異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉

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本編

538.麺料理

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「さて、麺作りを始めます!」
「「始めま~す!」」

 今日は、厨房の一部を借り、早速シルのリクエストの麺料理を作ることにした。とはいっても、貰ってきたばかりの製麺機を使ってみたかっただけとも言うけどな。

「アレンとエレナには、またうどんの生地をお願いしてもいいかい?」
「いいよ~」
「任せて~」

 子供達にはうどん生地踏みをやってもらいつつ、僕はパスタ生地を大量に仕込んでいく。
 生地ができあがったら、いよいよ製麺機の出番だ。まずは平面のパスタから試してみる。

「良い感じの厚さと幅だ。さすが、ソルお爺さんだ」
「「おぉ~、良い感じ~」」
「あとは切って……」

 製麺機は生地を入れると、いい具合に伸され、カットされて流れてくる感じなので、長さは自分で切らなくてはならない。

「できた! じゃあ、次ね」

 次はうどん用の製麺機だ。

「こっちも良い感じの太さだな」
「「良い感じ~」」

 うどんも僕のイメージ通りの太さだった。本当にソルお爺さんはさすがである。

「あとは、適当な長さに切って……」
「「切っちゃうの?」」
「ん?」

 パスタと同じでうどんも適当な長さに切ろうと思ったら、子供達に止められた。

「そのまま食べたい」
「長いのちゅるちゅるって」
「……このまま?」
「「そのまま!」」

 子供達はうどんを切らないままで食べたいようだ。
 確か、丼に入った麺が一本だけという郷土料理があったような? 一本うどんだったかな?

「えっと……」

 うどん生地を一本、《無限収納》から取り出した丼に入れてみた。

「うわ~、量もちょうど良さそうだな~」
「「これも良い感じ!」」

 長ぁーいうどんは、一本でちょうど一人前くらいの量だった。

「じゃあ、そのまま食べてみようか~」
「「やった~」」
「そうだな~。でも、今日は温かい汁じゃなくて、冷たい汁にしようかな~」
「「おぉ~、それも美味しそう~」」

 ぶっかけ……いや、揚げ玉を作って冷やしたぬきうどんにでもしようかな~。

「じゃあ、お昼ご飯はうどんでいいね?」
「パスタも食べた~い」
「ちょっとずつでいいから~」
「ははは~、味見くらいの量なら、食べられるか?」
「「わ~い」」

 というわけで、早速大きな鍋で大量のお湯を沸かして、長いままのうどんを茹でていく。
 あ、ついでにパスタ麺もね。揚げ玉もだが、パスタソースはまだ作っていないが、《無限収納》に茹で立ての麺を入れておけるって本当に便利だよな~。

「そうだ! 前に作った蕎麦も茹でるか~」

 生地を作っただけでまだ食べていなかった蕎麦も茹でてしまう。

「あ~…………」
「「どうしたの?」」
「や~……ちょっと千切れたから、失敗かな~……と」

 うどんやパスタは問題なかったが、蕎麦は茹でている最中で既に千切れている様子が窺えた。

「失敗なの?」
「食べられない?」
「いや、食べられないってことはないかな」
「「じゃあ、食べてみよう!」」
「そうだな。食べてみるか~」

 冷水で締めた蕎麦をまずは味見してみることにする。

「「美味しいよ?」」
「味は問題なさそうだな」

 めんつゆで味見をしてみれば、かなり香りが強めだったけれど、味は問題なく食べられるものだった。
 むしろ、意外と美味しい? ただ、コシが弱いのかな?
 蕎麦打ちにはあまり詳しくないので、このコシの弱さが生地作りの時に水が多かったのか、練り方が甘かったのか、むしろやり過ぎたのか……などの原因は見当がつかなかった。
 茹で方は大丈夫だと思うし、《無限収納》に入れていたので乾燥してしまったってことはないとは思うので、まあ……要精進ってことだな。
 こればかりは蕎麦打ちの回数を増やしてコツを掴んでいくしかないな。

「じゃあ、この蕎麦はそのうち美味しくいただこう」
「「今日食べないの~?」」
「今日はうどんとパスタだろう? これ以上は無理だよ」
「「そうか~」」

 さすがにこれ以上食べるものは増やせないので、蕎麦は明日以降に回させてもらおう。

「さて、次は揚げ玉とパスタソースだな。――アレンとエレナは、何の味のパスタが食べたい?」
「「キノコはー?」」
「ああ、そういえば、キノコを採った時、キノコのパスタもいいな~って言った……か? 言ってないよな?」
「聞いてないね~」
「でも、食べたーい」

 キノコのパスタは、僕が内心で食べたいと思っていただけだ。偶然、子供達も食べたいと思ったようだ。

「じゃあ、具材はキノコを使うとして、味は……和風、クリーム、スープ、ペペロンチーノ風、バターショーユ……――」
「「バターショーユ!」」
「了解。じゃあ、今日はバターショーユね」

 僕がキノコに合いそうな味つけを呟いていたら、子供達が即決めした。バターショーユ味なら具材にホタテを追加してもいいかもな。
 でも、初めて作るものもいいけど、シルは僕達が食べたのを見て麺料理が食べたいと思ったんだよな? なら、作ったことのあるものがいいのかな?
 作ったことがあるのは、イカスミのパスタとカルボナーラパスタか?
 あ~、ミートソースのパスタも食べたいかも。……僕が!

「全部作っちゃうか!」
「「作っちゃえ、作っちゃえ!」」

 僕が何をしたいのか言葉にしているわけではないが、子供達が賛成の声を上げる。
 シル達神様には、一本うどんを一人前ずつ人数分。パスタは四種類を大皿で、取り分けの小皿もつけて送ればいいな。

「決めた! キノコのバターショーユパスタ、イカスミパスタ、カルボナーラパスタ、ミートソースパスタ。パスタは四種類作るよ~。味見はキノコとミートソースでいいかな?」
「「それで!」」
「よし、決まり。じゃあ、作っていくよ~」

 というわけで、ソースや具、追加でめんつゆを作っていき、そのまま料理を仕上げていく。

「さあ、できたよ~」
「「どれも美味しそう~」」

 料理が完成すると、子供達は歓声を上げる。

「じゃあ、これを送ったら、僕達もご飯を食べようか」
「「食べよう~」」

 シルにうどんとパスタをさくさく送ってしまい、僕達も食事を始める。

「「…………」」

 子供達は一本うどんの先端に齧りつくと、無言でもぐもぐと食べ続けている。
 ……最初から最後まで一気に食べる気なのだろうか?

「喉を詰まらせないようにな」

 とりあえず、注意だけはしておくと、子供達はもぐもぐしながら無言で頷いて返答をしてきた。
 まあ……たぶん、気に入ってくれたのだろう。




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