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liberty
フリードリヒ殿下の本意とは
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視界に映るのは長テーブル2つを挟み、ステラとデイヴィッドら8人が座り、その対面にフロージアや宰相を含む高位官僚が座っている光景だった。
様々な書類が行き来し、テーブルの周りを何人も忙しなく動いていた。
余裕のある笑みを浮かべるステラたちクラーク家側とは違い、フロージアや宰相は何度も額の汗を拭いながら険しい顔をしていた。
「えぇ。もちろんフリードは知っていましたよ。クロエに逃げられず婿入りが出来たら、もっと穏便に事は運んだのだけど」
「フリードリヒは王国を捨てたのか…」
フリードが国を捨てた?ステラ姉様と手を組んで独立させたなんて許される事なのだろうか。
ステラ姉様も私を騙していたと?
でも何故?
もしそうだとしたら、フリードはもう王室には帰れないのではないか。
廃嫡される?それとも処刑?
女の為ではなくクラーク領のためだったとは驚いた。
何か言えない理由があったのだろうか。
「ふふっ何を頭の悪いことを。ねぇデイヴィッド」
「笑うのは失礼だよ、ステラ。フリードリヒ殿下の事はきちんと説明してあげるべきだ」
こんな所でもイチャイチャとし始めて、流石にドン引く。
陛下となったフロージアや偉い人の前でよくもまぁ手を絡ませたり頬を寄せたり出来るものだ。
デイヴィッド公爵と会った時からこんな感じだけど、フロージアの顔を見て欲しい。
元カノ(未遂)が目の前でイチャついてるからどこを見ていいのか分からなくてひたすら水を飲んでることに気付いて!
気不味さを隠し切れずに顔に出ちゃってるから早く気付いてあげて!
「まぁでも、そうね。フロージア、フリードはどちらかといえば、穏便に済ませようとイシュトハンへ婿に入る算段を取り付けたのよ」
「どういうことだ」
「彼は私達が独立の準備をしていることに気付いたのよ。その時はまだ、陛下を退かせて私がこの国を支配しようかと考えていた頃だった。彼は自分が人質としてイシュトハンに婿に入り、独立を王国と条件を交渉すると言ってきたわ」
人質…なるほど。だからあんなに急にしかも強引に結婚をしたかったのか。
言ってくれれば…いや言われても拒否していたかもしれないけど。
「そうか…フリードが」
「まぁでも、どうしてもクロエと結婚したいから、それまで待って欲しかったというのが透けて見えてたけど…」
「ステラ、それは余計な一言と言うものだよ」
「デイヴィッド…でも、結果的にクロエに逃げられたのだからこうなったのよ?」
ボッと顔に火がついたかのように赤くなった。
え?どうしても結婚したかった?
「メイリーさん?…メイリーさんちょっといい?」
テーブルについていた手に重ねられるように手を置かれて、ハッと顔を上げると、ウラリーが心配そうに声をかけてきた。
「え?」
「起きたばかりなのにレッスンなんて無理してない?ボーっとしてたわ」
イチャイチャとするステラとデイヴィッドがウラリーの顔と被る。
透視はここまでのようだ。
「大丈夫。少し王城の様子を見ていたの」
「水晶が無くても様子が分かるの?」
首を傾けて疑問に思っているような仕草をするウラリーは賢い。
本当にもう少しだけでも色々と忘れてくれてもいいと思う。
「そう。本当は呪文を唱えるだけで見れるの」
「水晶って凄いんだと思ってたけど凄いのはメイリーさんだったのね」
少し怖がるかなと思っていたが、ウラリーは気にした様子もなく笑っていた。
透視に後ろめたさがないわけじゃない。他人には見せたくないものを勝手に見るのは歓迎されることではない。それはもう十分理解している。
ウラリーには嫌われたくない。小さい頃から慣れていて、無条件に許してくれる家族とは違う。
「そう、少し座った方がいいわ。キリアンは寝ちゃってるし、少し話さない?」
お腹の上に手を置いたままスゥスゥと寝息をたてているキリアンに布をかけてあげると、ダンの様子を見たが中々に集中しているようなので声はかけず、ウラリーと庭に出て小さな椅子に並んで座った。
「聞いてはいけないと思っていたんだけど、この間の依頼の殿下ってフリードリヒ殿下ですよね?このイシュトハン領に婿に入ると噂の…」
ウラリーは街で売られている厚紙に描かれた王子2人のポケットに入るサイズの姿絵を両手に持って話し始めた。
そんな小さな姿絵があるとは驚いた。そのサイズならイケメン貴族図鑑だって作ることが出来るし、出来れば購入先を教えてもらいたいものだ。
「そうです…」
「今更なんだけど、どうしてあんなことしたの?」
「うっ」
ステラの言葉を飲み込みきれていない頭が、言葉を生み出すことを拒む。
混乱して何が真実か分からず、益々混乱していった。
様々な書類が行き来し、テーブルの周りを何人も忙しなく動いていた。
余裕のある笑みを浮かべるステラたちクラーク家側とは違い、フロージアや宰相は何度も額の汗を拭いながら険しい顔をしていた。
「えぇ。もちろんフリードは知っていましたよ。クロエに逃げられず婿入りが出来たら、もっと穏便に事は運んだのだけど」
「フリードリヒは王国を捨てたのか…」
フリードが国を捨てた?ステラ姉様と手を組んで独立させたなんて許される事なのだろうか。
ステラ姉様も私を騙していたと?
