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本編
530.アル様とお出かけ2
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「タクミ!? 何故、視線を逸らす!」
「ははは~」
「おい!? まさか、一般的な薬草じゃないのか!?」
真実を告げたくないので視線を逸らしたのに、アル様が追及を止めてくれない。
「まあ、細かいことはいいじゃないですか~」
「そうは言ってもな!」
「アル様、聞かないほうが自分達の身のためでは?」
「……それもそうだな」
ナジェークさんが助けてくれた? というか、保身のためにアル様を止めてくれた。
「ところで、タクミさん。このパステルラビット達はいつまで抱いていれば良いのでしょうか?」
「あ~……手を空けていないと落ち着かない感じですか?」
「ええ、そうです」
そして、その流れでナジェークさんは、自分が抱いているパステルラビットを視線で示してくる。
護衛で騎士であるナジェークさんは、手を塞いですぐさま剣を抜けない状態でいるのは嫌なのだろう。……というか、持て余している?
「下ろして大丈夫ですよ」
「タクミ、逃げるんじゃないか?」
「まあ……大丈夫だと思いますよ」
ナジェークさんは恐る恐るとパステルラビットを地面に下ろす。
すると、パステルラビットは逃げるどころか、ナジェークさんに懐いたように足下から離れない。
「やっぱり大丈夫でしたね」
「何でだ!?」
「……本当に不思議ですね」
逆に逃げ隠れするパステルラビットを見てみたいと思うのは……贅沢なことだろうか?
「お兄ちゃん、また氷華草があったよー」
「エレナはね、ビリビリ草とピリピリ草を見つけたの~」
「我は、キノコを採って来たぞ! どうだ、美味しそうであろう!」
いつの間にかカイザーも子供達と採取をしていたようだ。
まあ……毒キノコばかり採ってきたようだけどね。
「「カイザー、食べられないキノコばかりだよ~」」
「なぬ!? これは食べられないのか!?」
「「毒キノコ~」」
「何てことだ!」
子供達に指摘を受けて驚いているので、キノコの見分けなど考えもせずに手あたり次第に採取してきたのだろう。
「薬の材料になるキノコもあるから、何かしらには使えるよ」
「……そうなのか?」
毒抜きして薬に使えるもの、毒成分を殺虫剤のようなものに使ったりと、まったく使う要素がないキノコはなさそうだ。
それを伝えると、沈み切っていたカイザーが、少しだけ浮上したようだ。
「カイザー、これからだよ」
「カイザー、教えるよ~」
「うむ、これから勉強して、しっかり覚えれば良いのだな」
「いや、カイザーなら【鑑定】を使えば、いいんじゃないか?」
「「「それがあった!」」」
勉強して知識として持っていることは良いことだけど、便利なスキルは使うべきだろう。
「タクミ、その毒キノコはどうするんだ? 猛毒のものもあるじゃないか!」
「アル様、キノコに詳しいんですか?」
「キノコというか、いろいろな毒とその毒の対処法については学んでいるぞ。立場上、必要だからな」
「ああ、なるほど」
毒殺とかに対する知識か。王族って本当に大変だな~。
「今度、上級迷宮で特級の状態異常回復のポーションを探してきますね」
「滅多に手に入らないポーションだな」
「特級はそうですよね~」
「いや、特級に限らず、状態異常回復のポーションの流通は少ないぞ」
「え、そうなんですか? 下級でも?」
「ああ、そうだな。まあ、誰もが何かあった時のために所持していたいってことだな」
「へぇ~……」
そうなんだ~。冒険者にとっては体力回復のスタミナポーションや魔力回復のマナポーションも含めてどんなポーションでも必要だし、持っていたい装備だ。だが、街で暮らす人達にとっては体力回復や魔力回復より、傷を癒やすヒーリングポーションや状態異常回復ポーションのほうが需要はあるのだろう。というわけで、後者のほうが出回らなくなるということだな。
「「ポーション、欲しいの?」」
「そうだね。解毒のものが特にね」
「「探す?」」
「そうだね。今度、迷宮に行く時は、しっかり探そうか」
「「わかった~」」
あとは……ヴィヴィアンに尋ねてみてもいいかな?
さらっと特殊な薬は持っている人物だし、確認だけはしておこう。
「期待しないで待っているから、手に入ったら売ってくれ」
「絶対に見つけるね」
「期待して待っててね」
「いや、待て! アレンとエレナが張り切ると嫌な予感がするから、ほどほどに頑張ってくれよ」
「「全力で頑張る!」」
あらら~、アル様がアレンとエレナのやる気スイッチを全力で踏み抜いてしまったようだ。
これは近いうちに迷宮に行くことになりそうだな。
「タクミ、タクミ! 今度は食べられるキノコを採って来たぞ!」
毒キノコから話題が逸れてポーションの話をしている間、カイザーはキノコ採りに再チャレンジをしていたようだ。鑑定で見分けた食べられるキノコを籠にたっぷりと採取し、満面の笑みで戻ってきた。
「いっぱい採って来たな~」
「うむ、今度はしっかりと確認しながら採ったので、食べられるものばかりだぞ! タクミ、これで美味しいものを作ってくれ」
「まあ、いいけど……キノコって炒めものとかソースに入れるか、スープとかご飯になるぞ? それでいいか?」
「うむ、そこは任せるぞ!」
あ、キノコのパスタとかもいいな!
