【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

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獣人の国

202:甘い空気

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 ディランの家は……大きかった。
大きいと言っていいのか、なんというのか。

この国に来た時に丘から見えた
あの宮殿に見えるのは気のせいだろうか。

それに正直、「初めましてお邪魔します」と
挨拶するのに、抱っこされたままというのも
どうかと思う。

そんなわけで私は庭を出る前に
ディランに言って、地面に下してもらった。

「ディラン、ここ、丘で見た宮殿に見える」

「あぁ、そうだな」

ディランは、それがなにか?と
言うような顔をした。

私はすぐ後ろにいるマイクの顔を見た。

マイクが言っていた
「ディランは王族に近しい者」という予測が
当たったと言っていいのだろうか。

マイクも私の言いたいことを
理解したのだろう。

少しだけ頷いてくれる。

庭園を出ると、騎士だけでなく、
使用人らしき人たちが
並んでディランを出迎えた。

その一番前で、
執事のような姿の年配の男性が
「よくお戻りくださいました」と
目をうるませて頭を下げる。

……ディランってなにもの?

「話はあとだ。
客間を用意してくれ。
大切な客人を連れて来た」

「かしこまりました」

執事さんっぽい人はそばにいた人たちに
指示を出していく。

「ユウ、こっちだ」

ディランに連れられ、
私とマイクは宮殿の中に入る。

この国も男の人しかいないんだと思う。
だって、この世界は男性しかいない世界に
女神ちゃんが設定したはずだから。

でも、宮殿の中に入ると
中は物凄く華やかだった。

花があちこち飾ってあって、
花瓶の下にはレース飾りが敷いてある。

壁にはタペストリーも飾ってあったし、
なんというか、乙女が好きそうな装飾ばかりだ。

もちろん、可愛い物が好きな私も
好きな雰囲気だ。

私とマイクは一旦、
客室に連れて来られた。

ディランは近くにいた侍従さんに
私たちをもてなすように言い、
「少しだけでかけてくる」と
言って、走ってどこかに行ってしまった。

私とマイクの部屋は隣同士だったけれど
案内してくれた侍従さんが
お茶を用意してくれるというので
マイクと一緒に私の部屋に
準備してもらうようにお願いをした。

ディランは家族に
帰宅したという報告に行っているらしい。

侍従さんは私たちのお茶を淹れると
お辞儀をして部屋を出ていく。

「なんというか……不思議な国ですね」

侍従さんが部屋を出てから、
マイクはそんなことを言った。

「うん。街も家も変だったしね」
と、私が言うと、マイクは少し笑った顔になる。

「ユウさま、お疲れでしたでしょう。
どうぞ、お座りください」

マイクは私をソファーに促した。
私は素直にソファーに座り、
マイクも隣に座るように言う。

この部屋には小さめのソファーセットと
クローゼットやドレッサーなどが置いてあったが
特に目を引いたのはベットだった。

ベットとは言ったけれど、
どうみても、それは布団を積み重ねたような……
分厚いマットレスと言えばいいのだろうか。

靴は部屋の入り口で室内履きの靴に履き替えたけど、
和洋折衷というか、いろんな文化が
混ざったような国だと印象だ。

「ディラン、とっても偉そうだったね」

態度が、ではなく、地位が。

「そうですね。
かなりの地位なのかもしれませんが
……一人で他国を放浪するぐらいです。
国にとっては、さほど重要な
人間ではないと思われます」

やはりマイクはディランのことになると
辛らつになる。

でも言ってることは
間違ってないと思うから
反論とはかできない。

私は一口、お茶を飲んだ。

「あ、ジャスミン茶だ」

懐かしい。
この世界に来て、初めて飲んだ。

「ジャスミン……?」

マイクは不思議そうな顔をして
ティーカップを手にしたけれど
匂いを嗅いで、顔をしかめた。

「独特の香りですね」

「うん。苦手な人は苦手だと思う」

私も昔は苦手だったけど、
近所のスーパーで安売りしていたので
大量買いをしたことがあったのだ。

それで無理やり飲んでいたら
だんだん美味しいと思うようになった。

「無理に飲まなくてもいいんじゃない?
それよりも、疲れたー」

私はだらん、とソファーにもたれた。

「かなり歩きましたからね。
お御足は大丈夫ですか?」

マイクがカップを置き、
私の横に来た。

そして床に跪いて
失礼致します、と私の足に触れる。

床は分厚い絨毯が敷いてあって
跪いてもマイクの足を傷つけることは
ないと思ったけれど、
それでも、自然に跪かれるのは慣れない。

だから私は大丈夫、とマイクを
立たせようとしたが、
マイクは首を振って確かめさせてくださいと言う。

「傷が無いか、心配なのです」

そう言われると頷くしかできなくて。

私が頷くと、マイクは嬉しそうな顔をして
私の足を持ち上げ、室内履きの靴を脱がした。

片方の足をしげしげと見つめ、
指先で私の足裏やくるぶしを優しく撫でる。

いやらしいことはされてないのに、
恥ずかしくて、身体が熱くなってきた。

もう片方の足も、素足になり、
マイクに足の指まで触れられると
私は恥ずかしすぎて、ソファーにあった
クッションを抱きしめた。

「可愛らしいお御足ですね」

マイクが私の足の裏に口づけた。

どくん、と心臓が鳴る。

「綺麗なお御足に、傷がつかなくて良かった。
本当でしたら、いつだって私がユウさまを
抱き上げて移動してさしあげたいのに」

足の裏に、マイクの舌が押し当てられる。

「辛い時は、どうぞ私を頼り、
私にお命じ下さい。
ユウさまのために、私はどんなことでも
してさしあげます……いえ、
してさしあげたいのです」

マイクの舌が足のかかとを舐め、
かかとから、今度は指先へと舌が動く。

足は汚れてるとか、汚いとか
とにかく拒否しないと、と思う前に
足の親指がマイクの口の中に入った。

「足の疲れも……こうして、
私が癒して差し上げたい」

甘い声に、体がうずく。

だめだめ。
知らない場所だし、
雰囲気にのまれたら絶対にダメ。

祝福だって発動してないのに。

心臓はドキドキして
どうしうようかと思っていると、
部屋の扉を軽く叩く音がした。

その音に、マイクは私の足を下す。

「少しお待ちを」

マイクが扉へ向かうのを見て
私は、はーっと息を吐いた。






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