丈夫、僕に任せて」

 そう言うと、秀悟は椿にキスをした。ちゅ、ちゅ、と短いキスを何度も繰り返すと、椿は呼吸を我慢して、きゅっと唇を閉ざした。

「椿くん、息して」
「だって、わからないから……」

 涙目になる椿に、秀悟は自然と本音が漏れた。

「可愛い」
「かわいく、っん……」

 椿の言葉を遮るように、再びキスをする。思考が熱くなる感覚に、秀悟は冷静であれと自らに言い聞かせるが、本能は正直だ。

「口開けて、舌を出してみて」

 椿は戸惑った後に、素直に従う。口を開け、おずおずと舌を出し、これでいいかと秀悟に視線で問う。秀悟は頷いてから、ちらりと見える赤い舌を舐めて、深く口付けた。

「んんっ、……んぅ……」

 口内に秀悟の舌が侵入してきたため、椿は大きく目を見開き、身体を跳ねさせた。
 秀悟の舌は縦横無尽に動き周り、上顎や内頬を舐めて、舌を絡め取る。ドラマや映画で見たことがある大人のキスに、驚いていた椿だが、徐々に酔いしれていく。呼吸を忘れ、秀悟のキスに懸命に答えた。

「椿くん、息しないと」
「っ、うん」
「僕の舌に、舌を絡めてみて」
「わかった」

 椿は素直に頷き、口を開けた。無抵抗な椿の行動に、秀悟の頬が緩む。
 なんて可愛くて、可哀想なΩなのだろう。もっと深く繋がって、全てを手に入れて、乱れさせたい。αの本能的な思考が秀悟の正常な思考を塗り潰していく。
 秀悟は椿に深く口付ける。椿の腰と後頭部を支え、逃げないように身体を引きつけた。

「っ……、んぅ……」

 椿は小さく鳴き、たどたどしく舌を動かして、一生懸命に秀悟の舌に自らの舌を絡める。二人の唾液が絡み、くちゅくちゅと音がした。
 秀悟は後頭部から頸部へと手を移動させ、ネックガード上からうなじを撫で、周囲の肌に触れる。

「んぁっ!……んんっ……」

 椿は繊細な部分に触れられて、身体を震わせる。普段誰にも触れられることのないうなじに、ネックガード越しとはいえ撫でられ、背筋がゾクゾクとした。
 二人の舌は絡み合って、唇が触れ合い、どちらのものかわからない唾液を嚥下し合う。唇が離れた時には、二人の間を唾液の糸が繋いで、ぷつりと切れた。
 ようやくキスから解放された椿は、肩で大きく呼吸をする。表情はすっかり蕩けてしまい、頬の赤みは増している。

「椿くん」

 秀悟は椿の頸から顎に手を移動させ、濡れた唇を親指で拭った。そして、自らの唇は手の甲で拭う。
 キスを止め、思考が冷静になってきた修吾は、椿を解放しようとしたが、今度は椿の方から縋ってくる。

「七村さん、身体が熱くて、変なんだ」

 ぶわりと椿のフェロモンの匂いが強くなった。秀悟はたまらず手で鼻を覆うが、全く意味を成さない。Ωの匂いが、αの本能を揺り動かす。再び思考は熱く流されていく。

「助けて、七村さん」

 椿の性器はゆるく勃ちあがり、腹の中がきゅううっと切なくなる。まるで発情期のような状態になってしまい、自制が効かず、欲求を満たしたくて仕方ない。



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