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just married
時間が過ぎるのは早いもので
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すっかり目の覚めたらしいフリードと、今日のプロムについて話をしていた。
サリーには挨拶出来なかったし、ラブラブ大作戦とは程遠い失態をしてしまった。
反省することは多々あったが、その中で一番お互いに問題視したのは、語り合う時間が足りないということだった。
「クロエに話したいことはたくさんある。だけど、明日も朝からエイフィルに行くだろう?気ばかり焦ってしまう」
プロムは仕方なしに帰宅したにしても、初夜を理由に再び磨き上げられていたらあっという間に就寝時間だった。
「わたしも聞きたいことはたくさんあるけど、しばらくは仕方ないと思ってしまうわ。普段はとっても静かな家だからすぐに話すこともなくなるくらい話す時間が出来ると思うけど」
「婚約期間を蔑ろにしたことを後悔してるよ」
「深く深く後悔したらいいわ」
普通の夫婦も、結婚前後は目の回るような忙しさのはずだ。
結婚式が同時にないことを幸いなことに感じた。
婚約期間に定期的に会ってお茶をして、一緒に出掛けたりして徐々にお互いを理解していく過程をすっとばして結婚してしまった弊害ともいうべきかもしれない。
一から十まで会話をしなければ相手の考えを理解出来ない。
会話が途切れれば結末を想像で埋めることすらできない。
「まず話しておかなければならないことは、私の魔法についてね」
「僕が一番聞きたかったことだ」
特に知らなくても支障はないが、イシュトハンに婿に入ったならば、透視魔法無くしては説明がつかないことが多くなる。
フロージアに報告されるとしても、手出しはできないだろうし、最低限伝えておくべきことだ。
「私が遠隔で魔法を使えるのは分かってたわよね?」
「実際に見たからね。まだ信じられないおもいだけど」
「口で説明するのは難しいけど、私は昔から見たい場所や見たい人を透視できるのよ」
全て話したらまた話が長くなってしまう。
思いついたことを口にしていたら本当にしたい話をする時間がなくなってしまうということを繰り返してきたのだから、クロエも流石に口から溢れるままに話し出すのを控えた。
「もしかしてそれが…秘密?」
「そうね。もっとあるといえばあるけど、イシュトハン家が秘密にしていたのは透視魔法ね」
「よくそんなことを秘密に出来たな…」
フリードは思い当たることがいくつかあるのか、あれもこれもとブツブツと忙しそうだった。
その隙をついて、フリードの買ってきたケーキの二つ目に手をかける。
難はある王子だけど、コルセットをしてプロムに参加する私のお腹が満たされることはないだろうと思って手配してくれたと思うと、昔好きだったのはこういう気を遣ってくれるところだったなと思い出す。
当たり前にあった優しさに惹かれて、当たり前に恋をした自分。
フリードの反応を見れば、今のところはドン引きされているわけではなさそうで、それだけで食は進んだ。
「クロエは僕を透視したことはなかったのかい?」
「あるわよ。私を婚約者候補から外したのは貴方の誕生日、この1ヶ月くらいは結構盗み見てた。アヒルとお風呂に入ってるのもね」
「なら、なんであんなことをしたんだ?」
あんなこと、と言われても心当たりがないというかあり過ぎるというか、これといって思い浮かんでくることはなく、クロエは首を傾げた。
「ダンと結婚する、私たちの証人になってくれた女性だよ」
「あぁ、ウラリーのこと…」
「君はそんなに結婚したくなかったのか?そんなに変なことを僕はしていたのか?」
「ちょっとちょっと?全然話が見えないんだけど」
頭を抱えてついに自分に問いかけるように話し始めたフリードに、クロエは再び闇に落ちてしまったかもしれないと、慌ててフリードの肩を揺する。
「透視してたのなら、プロムのドレスや手紙を送っていたのも知っていたんだろう?今までてっきり手紙やプレゼントも見れなくてすれ違ってしまったばかりに逃げられたとばかり思っていた」
「透視し始めたのは1ヶ月前位からだし、私は手紙を送るところも見てないし、イシュトハンの反逆を疑っているのも知らなかったわよ。昼寝しながらよく透視してたけど、私の名前すら聞いたことなかったわよ」
「昼寝!?それだ。それだよ。前日分の各所からの報告は次の日の朝精査される。婚約しているイシュトハンの動きについては最重要事案だった。朝一番に情報が上がってくるし、議論されたのも勿論朝だ。それに、手紙はプライベートな時間、私室に帰ってからしか書くことはない」
クロエはフリードとは違い、呑気にケーキを食べるためにフォークに手を掛ける。
今更そう言われても?と思うのだ。
朝は頭が働かないし、女は支度に時間がかかるのだ。学園へ行くことがなくなり、朝は急いで支度する必要もなかった。
早起きはしないし、夜寝る前はゆっくりお風呂に入って魔導書を読んでいるのだし、こっちにもコアタイムというものがある。
夜にフリードが1人になれば、情報はそれ以上入らないのだから透視をする必要がなかったのだ。
「そうは言うけど、元々は利用されてると思われるような行動をしていたのが悪いんでしょ」
クロエはケーキの最後の一口を口に入れると、冷えてしまった紅茶を魔法で少し温めてから飲み干し、パフッと枕に向かって倒れ、食べてすぐに横になれる幸せを噛み締める。
「何か利用されていると誤解をしていたんだな!?」
