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liberty
たまには愚痴を言わせてくれ
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黙ってしまったクロエに、ウラリーは優しく微笑んだ。
「結婚、したくなかったの?」
「そう…なの…」
「それはどうして?」
「ある日突然婚約しろと命令を受けて…でも彼だけは嫌だった」
「何故?」
「彼は私を婚約者候補から外したから…」
借りてきた猫のように小さくなって、呟くように弱い声で返事をするクロエの背中を撫でると、ポロポロと泣き出してしまう。
「私には殿下はメイリーさんが好きなように見えたけど」
「でも、私と話しながらウラリーの胸を揉んでたわ…普通そんな事する?」
「理想的にはして欲しくは…ないわよね。でも、揉まれてる私には私の胸を揉んでメイリーさんの胸を想像してたんじゃないかと感じたんだけど…」
「なっ!?」
ウラリーはクロエの胸に視線を向けたので、それを感じたクロエはサッと腕を組んで胸を隠した。
「私のちっぱいを想像してたならフリードは絶対婚約したことを後悔していたに違いないわ。だからあんなにモミモミといつまでも揉んでいたのよ!ウラリーはいいわね。コルセットをしなくてもウエストは細いし、それなのに胸は大きい」
「コホンッ!愛にウエストと胸は関係ありません。大きな胸がいい人もいれば小さい胸がいい人もいる。好きな人の胸が大きかろうと小さかろうと……気にしない人…だと…いいわね」
ウラリーはクロエを慰めるには、男性の黒い心を知りすぎていた。
サッとクロエから目を逸らせてしまった。
体を商品にしていたのだ。出会う客の9割5分は、女を見た目で判断する。そして、出会う客なのだから大きな胸が好きな男性が多いのも当たり前だった。
方向性を間違えてしまったなと気不味さに目を泳がせていた。
「ウラリー…私は貴族だもの。愛がない結婚でも上手くやっていくわ。幸い私が当主なのだから周りは味方ばかり。でも、息を吐くように愛してると言うような嘘つきな男は嫌なの」
「そうよね。でも、それが嘘だとどうして分かったの?」
自分とは違う世界で生きているクロエの生活は想像も出来なかったが、それでもメイリーとして目の前にいる彼女はとても可愛くて幸せになってくれたらなと思う。
仕事の依頼人であったはずの彼女に惹かれている自分に驚くけど、自分の気持ちに素直なこの子に悪い印象なんて持てる訳がなかった。
「今は…嘘かどうか分からなくなってる」
「なら、確かめてみるしかないじゃない!もし本当に愛してくれてたら、メイリーさんは今とっても勿体ないことをしているわ!」
「うっ…でも今はフリードには会いたくないの!」
これ以上のお節介はしない方がいい。
殿下がどんな人なのか知っているわけでもないし、彼と結ばれることが幸せだとは限らない。
「そっか。それならそれでいいのよ」
タイミングを見計らったようにダンが声をかけてきたので、2人は部屋に戻ることになった。
魔力の流れを感じられるようになったダンは、魔力のコントロールが出来る様になり、スプーンを相手に拘束魔法をかける練習を始めた。
昨夜置いていった魔法書を読んでいたらしく、細い拘束魔法を意外にも簡単に繰り出せるようになった。
それでも成功するのは半分ほどだったが、スプーンを壊すことなく放つダンの拘束魔法は、初回では大変優秀と言えた。
寝ていたキリアンも、ご飯だと聞けばすぐに起き出して、いつの間にか寝ていたことを恥ずかしそうにしていた。
クロエはご飯を見た途端、胃が拒否反応を起こして食べる事はできなかったが、その事でミルハナンに置いてきたジュースとワインのことを思い出し、転送して受け取った。
もちろんそこには代わりにサリーにメッセージカードを残して。
「おいしーーー!」
ジュースを飲んだキリアンは想像していた通りの笑顔を見せてくれた。
そして、もう一つ思い出していた。
「あの男、魔力補給の為に食べすぎた後のお腹を見て、大勢の騎士たちの前で自分の子供を妊娠してるって言ったのよ!?やっぱり2度と会いたくない!」
そこからはひたすらにフリードの悪口を言った。
ダンはその悪口が第二王子のことだと気付くと顔を青くしていたが、概ねうんうんと聞いていてくれた。
ずっと誰かに聞いて欲しかった。
フリードの味方をしないで自分の話を聞いてくれる友人に。
