上 下
28 / 56
愛は変態を助長させる

27:少しの恐怖

しおりを挟む
 真翔さんはすぐに部屋着に着替えて
キッチンまで来てくれた。

それから一緒に夕飯を食べて
リビングで一緒にテレビを見た。

冷蔵庫にビールが入っていたので
一緒に缶ビールを飲む。

僕はあまりビールは飲まないのだけれど
この前、先輩さんとが勧めてくれた
ビールカクテルは美味しかったので
それを思い出して飲むことにしたのだ。

二人で並んでソファーに座り、
ニュースの画面を見ながら
お母さんとのやりとりを
真翔さんに改めて話をする。

でも真翔さんは
僕の話を聞いているのか
いないのか、
うん、うん、と返事をしながら
僕の髪撫でたり、
腰を引き寄せたりする。

僕のアパートは狭いし、
こたつは小さいから
並んで座るとどうしても
ひっついてしまうけれど、
このソファーは広い。

無理にひっつく必要は
ないと思うのに、
真翔さんは僕との距離が
何故か物凄く近い。

でも僕も真翔さんと
ひっつくのは嫌じゃないので
まぁ、いいか、と思う。

もしかして真翔さんは
自分の家では甘えん坊に
なってしまう人なのかも?

そう思うと、
いつも大人な真翔さんが
可愛く思えてしまう。

僕はひそかに笑った。

その時、テレビの明かりが
急に変わった。

ニュースが終わったようだ。

「何か見ますか?」

僕はテレビのリモコンに手を伸ばす。

けれど、真翔さんの手は
僕の腰を掴んだままで
テーブルに置いてあるリモコンには
手が届きそうにない。

「真翔さん?」

横に座る真翔さんを見ると、
急に唇が重なった。

ビックリしたけど
もちろん、拒否感はない。

唇はすぐに離れたけれど、
今度は大きな手が僕の頬に添えられ、
もう一度、口づけられた。

「なんだか、夢みたいだ」

真翔さんは言いながら、
何度も何度も僕に口づける。

「ユウがこの家にいるなんて」

そう言われても、
僕は首を傾げるしかない。

だって僕は何度も真翔さんの
お母さんに呼ばれて
この家に来ていたのだ。

でも僕は、違うよ、とは言わなかった。

真翔さんの勘違いだとしても
目の前の真翔さんは
物凄く嬉しそうな顔をしていたから。

「仕事から疲れて帰ってきたら、
ユウが家にいて、
夕飯を作ってくれて
『ごはんにします?
お風呂にします?』って。

……新婚みたいだ」

そんなことを幸せそうに言われたら
僕は顔を熱くするしかない。

そう言われたら、そうかも?

真翔さんは僕を抱きしめて、
そのまま体をソファーに倒してくる。

「ま、真翔さん?」

「このまま、抱きたい。
いい?」

このまま?
ここで?

いい?って聞かれたけれど、
真翔さんは返事も聞かずに
僕に何度もキスをしながら
スカートから出た足に触れて来た。

どうしよう。
こんな場所で……。

真翔さんの指が
僕の足をなぞるように動く。

ふくらはぎを優しく撫でられ、
指が徐々に上に移動して
太ももを触れた時、
僕は思わず震えた。

あのアパート以外で、
初めて真翔さんに触れられた。

急に真翔さんの指を
生々しく感じる。

あのアパートは、
たぶんだけれど、
あの女神さんの『力』が
影響しているんだと思う。

だって真翔さんに触れられても
どこかふわふわして、
気持ちが良くて。

求めてくれるのが嬉しくて
恥ずかしいと思っても。

確かに真翔さんに
抱かれてはいるのだけれど
キモチイイにどんどん
支配されて僕は何もわからなくなってしまう。

それに僕はバイト先の
居酒屋に良く来るOLさんに
ちょっとだけ、いやらしい本を
読ませてもらったことがあった。

OLさんが美形同士の男の人たちが
愛し合う話が好き? とかで、
アニメの話しばかりするし、
その好きなキャラクターで
漫画を描いているというから
興味が湧いて見せてもらうことにしたのだ。

そしたら……。
口に出すのも恥ずかしい内容だった。

OLさんがこんな漫画を
描いているなんて、ビックリだった。

でも、そんな激しい、
大人向けの漫画を描いているのに、
OLさんは僕に
「やっぱり初めて抱かれる時は痛いの?」
と聞いてきた。

僕は真翔さんに抱かれるときは
わけがわからなくなるから、
痛いとは思わなかったけれど。

OLさんの話を聞いていると
女性は初めて男性に抱かれるとき、
痛いことが多いみたいだ。

でも僕は良くわからない。

きっと女神さんが
そういう痛みとかも、
助けてくれたのだと思う。

もしも。
この家で真翔さんに抱かれたら
僕はいったいどうなるのだろう。

今までは、女神さんのおかげで
僕が真翔さんに抱かれても
どこか現実味のない感じだた。

でも今は違う。

女神さんの『力』はない。

だって真翔さんの指が
僕の足に触れているだけで
僕の心臓は壊れそうなぐらい
ドキドキしている。

いつもなら素直に体の力を抜いて
真翔さんにしがみつくのに。

体がこわばって、うまくいかない。

僕、このまま真翔さんに
抱かれたら……痛い、のかな?

初めて、みたいになるのかな?

僕がもたもたしているうちい、
真翔さんはあっという間に
僕のスカートのファスナーを下げて
僕の足からスカートを脱がしてしまっている。

「ま、真翔さんっ」

僕は思わず、真翔さんを呼んだ。

真翔さんは動きを止めてくれる。

「どうしたの?
嫌?」

「そう、じゃなくて」

なんて言ったらいいんだろう。

「その、僕……怖くて」

「怖い?
俺のことが?」

っと驚く真翔さんに僕は
慌ててしがみつく。

「そうじゃなくて、その……」

僕は真翔さんにしがみついたまま
今まで考えていたことを
真翔さんに話してしまった。

真翔さんは僕を抱きしめて
僕の話を聞いてくれる。

「そうか。
あのアパートには、
女神の加護とかがあるのかも
しれないな」

真翔さんは僕の話を
疑うことなく聞いてくれた。

「じゃあ、今日が加護のない場所で
ユウが俺を感じる初めての日だ」

と真翔さんはそう言い、
笑って僕の額にキスをする。

「あのアパートに女神の加護があるなら
結婚したら、当分はあのアパートに
住んだ方が良いよな」

なんて真翔さんは言いながら
僕の頬に、唇にもキスをして。

「沢山ユウを感じたいし、
ユウも俺のこと、感じて?」

そう言われてしまったら、
もちろん、拒否なんてできない。

僕は笑顔の真翔さんに、
頷くことしかできなかった。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

気付くのが遅すぎた

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,171pt お気に入り:5,487

9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,437pt お気に入り:103

【完】君を呼ぶ声

BL / 完結 24h.ポイント:241pt お気に入り:87

お兄ちゃんと内緒の時間!

BL / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:59

中学生の弟が好きすぎて襲ったつもりが鳴かされる俳優兄

BL / 連載中 24h.ポイント:205pt お気に入り:152

兄のマネージャー(9歳年上)と恋愛する話

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:5

親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

BL / 完結 24h.ポイント:525pt お気に入り:20

BLはファンタジーだって神が言うから

BL / 完結 24h.ポイント:596pt お気に入り:30

地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:1,700

処理中です...