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第23話
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「マビィ……マビビィ」
寄生主を自らの特殊成長ホルモンで異常巨大化させ、死後は自らの食料として食らい尽くす危険寄生生物・ハラクイナマコ。このマザーゲッソーに寄生していた個体もその本能的生態のままに寄生主の内臓と血肉を余すことなく胃に納めたのだが……それでもなお満たされぬ食欲に従い、行動開始しようとしたその時だった。
『ラージドウエポン!』
「マビィィィ!?」
探のサポートスキルで巨大化したジョン&マルグリータはハラクイナマコの左右の地面から突き出し、地面に押し付けて動きを止めつつ口を開いた状態に強制固定。
そこから体内に駆け込んだアイスゴーレム&ストーンゴーレム軍団をハラクイナマコは必死に吐き戻そうとするが、2体のゴーレムハンドが口を塞いでそれを阻止する。
「よしっ、全員入ったで……美香ちゃん、発動や!」
「水神紋……発動!」
『アクアアブソーバー発動』
例のシステムボイスと共に美香の右手甲の水色の『水』文字が淡く光りだし、それと同時にサポートスキル『スキルリンク』で事前に能力共有設定されていたゴーレム軍団とジョン&マルゲリータのボディにも『水』の文字が出現。
「マビャァァァァ!? マビョォォォオ!」
「吸いつくせえええ!」
体表面をがっちりと掴む2本のゴーレムハンドのみならず、体内に侵入したゴーレム軍団経由で一気に水分を奪われていくハラクイナマコはびちびち暴れ、せめてその体内に宿す幼体だけでも外界に逃そうと踏ん張るが、生命活動に欠かせない水を失っていく以上それも出来ない。
「ぐっ、ううっ……何て量なの! これだけ吸い上げてもまだ干からびないなんて」
「華咲さん!」
ここで千からびさせるのを諦めればヤツは最期の悪あがきで卵や幼体を輩出する。
それを敵体内のゴーレム経由で分かっていた美香はどうにか踏ん張るが、完全状態ではない水神紋の吸水力と少なすぎる貯水量の限界に憔悴するのみだ。
「村長! エレメントプラスです!」
そんな美香を見守るばかりだった人魚族の1人が叫ぶ。
「どういうことだ?」
「エレメントプラスは属性技を強化する効果もあるはずです。恐らく水のもののふ様のマヨイガエレメント能力をそれで強化出来ないでしょうか?」
「……そうか、その手を忘れていたとは! 皆の者、もののふ様にエレメントプラス・アクアを使うんだ!」
「エレメントプラス・アクア!」「エレメントプラス・アクア!」「エレメントプラス・アク
ア!」「エレメントプラス・アクア!」「エレメントプラス・アクア!」
「おっ、おおおっ…… うおおおおお!」
「マギャァァァァ!!」
ゼド達のもくろみ通り、マヨイガエレメント強化により吸水力・貯水力が一気に上昇した美香は最後の力を振り絞って一気にマヨイガ紋に魔力注入。それによリー気に体水分を吸い取られてしまったハラクイナマコはみるみるうちに白く乾ききって絶命、動かなくなる。
「おっ……おおっ! やったぞ、やったぞぉぉ!」
「水のもののふ様ばんざぁい!」
「ミズノモノ様ありがとうございます!」
「わぁい……ゃった……わぁ?」
「華咲さん!?」「美香ちゃん!?」
ぼーっとした表情の美香はふらつきながらも人魚族の間を縫って前線基地の奥に向かう。
「あの、皆さん……その場で頭を低くして動かないでくださいね? ほんと、二次災害とか……困るんで」
「えっ?」
『ウォーターリリース!』
美香の正面に出現した巨大魔法陣はジョン&マルゲリータやゴーレム経由でハラクイナマコの巨体から吸い出した水分を一気に決壊放出。その水量と水勢は小さいながらも立派な濁流と化す。
「危なかった……ひとまずこれで安心ね」
干からびたハラクイナマコとは逆方向に放水完了した美香は安堵のあまりへたりこんでしまう。
「……すごい水量だな。これだけの水があいつの身体にあったのか」
「まあせやろねぇ、だってナマコって……」
『ミズノモノ! 何をやっているんだ!』
英里子のうんちくトークを遮って飛び出して来たステータス画面に映し出されたのは人魚族の村でゴーレムの指揮及び非戦闘員の避難を行っていた五武神の一角、ミズノミヤ様だ。
「ミズノミヤ様!」
『マザーゲッソーとハラクイナマコの討伐ご苦労であった……だが、それを集落に向けて放水するとはどういうつもりだ!? わらわがおらねば今頃この村は押し流されてぺんぺん草も残らん所だったぞ!』
「あっ……申し訳ありません! ミズノミヤ様!」
『もうよいわ! とにかく見事な戦いであったぞ! あとはそのハラクイナマコが水を吸って復活せんように焼き払ってから戻ってまいれ。 試練を達成したそなたに水神紋を与えなければならぬからな』
そう言い終えたミズノミヤ様は通信をブチっと切る。
「と、いう事やから……ジョンにマルゲリータ。でっかくなっとる間にそいつを適当にぶつ切りにしてくれん? そしたら雲隠さんと人魚族さんが焼いてくれるで。」
マヨイガエレメントで炎を使える探と人魚族の戦士たちは各々の武器にエレメントプラスをかけて松明がわりにし、巨大なゴーレムハンド2体が器用に干からびたハラクイナマコを千切った破片に火を付けて燃やしていくのであった。
