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just married
眠りの森の白雪姫
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フリードは、王宮から連れてきた執事のリビルトに風呂の場所を聞き、魔法で自らお湯を張り、気を張っていたのか少しダルさを感じる身体を温めた。
お風呂から出る頃には、クロエの声が屋敷に響き渡り、報告書を読みながらも騒がしい屋敷に心地よさを感じる。
「リビルト、今日はもう下がっていいよ」
「もう寝室へ向かわれるのですか?」
クロエとジェシーの悲鳴が未だ隣の部屋から漏れ聞こえているので、確認を取ったのだろう。
「クロエはまだかかりそうだが、今日はこの報告書を読むだけだ。疲れただろう」
「左様ですか。ではお言葉に甘えさせていただきます。ですが…いいのですか?まるで拷問を受けているような叫び声ですが」
「本当に拷問を受けていたらとっくに逃げているさ。叫ぶだけなのは受け入れている証拠だよ」
フリードはパラリと報告書の紙をめくって肘掛けに頬杖をつく。
リビルトが退室した後もワーキャーと聞こえてくるじゃれ合う声を聞きながら、いつのにかフリードは目を閉じていた。
「お嬢様、大変です!」
「何よ」
隠すべきところはもっと広いだろうと思うような白いリボンを巻きつけたかのようなネグリジェの上から、ジェシーの目を盗んでガウンを着たクロエはバレたかと一瞬ピクリとした。
「落ち着いて聞いてください。先程、フリードリヒ様のお部屋をノックしたのですがお返事はなく、ゆっくりと覗いてみたんです」
「それで?」
興奮気味のジェシーを視界に入れながらクロエはガウンの腰紐を結ぶ。
「王子という生き物は、寝顔までも尊い生き物だったのです!!!」
「はあ~ん!?」
一体何を言い出すかと思えば、ジェシーがジェットバスやらミストサウナが良いらしいと魔法を使わせて、身体中の肉を胸に寄せるマッサージとやらを張り切っている間にフリードは居眠りをしてしまったと。そんな事かとため息をついた。
「王子だって居眠り位するでしょう。起こして寝室に行くように伝えなさいよ」
「無理です!あまりの輝きに視界は奪われ、心は手折られ、無事に眠りの森の王子の下まで辿り着けるとは思えませんでした」
「眠りの森の王子って…机の上ででも寝ていたっていうの?」
「いえ、それはそれは美しい姿勢のままソファに座られ、まるで彫刻のようです。美人の寝顔フェチが芽生えるくらいには危険な香りがしますので、気をつけて起こしてきてくださいませ。美しすぎるからって決して毒林檎を食べさせたりなんてしてはいけませんからね!」
眠りの森の美女を白雪姫の死体役にするんじゃない。
それになんで私が美しさに嫉妬する魔女役なんだ!
「分かったわよ。もう下がっていいわ」
結局は自分で起こして来いってことだ。
ここのところ、ジェシーは今まで習得してきた化粧やヘアメイクを披露する場のないフラストレーションから解放されたかのようにテンションが高い。
努力の証を発揮できる場が出来た後は高揚してしまうのかもしれないが、こんなに騒々しい屋敷は記憶にないほど珍しいことだ。
フリードにこれが普通だと思われたら、落ち着いてから退屈だって言われそう…
お風呂に入れられた時に見た寝室は、白と赤の薔薇の花びらが巻かれ、お互いの私室から白い絨毯が敷かれていた。
「入るわよ」
内扉からノックをしても返事はない。ガチャリとそのままドアノブを回したが、鍵が掛かっているようだった。
開ける前に寝てしまったのだから仕方がないと、外から回り込むのが手間だと感じて、クロエはすぐに転移することにした。
「爆睡してるじゃない…」
紺色の絨毯が敷かれた部屋に空色に黄色の刺繍の入ったのソファが置かれている。
イシュトハン邸ではあまり見ないルームデザインだが、重厚感はあるが落ち着く色合いだ。
濃いブラウンに金メッキが各所に施された家具もシンプルなデザインだがこだわりを感じる。
家具はイシュトハンで用意したはずだが、秘書か誰かが希望を伝えたのだろうか。
だとすれば、この部屋はフリードの好みのはずだ。
ピクリともしないフリードの座るソファの横に屈み、クロエは寝顔を眺めた。
よほど疲れていたのだろうかと思えば、このまま寝かせてあげるべきかもしれない。
そう思ったクロエは目を閉じて指を鳴らす。
ベッドに放り出されたフリードの身体を支えようかと思ったが、先にフリードが反射的にベッドに手を付いた。
「起きちゃった?」
「ん…あぁ。寝てたのか?」
「疲れてるんでしょ。そのまま寝なさい」
「クロエは?」
「私は…フリードの買ってくれたケーキを食べてから寝るわ」
「なら僕も起きるよ」
寝室から出て行こうと歩き出したクロエに、声がまだ寝ているようなフリードが手を伸ばす。
「眠そうじゃない。寝たらいいわよ」
手が伸びてきたことに気付いたクロエは、足を止めてあえて腕を掴ませ、そのままベッドの隅に腰掛ける。
フリードの動きはまだ鈍い。人が近づいたことにも気付かなかったのだから、深い眠りに入っていたのだろう。
「うん。でも今日はもっとクロエと話したい」
「また口調が子供みたいになってるわよ。まぁでも折角ベッドまで転移させたんだし、仕方ないからここで食べることにするわ」
クロエはベッドの上に這い上がると、主人の部屋に置かれたティーセットとケーキをその場に転移させた。
ベッドの上に氷でテーブルを作り、その上に空中で注いだ紅茶の入ったティーカップを乗せる。
