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liberty
魔女っ子メイリーの魔法レッスン
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「こほん、ではまず体の中に巡る魔力を感じ取ることから始めましょう」
魔力保持量が多ければ、体内の魔力を感じ取ることは簡単なのだが、魔力保持量が少なければ、血の流れを感じることがないように、ゆっくりと流れている魔力もまた感じ取る事は難しい。
魔力の流れを掴むことができれば、その魔力をどう放出するかというだけの問題なので、無意識に魔力を使用出来ていても、どうやって放出しているのか理解することはとても重要だった。
「メイリー先生!」
「はい、キリアン君」
「魔力はどこを流れてますか?」
「魔力は指の先から髪の毛の先までそして体内から出て来る涙に至るまで全てに流れています。まず、心臓に手を当ててみてください」
キリアンとダンは黙って心臓に手を置いて、ついでに目を閉じている。
なんて素直な生徒なんだろうと感心する。
「心臓は血液を全身に送るためのポンプです。血液もまた、全身に張り巡らされた管を流れて全身を巡っているのです。まずは心臓のドクドクから血が全身に巡る様子を想像してみてください。」
「ポンプ…」
キリアンには少し難しいかもしれない。体内の構造を学習するのはまだまだ先なのだから、それも仕方がない。
平民の学校だともしかして教えないかもしれないことは考えないでおこう。だって詳しく聞かれても答える事はできない!
「想像は出来ましたか?」
「「はい」」
「では次はお腹に手を当ててみてください。魔力はお腹から鎖骨くらいまでに大きな渦があると思うと分かりやすいです。その大きな渦から手足や頭にも魔力が流れ込んで、指先まで行くとまた体の中心の大きな渦へ戻って行きます。ポンプはなくても巡っている様子を想像してみるのです」
「あ、何と言えばいいか…ぬるくて緩い流れを感じます」
ダンはすぐに感じとれたようで、何故か目を瞑ったまま答えている。
生活魔法は使えるということなので、魔力を感じられるようになれば、魔力コントロールの難しい魔法も使えるようになる可能性は高い。
「ダン君その調子です。ではその魔力が右腕に流れるところを想像してください。体の中心からの流れを感じられたら、次は足に流れていくところを想像して同じように流れを感じられたら教えてください」
「はい」
「キリアン君はどうですか?」
「僕は全くわからないよ…」
「大丈夫よ。みんな最初は分からないの。1度、目を開けてみましょうか」
楽しそうだからとダンと一緒にレッスンをすると言ったキリアンだが、平民の魔力でその流れを感じるのは容易ではない。
ダンとは保持量が違うのだから仕方がないのだが、落ち込む姿は見たくないので、出来れば感じられるといいなと思う。
「少しあそこで横になりましょう」
床の上にキリアンを寝かせると、一度深呼吸をさせる。
「キリアンくんの体はお風呂です。見てて」
キリアンの体の上でぐるぐると水をかき混ぜるように腕を動かした。
「こうして混ぜるとお水はぐるぐると回り始める。そうして…ジャン!この葉っぱを上に置くとどうなるかしら?」
今度は葉っぱをキリアンの上に浮かせた。
「水の上を回る?」
「そうです。キリアン君凄いですね。この葉っぱも水に浮かびながらクルクルとこうやって回っていきます。でも今はもうかき混ぜていないから段々とゆっくり回っていきます。きっとキリアン君の魔力もゆっくりゆっくり今巡っているのです。さぁもう一度目を閉じて葉っぱが動いていくのを感じてみて」
キリアンが目を閉じたのを確認してから、ダンの座るテーブルに戻る。
近づいてもピクリともしないで集中している。
その隙をついて、透視を始めることにした。
本当はすぐに覗きたかったが、今は魔力も少なく対応が出来ない。だけど、早くに確認するべきだと内心すごくもどかしかった。
ウラリーはこちらをたまに確認しながら料理をしていた。
視野を保ったまま口の中で呪文を唱える。
見るのはそう、王城だ。
まず被害を確認する為に外観を見るが、特に荒れた様子はない。
ただ、王城前には人だかりが出来ており、貴族も平民も入り混じっているように見えた。
「何が起きたか説明しろ!」
「俗国なんてとんでもない!」
「陛下を出せ!」
そんな怒号を聞きながら王城内を見て回る。
王城内は打って変わってとても静かだった。
喪に服しているのではないかというほど暗い顔をしている。
この先の未来を悲観しているのだろうか。
「クラーク公爵夫人が女王となるらしいぞ」
「じゃあクラーク公爵が王配となるのか。王族の血筋も引いている公爵家なのになぁ…でも国を乗っ取る事もできたのに、情けをかけられたとなれば従属関係でもありがたいことだよ」
「あぁ確かに。切り捨てられたら、周辺国は直ぐにでも攻め込んできただろう。でもこれからどうなるのか…」
ステラ姉様が女王?
官僚らしい者たちがあちこちで暇そうにしている。
誰しもが俯き、本当に葬式の前なのではないかと不安になる。
だが、すぐに気が付いた。
彼らは待っているのだ。
王家とクラーク公爵家との話し合いの結果を。
そうだ。国王が代わり、俗国となれば法も変わるかもしれない。税も変わってくる。話し合いが終わるまで彼らは待つしかないのだ。
そうと分かれば行くのは一つのみ……え?話し合いってどこでやるの?
議事堂は領主たちを集める所だし…やっぱりいない。
謁見の間か!……もぬけの殻か。
ならばあれしかない。応接の間。2、3回お茶を飲んだことがあるが適度な狭さで細かく話し合うにももってこいの部屋だ!なのになんでいないの!