でも何故?
もしそうだとしたら、フリードはもう王室には帰れないのではないか。
廃嫡される?それとも処刑?
女の為ではなくクラーク領のためだったとは驚いた。
何か言えない理由があったのだろうか。
「ふふっ何を頭の悪いことを。ねぇデイヴィッド」
「笑うのは失礼だよ、ステラ。フリードリヒ殿下の事はきちんと説明してあげるべきだ」
こんな所でもイチャイチャとし始めて、流石にドン引く。
陛下となったフロージアや偉い人の前でよくもまぁ手を絡ませたり頬を寄せたり出来るものだ。
デイヴィッド公爵と会った時からこんな感じだけど、フロージアの顔を見て欲しい。
元カノ(未遂)が目の前でイチャついてるからどこを見ていいのか分からなくてひたすら水を飲んでることに気付いて!
気不味さを隠し切れずに顔に出ちゃってるから早く気付いてあげて!
「まぁでも、そうね。フロージア、フリードはどちらかといえば、穏便に済ませようとイシュトハンへ婿に入る算段を取り付けたのよ」
「どういうことだ」
「彼は私達が独立の準備をしていることに気付いたのよ。その時はまだ、陛下を退かせて私がこの国を支配しようかと考えていた頃だった。彼は自分が人質としてイシュトハンに婿に入り、独立を王国と条件を交渉すると言ってきたわ」
人質…なるほど。だからあんなに急にしかも強引に結婚をしたかったのか。
言ってくれれば…いや言われても拒否していたかもしれないけど。
「そうか…フリードが」
「まぁでも、どうしてもクロエと結婚したいから、それまで待って欲しかったというのが透けて見えてたけど…」
「ステラ、それは余計な一言と言うものだよ」
「デイヴィッド…でも、結果的にクロエに逃げられたのだからこうなったのよ?」
ボッと顔に火がついたかのように赤くなった。
え?どうしても結婚したかった?
「メイリーさん?…メイリーさんちょっといい?」
テーブルについていた手に重ねられるように手を置かれて、ハッと顔を上げると、ウラリーが心配そうに声をかけてきた。
「え?」
「起きたばかりなのにレッスンなんて無理してない?ボーっとしてたわ」
イチャイチャとするステラとデイヴィッドがウラリーの顔と被る。
透視はここまでのようだ。
「大丈夫。少し王城の様子を見ていたの」
「水晶が無くても様子が分かるの?」
首を傾けて疑問に思っているような仕草をするウラリーは賢い。
本当にもう少しだけでも色々と忘れてくれてもいいと思う。
「そう。本当は呪文を唱えるだけで見れるの」
「水晶って凄いんだと思ってたけど凄いのはメイリーさんだったのね」
少し怖がるかなと思っていたが、ウラリーは気にした様子もなく笑っていた。
透視に後ろめたさがないわけじゃない。他人には見せたくないものを勝手に見るのは歓迎されることではない。それはもう十分理解している。
ウラリーには嫌われたくない。小さい頃から慣れていて、無条件に許してくれる家族とは違う。
「そう、少し座った方がいいわ。キリアンは寝ちゃってるし、少し話さない?」
お腹の上に手を置いたままスゥスゥと寝息をたてているキリアンに布をかけてあげると、ダンの様子を見たが中々に集中しているようなので声はかけず、ウラリーと庭に出て小さな椅子に並んで座った。
「聞いてはいけないと思っていたんだけど、この間の依頼の殿下ってフリードリヒ殿下ですよね?このイシュトハン領に婿に入ると噂の…」
ウラリーは街で売られている厚紙に描かれた王子2人のポケットに入るサイズの姿絵を両手に持って話し始めた。
そんな小さな姿絵があるとは驚いた。そのサイズならイケメン貴族図鑑だって作ることが出来るし、出来れば購入先を教えてもらいたいものだ。
「そうです…」
「今更なんだけど、どうしてあんなことしたの?」
「うっ」
ステラの言葉を飲み込みきれていない頭が、言葉を生み出すことを拒む。
混乱して何が真実か分からず、益々混乱していった。
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