というか、僕の中でパスタブームが来ているかも?
「タ、タクミ! そ、それは、幻のキノコではないか!」
「「「「幻のキノコ?」」」」
アル様の言葉に、僕と子供達、カイザーは揃って首を傾げてしまった。
幻? カイザーが採ってきたキノコの中にそれがあるのか?
「それだ! それ! ブラン茸とノワール茸だ!」
アル様が示したキノコを鑑定してみると、確かにブラン茸とノワール茸というものがあったが、僕にはただの白いキノコと黒いキノコにしか見えなかった。
鑑定にも特に〝幻〟とか〝稀少〟などの記載はないし……あ、でも薬に使えるようだな。
「この二種類が幻なんですか?」
「ああ、その二種のキノコを使って解毒剤が作れるのだが、それはキノコ全般の毒に有効な薬になるんだ! しかし、なかなか見つけられないキノコで、かなり高値で取引されているはずだ」
毒キノコ全般に効く薬か~。キノコの食あたりにはとても良さそうな薬だな~。
幻かどうかはともかく、薬は有用性がありそうだ。
「カイザー、ブラン茸とノワール茸はアル様に譲ってあげて」
「人には良い薬になるのなら、重要だな。うむ、問題ないぞ」
「いいのか!?」
カイザーも快く承諾してくれたので、ブラン茸とノワール茸はアル様に譲ることにする。
アル様から欲しいと言われたわけではないが、嬉しそうにしているところをみると欲しかったのだろう。
しかし……毒に苦労しているんだろうか? 本当に心配になってくるな~。
「それにしても、カイザーはこのキノコをよく見つけたな~」
「む? そのキノコは我が育てたものだぞ?」
「ん? んん? どういうこと?」
「生えてきたばかりの小さなキノコがあったのでな、試しに魔力を注いでみた!」
「いや、何やっているんだよ」
「そうしたら、みるみる大きくなって、そのキノコになったな!」
「はぁ!?」
いや、本当に何をやっているんだよ!
とりあえず、もう一度ブラン茸とノワール茸を鑑定してみると、生育過程で魔力が豊富に必要なことがわかった。
「え、魔力で育つキノコってこと!?」
何となく幻と言われる所以がわかったかもしれない出来事だった。
「ははは~」
「おい!? まさか、一般的な薬草じゃないのか!?」
真実を告げたくないので視線を逸らしたのに、アル様が追及を止めてくれない。
「まあ、細かいことはいいじゃないですか~」
「そうは言ってもな!」
「アル様、聞かないほうが自分達の身のためでは?」
「……それもそうだな」
ナジェークさんが助けてくれた? というか、保身のためにアル様を止めてくれた。
「ところで、タクミさん。このパステルラビット達はいつまで抱いていれば良いのでしょうか?」
「あ~……手を空けていないと落ち着かない感じですか?」
「ええ、そうです」
そして、その流れでナジェークさんは、自分が抱いているパステルラビットを視線で示してくる。
護衛で騎士であるナジェークさんは、手を塞いですぐさま剣を抜けない状態でいるのは嫌なのだろう。……というか、持て余している?
「下ろして大丈夫ですよ」
「タクミ、逃げるんじゃないか?」
「まあ……大丈夫だと思いますよ」
ナジェークさんは恐る恐るとパステルラビットを地面に下ろす。
すると、パステルラビットは逃げるどころか、ナジェークさんに懐いたように足下から離れない。
「やっぱり大丈夫でしたね」
「何でだ!?」
「……本当に不思議ですね」
逆に逃げ隠れするパステルラビットを見てみたいと思うのは……贅沢なことだろうか?
