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第7話

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 それから数日後。火乃宮内・武神ノ間。
(退屈じゃあ……あいつら早う来ないのかのう……)
 タメシヤノミコト様の部下にして火を司るマヨイガ五神・大蝦暮ノ翁(おおがまのおきな)は数百年ぶりのマヨイガの儀に再招集されたものの待ち時間を持て余しており、自慢のあごひげを自らの油で整えながら大あくびをしていた。
(あの火の海になってからが火を司る儂の本領発揮だと言うのに……惜しかったのぉ。
 しかし時代は変わったものじゃ……若御館様とマヨイガに挑む者が若くて華奢で美しくやんごとなき女子2人とはなぁ。2人足りぬのもそうだが、どういう経緯があってあのような雅な生まれの女子らが若御館様と共に武名を上げて主の冥加を得んと言うのじゃろうか?)
 多くのもののふと対峙してきた古株五武神が色々な勘違いをしつつ昔を懐かしんでいたその時、神に挑まんとするもののふが鬼ノ間の封を解く気配がする。

(ほお、長柄物と盾とは……作戦を変えたようじゃな)
 二刀流に炎属性吸収効果持ちの大盾『火焔太鼓』も装備する事で攻撃特化から攻防バランススタイルに進化させた探に武器を槍に変更した美香と英里子。幾多の挑戦者を迎え撃ってきた大蝦暮ノ翁はそれが意味する所を察し、一瞬で対策を練る。
「ゲロォォン!」
「来るで!」
 全身に力を入れた大蝦暮ノ翁は一気に跳ね上がり、前回同様にフライングボディクラッシュを地面に叩きこむ……かと思われたが、そのまま空中で縦回転して体液を広範囲にばら撒く。
『ウォーターウォール!』『アースウォール!』
 直撃すればばっちいとかベタベタでは済まないレベルの重量サイズ&粘度の油塊をまき散らす攻撃に美香と英里子は各々エレメントウォールを生成。3人を守る。
「ゲロボァァァ!」
「ぼあぁ……ってアカン!『アースチェンジ!』」
 探と同じマヨイガエレメント技でそのまま全身を火に包んだガマガエルの着地寸前で英里は自身と周囲の地面を砂地化。地面の油を無効化して引火を防ぐ。
「グロロロ……ボゲロロォォ!」
 足にまとわりつく砂地、広間は火の海。敵が墜落した衝撃で二重エレメント防壁は崩壊し、逃げ場所と安全地帯を失った3人の前で大口を開けた敵が周囲の炎を吸い込み、口の中で圧縮していく。
『大蝦蟇油炎門』
『エレメントプラス・フアイア!』
 マヨイガエレメント乱発してしまった女の子2人の前に立った探は大盾を地面に突き立て、マヨイガ能力でその属性吸収能力を底上げ。周囲の火の海を取り込んで防御力上昇し続ける最強の盾、周囲の火の海を巻き込んで火力を上げ続ける大蝦暮ノ翁の最強火炎放射が正面衝突する。
(もののふよ、惜しかったのぅ! これは儂の勝ちじゃな!)
 マヨイガ属性が同じ技がぶつかると威力低下すると言う『同属性相殺効果』に着目して炎属吸収効果を持つ盾で仲間の壁となり、槍で後ろの安全地帯からチクチク体力を削る作戦を思いついたであろう3人。
 退路を完全に断ち、一気に逃げ場を奪う大技で決着を付ける事を選んだ大蝦暮ノ翁は鍔迫り合いを楽しみつつ奥義の火力を徐々に底上げし続ける。
 仲間2人による援護攻撃も無く、エレメントプラスによる防御力底上げと特殊効果が低下していくのが火を見ずとも明らかな大盾……全ての要素で勝利を確信した大蝦暮ノ翁が一気に周囲の炎を取り込もうとしたその時……大蝦墓ノ翁の足元地面にひびが入る。
『氷柱ノ獄(フローズンプリズン)!』
「ゲゴッ……ゲゴロロロォォ?!」
 足元から斜めに突き出してきた氷と岩の混じった頑強な氷柱は翁の身体をかすって先端でがっちりと組み合い、半円ドーム型の檻となって翁を拘束。
 火炎放射の構えを固定していたが故に跳ね逃げる事が出来なかった翁は慌てて下からの突き上げ跳躍で壊そうとするが氷結結合した岩氷の硬度には全く歯が立たない。
「うぉぉぉぉ!」
『エレメントプラス・ウオーター』『パワード』『アクセラレート』
 合体エレメント奥義で敵のバウンド能力と動きを完全に封じた英里子と美香は肉体強化&速度強化状態で檻内でもがく敵の背後に回り込む。
『ラピッドランス!』
 サポートスキルとして習得した槍専用攻撃スキルを発動させた2人の水属性を帯びた穂先による乱れ突きは分厚い皮膚を難なく刺し貫き、容赦なく物理・弱点属性ダメージを与えていく。
「ゲゴォォォォ!」
「先輩!」
『エレメントプラス・ファイア!』
 大盾を構えたままスタンバイしていた探は防具にエレメントプラスを付与。同属性吸収モードに再突入した大盾・火焔太鼓は大蝦墓ノ翁が反撃用熱源にしようとした周囲の火種を全て吸い取り、出血多量で弱った大蝦暮ノ翁の体熱をも吸収し始める。
「グゴッ……ゲゴォォォ……ン」
 傷口から内部流失していく高熱の体液。土と水のマヨイガエレメント合体技と探のマヨイガエレメント技の牢獄で容赦なく冷めていく体表熱。そして火を司る五武神のエネルギー源たる熱を保持しつつ体表を守る役目を果たすはずの巻滑油も乾ききって力尽きた大蝦暮ノ翁の巨体が地響きを立てて地面に倒れていった……

【第8話に続く】
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