最初からそうすればよかったのだが、ステラを透視することにする。
めんどくさがった為に余計に時間をかけてしまった。
魔力保持量が多ければ、体内の魔力を感じ取ることは簡単なのだが、魔力保持量が少なければ、血の流れを感じることがないように、ゆっくりと流れている魔力もまた感じ取る事は難しい。
魔力の流れを掴むことができれば、その魔力をどう放出するかというだけの問題なので、無意識に魔力を使用出来ていても、どうやって放出しているのか理解することはとても重要だった。
「メイリー先生!」
「はい、キリアン君」
「魔力はどこを流れてますか?」
「魔力は指の先から髪の毛の先までそして体内から出て来る涙に至るまで全てに流れています。まず、心臓に手を当ててみてください」
キリアンとダンは黙って心臓に手を置いて、ついでに目を閉じている。
なんて素直な生徒なんだろうと感心する。
「心臓は血液を全身に送るためのポンプです。血液もまた、全身に張り巡らされた管を流れて全身を巡っているのです。まずは心臓のドクドクから血が全身に巡る様子を想像してみてください。」
「ポンプ…」
キリアンには少し難しいかもしれない。体内の構造を学習するのはまだまだ先なのだから、それも仕方がない。
平民の学校だともしかして教えないかもしれないことは考えないでおこう。だって詳しく聞かれても答える事はできない!
「想像は出来ましたか?」
「「はい」」
「では次はお腹に手を当ててみてください。魔力はお腹から鎖骨くらいまでに大きな渦があると思うと分かりやすいです。その大きな渦から手足や頭にも魔力が流れ込んで、指先まで行くとまた体の中心の大きな渦へ戻って行きます。ポンプはなくても巡っている様子を想像してみるのです」
「あ、何と言えばいいか…ぬるくて緩い流れを感じます」
ダンはすぐに感じとれたようで、何故か目を瞑ったまま答えている。
生活魔法は使えるということなので、魔力を感じられるようになれば、魔力コントロールの難しい魔法も使えるようになる可能性は高い。
「ダン君その調子です。ではその魔力が右腕に流れるところを想像してください。体の中心からの流れを感じられたら、次は足に流れていくところを想像して同じように流れを感じられたら教えてください」
「はい」
「キリアン君はどうですか?」
「僕は全くわからないよ…」
「大丈夫よ。みんな最初は分からないの。1度、目を開けてみましょうか」
楽しそうだからとダンと一緒にレッスンをすると言ったキリアンだが、平民の魔力でその流れを感じるのは容易ではない。
ダンとは保持量が違うのだから仕方がないのだが、落ち込む姿は見たくないので、出来れば感じられるといいなと思う。
「少しあそこで横になりましょう」
床の上にキリアンを寝かせると、一度深呼吸をさせる。
「キリアンくんの体はお風呂です。見てて」
キリアンの体の上でぐるぐると水をかき混ぜるように腕を動かした。
「こうして混ぜるとお水はぐるぐると回り始める。そうして…ジャン!この葉っぱを上に置くとどうなるかしら?」
今度は葉っぱをキリアンの上に浮かせた。
「水の上を回る?」
「そうです。キリアン君凄いですね。この葉っぱも水に浮かびながらクルクルとこうやって回っていきます。でも今はもうかき混ぜていないから段々とゆっくり回っていきます。きっとキリアン君の魔力もゆっくりゆっくり今巡っているのです。さぁもう一度目を閉じて葉っぱが動いていくのを感じてみて」
キリアンが目を閉じたのを確認してから、ダンの座るテーブルに戻る。
近づいてもピクリともしないで集中している。
その隙をついて、透視を始めることにした。
本当はすぐに覗きたかったが、今は魔力も少なく対応が出来ない。だけど、早くに確認するべきだと内心すごくもどかしかった。
ウラリーはこちらをたまに確認しながら料理をしていた。
視野を保ったまま口の中で呪文を唱える。
見るのはそう、王城だ。
まず被害を確認する為に外観を見るが、特に荒れた様子はない。
ただ、王城前には人だかりが出来ており、貴族も平民も入り混じっているように見えた。
「何が起きたか説明しろ!」
「俗国なんてとんでもない!」
「陛下を出せ!」
そんな怒号を聞きながら王城内を見て回る。
王城内は打って変わってとても静かだった。
喪に服しているのではないかというほど暗い顔をしている。
この先の未来を悲観しているのだろうか。
「クラーク公爵夫人が女王となるらしいぞ」
「じゃあクラーク公爵が王配となるのか。王族の血筋も引いている公爵家なのになぁ…でも国を乗っ取る事もできたのに、情けをかけられたとなれば従属関係でもありがたいことだよ」
「あぁ確かに。切り捨てられたら、周辺国は直ぐにでも攻め込んできただろう。でもこれからどうなるのか…」
ステラ姉様が女王?
官僚らしい者たちがあちこちで暇そうにしている。
誰しもが俯き、本当に葬式の前なのではないかと不安になる。
だが、すぐに気が付いた。
彼らは待っているのだ。
王家とクラーク公爵家との話し合いの結果を。
そうだ。国王が代わり、俗国となれば法も変わるかもしれない。税も変わってくる。話し合いが終わるまで彼らは待つしかないのだ。
そうと分かれば行くのは一つのみ……え?話し合いってどこでやるの?
議事堂は領主たちを集める所だし…やっぱりいない。
謁見の間か!……もぬけの殻か。
ならばあれしかない。応接の間。2、3回お茶を飲んだことがあるが適度な狭さで細かく話し合うにももってこいの部屋だ!なのになんでいないの!
最初からそうすればよかったのだが、ステラを透視することにする。
めんどくさがった為に余計に時間をかけてしまった。
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