絶香の塔

初めに香があり、香は息であり、息は神であった。
唯一神ルーハは大地に息を吹きかけ、香は花となり、人となった。
ゆえに、人が息を交わすとき、神もまたその間に在す。

広大な砂漠に抱かれたアラ=ルーハ王国。
そこでは第二性に基づく、絶対的な身分制度が敷かれている。

時は灰香(かいこう)の時代。
香料貿易で栄華を極めた王国は衰退し、神は沈黙し、香は乱れ、
愛と破滅だけが濃く混じり合っていた。

下市で調香を生業とするオメガの青年、ライラ・アフマール。
彼は、母を奪った王政への復讐を胸に、革命の準備を進めていた。

そんな折、運命は皮肉にも彼を王宮へ導く。
出会ったのは、国政を担う王太子——タリク殿下。

香に導かれ、祈りに縛られ、王と民、愛と革命は、静かに交差し始める。

彼が最後に選ぶのは、愛か、革命か。
神か、人か。香か、それとも毒か。
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