手を広げるように倒れたその片手を取られ、クロエはドキリとした。
これは余計なことを言ってしまった。
サリーには挨拶出来なかったし、ラブラブ大作戦とは程遠い失態をしてしまった。
反省することは多々あったが、その中で一番お互いに問題視したのは、語り合う時間が足りないということだった。
「クロエに話したいことはたくさんある。だけど、明日も朝からエイフィルに行くだろう?気ばかり焦ってしまう」
プロムは仕方なしに帰宅したにしても、初夜を理由に再び磨き上げられていたらあっという間に就寝時間だった。
「わたしも聞きたいことはたくさんあるけど、しばらくは仕方ないと思ってしまうわ。普段はとっても静かな家だからすぐに話すこともなくなるくらい話す時間が出来ると思うけど」
「婚約期間を蔑ろにしたことを後悔してるよ」
「深く深く後悔したらいいわ」
普通の夫婦も、結婚前後は目の回るような忙しさのはずだ。
結婚式が同時にないことを幸いなことに感じた。
婚約期間に定期的に会ってお茶をして、一緒に出掛けたりして徐々にお互いを理解していく過程をすっとばして結婚してしまった弊害ともいうべきかもしれない。
一から十まで会話をしなければ相手の考えを理解出来ない。
会話が途切れれば結末を想像で埋めることすらできない。
「まず話しておかなければならないことは、私の魔法についてね」
「僕が一番聞きたかったことだ」
特に知らなくても支障はないが、イシュトハンに婿に入ったならば、透視魔法無くしては説明がつかないことが多くなる。
フロージアに報告されるとしても、手出しはできないだろうし、最低限伝えておくべきことだ。
「私が遠隔で魔法を使えるのは分かってたわよね?」
「実際に見たからね。まだ信じられないおもいだけど」
「口で説明するのは難しいけど、私は昔から見たい場所や見たい人を透視できるのよ」
全て話したらまた話が長くなってしまう。
思いついたことを口にしていたら本当にしたい話をする時間がなくなってしまうということを繰り返してきたのだから、クロエも流石に口から溢れるままに話し出すのを控えた。
「もしかしてそれが…秘密?」
「そうね。もっとあるといえばあるけど、イシュトハン家が秘密にしていたのは透視魔法ね」
「よくそんなことを秘密に出来たな…」
フリードは思い当たることがいくつかあるのか、あれもこれもとブツブツと忙しそうだった。
その隙をついて、フリードの買ってきたケーキの二つ目に手をかける。
難はある王子だけど、コルセットをしてプロムに参加する私のお腹が満たされることはないだろうと思って手配してくれたと思うと、昔好きだったのはこういう気を遣ってくれるところだったなと思い出す。
当たり前にあった優しさに惹かれて、当たり前に恋をした自分。
フリードの反応を見れば、今のところはドン引きされているわけではなさそうで、それだけで食は進んだ。
「クロエは僕を透視したことはなかったのかい?」
「あるわよ。私を婚約者候補から外したのは貴方の誕生日、この1ヶ月くらいは結構盗み見てた。アヒルとお風呂に入ってるのもね」
「なら、なんであんなことをしたんだ?」
あんなこと、と言われても心当たりがないというかあり過ぎるというか、これといって思い浮かんでくることはなく、クロエは首を傾げた。
「ダンと結婚する、私たちの証人になってくれた女性だよ」
「あぁ、ウラリーのこと…」
「君はそんなに結婚したくなかったのか?そんなに変なことを僕はしていたのか?」
「ちょっとちょっと?全然話が見えないんだけど」
頭を抱えてついに自分に問いかけるように話し始めたフリードに、クロエは再び闇に落ちてしまったかもしれないと、慌ててフリードの肩を揺する。
「透視してたのなら、プロムのドレスや手紙を送っていたのも知っていたんだろう?今までてっきり手紙やプレゼントも見れなくてすれ違ってしまったばかりに逃げられたとばかり思っていた」
「透視し始めたのは1ヶ月前位からだし、私は手紙を送るところも見てないし、イシュトハンの反逆を疑っているのも知らなかったわよ。昼寝しながらよく透視してたけど、私の名前すら聞いたことなかったわよ」
「昼寝!?それだ。それだよ。前日分の各所からの報告は次の日の朝精査される。婚約しているイシュトハンの動きについては最重要事案だった。朝一番に情報が上がってくるし、議論されたのも勿論朝だ。それに、手紙はプライベートな時間、私室に帰ってからしか書くことはない」
クロエはフリードとは違い、呑気にケーキを食べるためにフォークに手を掛ける。
今更そう言われても?と思うのだ。
朝は頭が働かないし、女は支度に時間がかかるのだ。学園へ行くことがなくなり、朝は急いで支度する必要もなかった。
早起きはしないし、夜寝る前はゆっくりお風呂に入って魔導書を読んでいるのだし、こっちにもコアタイムというものがある。
夜にフリードが1人になれば、情報はそれ以上入らないのだから透視をする必要がなかったのだ。
「そうは言うけど、元々は利用されてると思われるような行動をしていたのが悪いんでしょ」
クロエはケーキの最後の一口を口に入れると、冷えてしまった紅茶を魔法で少し温めてから飲み干し、パフッと枕に向かって倒れ、食べてすぐに横になれる幸せを噛み締める。
「何か利用されていると誤解をしていたんだな!?」
手を広げるように倒れたその片手を取られ、クロエはドキリとした。
これは余計なことを言ってしまった。
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