【第24話に続く】
寄生主を自らの特殊成長ホルモンで異常巨大化させ、死後は自らの食料として食らい尽くす危険寄生生物・ハラクイナマコ。このマザーゲッソーに寄生していた個体もその本能的生態のままに寄生主の内臓と血肉を余すことなく胃に納めたのだが……それでもなお満たされぬ食欲に従い、行動開始しようとしたその時だった。
『ラージドウエポン!』
「マビィィィ!?」
探のサポートスキルで巨大化したジョン&マルグリータはハラクイナマコの左右の地面から突き出し、地面に押し付けて動きを止めつつ口を開いた状態に強制固定。
そこから体内に駆け込んだアイスゴーレム&ストーンゴーレム軍団をハラクイナマコは必死に吐き戻そうとするが、2体のゴーレムハンドが口を塞いでそれを阻止する。
「よしっ、全員入ったで……美香ちゃん、発動や!」
「水神紋……発動!」
『アクアアブソーバー発動』
例のシステムボイスと共に美香の右手甲の水色の『水』文字が淡く光りだし、それと同時にサポートスキル『スキルリンク』で事前に能力共有設定されていたゴーレム軍団とジョン&マルゲリータのボディにも『水』の文字が出現。
「マビャァァァァ!? マビョォォォオ!」
「吸いつくせえええ!」
体表面をがっちりと掴む2本のゴーレムハンドのみならず、体内に侵入したゴーレム軍団経由で一気に水分を奪われていくハラクイナマコはびちびち暴れ、せめてその体内に宿す幼体だけでも外界に逃そうと踏ん張るが、生命活動に欠かせない水を失っていく以上それも出来ない。
「ぐっ、ううっ……何て量なの! これだけ吸い上げてもまだ干からびないなんて」
「華咲さん!」
ここで千からびさせるのを諦めればヤツは最期の悪あがきで卵や幼体を輩出する。
それを敵体内のゴーレム経由で分かっていた美香はどうにか踏ん張るが、完全状態ではない水神紋の吸水力と少なすぎる貯水量の限界に憔悴するのみだ。
「村長! エレメントプラスです!」
そんな美香を見守るばかりだった人魚族の1人が叫ぶ。
「どういうことだ?」
「エレメントプラスは属性技を強化する効果もあるはずです。恐らく水のもののふ様のマヨイガエレメント能力をそれで強化出来ないでしょうか?」
「……そうか、その手を忘れていたとは! 皆の者、もののふ様にエレメントプラス・アクアを使うんだ!」
「エレメントプラス・アクア!」「エレメントプラス・アクア!」「エレメントプラス・アク
ア!」「エレメントプラス・アクア!」「エレメントプラス・アクア!」
「おっ、おおおっ…… うおおおおお!」
「マギャァァァァ!!」
ゼド達のもくろみ通り、マヨイガエレメント強化により吸水力・貯水力が一気に上昇した美香は最後の力を振り絞って一気にマヨイガ紋に魔力注入。それによリー気に体水分を吸い取られてしまったハラクイナマコはみるみるうちに白く乾ききって絶命、動かなくなる。
「おっ……おおっ! やったぞ、やったぞぉぉ!」
「水のもののふ様ばんざぁい!」
「ミズノモノ様ありがとうございます!」
「わぁい……ゃった……わぁ?」
「華咲さん!?」「美香ちゃん!?」
ぼーっとした表情の美香はふらつきながらも人魚族の間を縫って前線基地の奥に向かう。
「あの、皆さん……その場で頭を低くして動かないでくださいね? ほんと、二次災害とか……困るんで」
「えっ?」
『ウォーターリリース!』
美香の正面に出現した巨大魔法陣はジョン&マルゲリータやゴーレム経由でハラクイナマコの巨体から吸い出した水分を一気に決壊放出。その水量と水勢は小さいながらも立派な濁流と化す。
「危なかった……ひとまずこれで安心ね」
干からびたハラクイナマコとは逆方向に放水完了した美香は安堵のあまりへたりこんでしまう。
「……すごい水量だな。これだけの水があいつの身体にあったのか」
「まあせやろねぇ、だってナマコって……」
『ミズノモノ! 何をやっているんだ!』
英里子のうんちくトークを遮って飛び出して来たステータス画面に映し出されたのは人魚族の村でゴーレムの指揮及び非戦闘員の避難を行っていた五武神の一角、ミズノミヤ様だ。
「ミズノミヤ様!」
『マザーゲッソーとハラクイナマコの討伐ご苦労であった……だが、それを集落に向けて放水するとはどういうつもりだ!? わらわがおらねば今頃この村は押し流されてぺんぺん草も残らん所だったぞ!』
「あっ……申し訳ありません! ミズノミヤ様!」
『もうよいわ! とにかく見事な戦いであったぞ! あとはそのハラクイナマコが水を吸って復活せんように焼き払ってから戻ってまいれ。 試練を達成したそなたに水神紋を与えなければならぬからな』
そう言い終えたミズノミヤ様は通信をブチっと切る。
「と、いう事やから……ジョンにマルゲリータ。でっかくなっとる間にそいつを適当にぶつ切りにしてくれん? そしたら雲隠さんと人魚族さんが焼いてくれるで。」
マヨイガエレメントで炎を使える探と人魚族の戦士たちは各々の武器にエレメントプラスをかけて松明がわりにし、巨大なゴーレムハンド2体が器用に干からびたハラクイナマコを千切った破片に火を付けて燃やしていくのであった。
【第24話に続く】
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