「初夜はベッドの上で語り合うものよね」
クロエはフリードにティーカップを差し出しながらにっこりと笑った。
お風呂から出る頃には、クロエの声が屋敷に響き渡り、報告書を読みながらも騒がしい屋敷に心地よさを感じる。
「リビルト、今日はもう下がっていいよ」
「もう寝室へ向かわれるのですか?」
クロエとジェシーの悲鳴が未だ隣の部屋から漏れ聞こえているので、確認を取ったのだろう。
「クロエはまだかかりそうだが、今日はこの報告書を読むだけだ。疲れただろう」
「左様ですか。ではお言葉に甘えさせていただきます。ですが…いいのですか?まるで拷問を受けているような叫び声ですが」
「本当に拷問を受けていたらとっくに逃げているさ。叫ぶだけなのは受け入れている証拠だよ」
フリードはパラリと報告書の紙をめくって肘掛けに頬杖をつく。
リビルトが退室した後もワーキャーと聞こえてくるじゃれ合う声を聞きながら、いつのにかフリードは目を閉じていた。
「お嬢様、大変です!」
「何よ」
隠すべきところはもっと広いだろうと思うような白いリボンを巻きつけたかのようなネグリジェの上から、ジェシーの目を盗んでガウンを着たクロエはバレたかと一瞬ピクリとした。
「落ち着いて聞いてください。先程、フリードリヒ様のお部屋をノックしたのですがお返事はなく、ゆっくりと覗いてみたんです」
「それで?」
興奮気味のジェシーを視界に入れながらクロエはガウンの腰紐を結ぶ。
「王子という生き物は、寝顔までも尊い生き物だったのです!!!」
「はあ~ん!?」
一体何を言い出すかと思えば、ジェシーがジェットバスやらミストサウナが良いらしいと魔法を使わせて、身体中の肉を胸に寄せるマッサージとやらを張り切っている間にフリードは居眠りをしてしまったと。そんな事かとため息をついた。
「王子だって居眠り位するでしょう。起こして寝室に行くように伝えなさいよ」
「無理です!あまりの輝きに視界は奪われ、心は手折られ、無事に眠りの森の王子の下まで辿り着けるとは思えませんでした」
「眠りの森の王子って…机の上ででも寝ていたっていうの?」
「いえ、それはそれは美しい姿勢のままソファに座られ、まるで彫刻のようです。美人の寝顔フェチが芽生えるくらいには危険な香りがしますので、気をつけて起こしてきてくださいませ。美しすぎるからって決して毒林檎を食べさせたりなんてしてはいけませんからね!」
眠りの森の美女を白雪姫の死体役にするんじゃない。
それになんで私が美しさに嫉妬する魔女役なんだ!
「分かったわよ。もう下がっていいわ」
結局は自分で起こして来いってことだ。
ここのところ、ジェシーは今まで習得してきた化粧やヘアメイクを披露する場のないフラストレーションから解放されたかのようにテンションが高い。
努力の証を発揮できる場が出来た後は高揚してしまうのかもしれないが、こんなに騒々しい屋敷は記憶にないほど珍しいことだ。
フリードにこれが普通だと思われたら、落ち着いてから退屈だって言われそう…
お風呂に入れられた時に見た寝室は、白と赤の薔薇の花びらが巻かれ、お互いの私室から白い絨毯が敷かれていた。
「入るわよ」
内扉からノックをしても返事はない。ガチャリとそのままドアノブを回したが、鍵が掛かっているようだった。
開ける前に寝てしまったのだから仕方がないと、外から回り込むのが手間だと感じて、クロエはすぐに転移することにした。
「爆睡してるじゃない…」
紺色の絨毯が敷かれた部屋に空色に黄色の刺繍の入ったのソファが置かれている。
イシュトハン邸ではあまり見ないルームデザインだが、重厚感はあるが落ち着く色合いだ。
濃いブラウンに金メッキが各所に施された家具もシンプルなデザインだがこだわりを感じる。
家具はイシュトハンで用意したはずだが、秘書か誰かが希望を伝えたのだろうか。
だとすれば、この部屋はフリードの好みのはずだ。
ピクリともしないフリードの座るソファの横に屈み、クロエは寝顔を眺めた。
よほど疲れていたのだろうかと思えば、このまま寝かせてあげるべきかもしれない。
そう思ったクロエは目を閉じて指を鳴らす。
ベッドに放り出されたフリードの身体を支えようかと思ったが、先にフリードが反射的にベッドに手を付いた。
「起きちゃった?」
「ん…あぁ。寝てたのか?」
「疲れてるんでしょ。そのまま寝なさい」
「クロエは?」
「私は…フリードの買ってくれたケーキを食べてから寝るわ」
「なら僕も起きるよ」
寝室から出て行こうと歩き出したクロエに、声がまだ寝ているようなフリードが手を伸ばす。
「眠そうじゃない。寝たらいいわよ」
手が伸びてきたことに気付いたクロエは、足を止めてあえて腕を掴ませ、そのままベッドの隅に腰掛ける。
フリードの動きはまだ鈍い。人が近づいたことにも気付かなかったのだから、深い眠りに入っていたのだろう。
「うん。でも今日はもっとクロエと話したい」
「また口調が子供みたいになってるわよ。まぁでも折角ベッドまで転移させたんだし、仕方ないからここで食べることにするわ」
クロエはベッドの上に這い上がると、主人の部屋に置かれたティーセットとケーキをその場に転移させた。
ベッドの上に氷でテーブルを作り、その上に空中で注いだ紅茶の入ったティーカップを乗せる。
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クロエはフリードにティーカップを差し出しながらにっこりと笑った。
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