周りを固められて我慢するしかなかった理不尽さをぶち撒けた私は、そのまま小さなソファの上で眠ってしまったのだ。
「結婚、したくなかったの?」
「そう…なの…」
「それはどうして?」
「ある日突然婚約しろと命令を受けて…でも彼だけは嫌だった」
「何故?」
「彼は私を婚約者候補から外したから…」
借りてきた猫のように小さくなって、呟くように弱い声で返事をするクロエの背中を撫でると、ポロポロと泣き出してしまう。
「私には殿下はメイリーさんが好きなように見えたけど」
「でも、私と話しながらウラリーの胸を揉んでたわ…普通そんな事する?」
「理想的にはして欲しくは…ないわよね。でも、揉まれてる私には私の胸を揉んでメイリーさんの胸を想像してたんじゃないかと感じたんだけど…」
「なっ!?」
ウラリーはクロエの胸に視線を向けたので、それを感じたクロエはサッと腕を組んで胸を隠した。
「私のちっぱいを想像してたならフリードは絶対婚約したことを後悔していたに違いないわ。だからあんなにモミモミといつまでも揉んでいたのよ!ウラリーはいいわね。コルセットをしなくてもウエストは細いし、それなのに胸は大きい」
「コホンッ!愛にウエストと胸は関係ありません。大きな胸がいい人もいれば小さい胸がいい人もいる。好きな人の胸が大きかろうと小さかろうと……気にしない人…だと…いいわね」
ウラリーはクロエを慰めるには、男性の黒い心を知りすぎていた。
サッとクロエから目を逸らせてしまった。
体を商品にしていたのだ。出会う客の9割5分は、女を見た目で判断する。そして、出会う客なのだから大きな胸が好きな男性が多いのも当たり前だった。
方向性を間違えてしまったなと気不味さに目を泳がせていた。
「ウラリー…私は貴族だもの。愛がない結婚でも上手くやっていくわ。幸い私が当主なのだから周りは味方ばかり。でも、息を吐くように愛してると言うような嘘つきな男は嫌なの」
「そうよね。でも、それが嘘だとどうして分かったの?」
自分とは違う世界で生きているクロエの生活は想像も出来なかったが、それでもメイリーとして目の前にいる彼女はとても可愛くて幸せになってくれたらなと思う。
仕事の依頼人であったはずの彼女に惹かれている自分に驚くけど、自分の気持ちに素直なこの子に悪い印象なんて持てる訳がなかった。
「今は…嘘かどうか分からなくなってる」
「なら、確かめてみるしかないじゃない!もし本当に愛してくれてたら、メイリーさんは今とっても勿体ないことをしているわ!」
「うっ…でも今はフリードには会いたくないの!」
これ以上のお節介はしない方がいい。
殿下がどんな人なのか知っているわけでもないし、彼と結ばれることが幸せだとは限らない。
「そっか。それならそれでいいのよ」
タイミングを見計らったようにダンが声をかけてきたので、2人は部屋に戻ることになった。
魔力の流れを感じられるようになったダンは、魔力のコントロールが出来る様になり、スプーンを相手に拘束魔法をかける練習を始めた。
昨夜置いていった魔法書を読んでいたらしく、細い拘束魔法を意外にも簡単に繰り出せるようになった。
それでも成功するのは半分ほどだったが、スプーンを壊すことなく放つダンの拘束魔法は、初回では大変優秀と言えた。
寝ていたキリアンも、ご飯だと聞けばすぐに起き出して、いつの間にか寝ていたことを恥ずかしそうにしていた。
クロエはご飯を見た途端、胃が拒否反応を起こして食べる事はできなかったが、その事でミルハナンに置いてきたジュースとワインのことを思い出し、転送して受け取った。
もちろんそこには代わりにサリーにメッセージカードを残して。
「おいしーーー!」
ジュースを飲んだキリアンは想像していた通りの笑顔を見せてくれた。
そして、もう一つ思い出していた。
「あの男、魔力補給の為に食べすぎた後のお腹を見て、大勢の騎士たちの前で自分の子供を妊娠してるって言ったのよ!?やっぱり2度と会いたくない!」
そこからはひたすらにフリードの悪口を言った。
ダンはその悪口が第二王子のことだと気付くと顔を青くしていたが、概ねうんうんと聞いていてくれた。
ずっと誰かに聞いて欲しかった。
フリードの味方をしないで自分の話を聞いてくれる友人に。
周りを固められて我慢するしかなかった理不尽さをぶち撒けた私は、そのまま小さなソファの上で眠ってしまったのだ。
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