「お兄ちゃん、また氷華草があったよー」
「エレナはね、ビリビリ草とピリピリ草を見つけたの~」
「我は、キノコを採って来たぞ! どうだ、美味しそうであろう!」
いつの間にかカイザーも子供達と採取をしていたようだ。
まあ……毒キノコばかり採ってきたようだけどね。
「「カイザー、食べられないキノコばかりだよ~」」
「なぬ!? これは食べられないのか!?」
「「毒キノコ~」」
「何てことだ!」
子供達に指摘を受けて驚いているので、キノコの見分けなど考えもせずに手あたり次第に採取してきたのだろう。
「薬の材料になるキノコもあるから、何かしらには使えるよ」
「……そうなのか?」
毒抜きして薬に使えるもの、毒成分を殺虫剤のようなものに使ったりと、まったく使う要素がないキノコはなさそうだ。
それを伝えると、沈み切っていたカイザーが、少しだけ浮上したようだ。
「カイザー、これからだよ」
「カイザー、教えるよ~」
「うむ、これから勉強して、しっかり覚えれば良いのだな」
「いや、カイザーなら【鑑定】を使えば、いいんじゃないか?」
「「「それがあった!」」」
勉強して知識として持っていることは良いことだけど、便利なスキルは使うべきだろう。
「タクミ、その毒キノコはどうするんだ? 猛毒のものもあるじゃないか!」
「アル様、キノコに詳しいんですか?」
「キノコというか、いろいろな毒とその毒の対処法については学んでいるぞ。立場上、必要だからな」
「ああ、なるほど」
毒殺とかに対する知識か。王族って本当に大変だな~。
「今度、上級迷宮で特級の状態異常回復のポーションを探してきますね」
「滅多に手に入らないポーションだな」
「特級はそうですよね~」
「いや、特級に限らず、状態異常回復のポーションの流通は少ないぞ」
「え、そうなんですか? 下級でも?」
「ああ、そうだな。まあ、誰もが何かあった時のために所持していたいってことだな」
「へぇ~……」
そうなんだ~。冒険者にとっては体力回復のスタミナポーションや魔力回復のマナポーションも含めてどんなポーションでも必要だし、持っていたい装備だ。だが、街で暮らす人達にとっては体力回復や魔力回復より、傷を癒やすヒーリングポーションや状態異常回復ポーションのほうが需要はあるのだろう。というわけで、後者のほうが出回らなくなるということだな。
「「ポーション、欲しいの?」」
「そうだね。解毒のものが特にね」
「「探す?」」
「そうだね。今度、迷宮に行く時は、しっかり探そうか」
「「わかった~」」
あとは……ヴィヴィアンに尋ねてみてもいいかな?
さらっと特殊な薬は持っている人物だし、確認だけはしておこう。
「期待しないで待っているから、手に入ったら売ってくれ」
「絶対に見つけるね」
「期待して待っててね」
「いや、待て! アレンとエレナが張り切ると嫌な予感がするから、ほどほどに頑張ってくれよ」
「「全力で頑張る!」」
あらら~、アル様がアレンとエレナのやる気スイッチを全力で踏み抜いてしまったようだ。
これは近いうちに迷宮に行くことになりそうだな。
「タクミ、タクミ! 今度は食べられるキノコを採って来たぞ!」
毒キノコから話題が逸れてポーションの話をしている間、カイザーはキノコ採りに再チャレンジをしていたようだ。鑑定で見分けた食べられるキノコを籠にたっぷりと採取し、満面の笑みで戻ってきた。
「いっぱい採って来たな~」
「うむ、今度はしっかりと確認しながら採ったので、食べられるものばかりだぞ! タクミ、これで美味しいものを作ってくれ」
「まあ、いいけど……キノコって炒めものとかソースに入れるか、スープとかご飯になるぞ? それでいいか?」
「うむ、そこは任せるぞ!」
あ、キノコのパスタとかもいいな!
というか、僕の中でパスタブームが来ているかも?
「タ、タクミ! そ、それは、幻のキノコではないか!」
「「「「幻のキノコ?」」」」
アル様の言葉に、僕と子供達、カイザーは揃って首を傾げてしまった。
幻? カイザーが採ってきたキノコの中にそれがあるのか?
「それだ! それ! ブラン茸とノワール茸だ!」
アル様が示したキノコを鑑定してみると、確かにブラン茸とノワール茸というものがあったが、僕にはただの白いキノコと黒いキノコにしか見えなかった。
鑑定にも特に〝幻〟とか〝稀少〟などの記載はないし……あ、でも薬に使えるようだな。
「この二種類が幻なんですか?」
「ああ、その二種のキノコを使って解毒剤が作れるのだが、それはキノコ全般の毒に有効な薬になるんだ! しかし、なかなか見つけられないキノコで、かなり高値で取引されているはずだ」
毒キノコ全般に効く薬か~。キノコの食あたりにはとても良さそうな薬だな~。
幻かどうかはともかく、薬は有用性がありそうだ。
「カイザー、ブラン茸とノワール茸はアル様に譲ってあげて」
「人には良い薬になるのなら、重要だな。うむ、問題ないぞ」
「いいのか!?」
カイザーも快く承諾してくれたので、ブラン茸とノワール茸はアル様に譲ることにする。
アル様から欲しいと言われたわけではないが、嬉しそうにしているところをみると欲しかったのだろう。
しかし……毒に苦労しているんだろうか? 本当に心配になってくるな~。
「それにしても、カイザーはこのキノコをよく見つけたな~」
「む? そのキノコは我が育てたものだぞ?」
「ん? んん? どういうこと?」
「生えてきたばかりの小さなキノコがあったのでな、試しに魔力を注いでみた!」
「いや、何やっているんだよ」
「そうしたら、みるみる大きくなって、そのキノコになったな!」
「はぁ!?」
いや、本当に何をやっているんだよ!
とりあえず、もう一度ブラン茸とノワール茸を鑑定してみると、生育過程で魔力が豊富に必要なことがわかった。
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