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第33話
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「……ここだな」
オカルト研究会マヨイガ探索隊は美香のウォーターエコーと探のヒートエコーの生体反応を頼りに茜がいる可能性がある大広間に到着。
「……随分静かやね、それに広すぎて松明じゃ何も見えへんな」
松明を持った英里子は警戒しつつ暗闇を見回す。
「気を付けろよ、どこから来るかわからないからな」
須田丸が警戒していたその時……天丼や壁に光が点々と現れ、それは大きな光源となって部屋の全容を明らかにしていく。
「久しぶりね、人間。うふふ、うふふふ……」
天丼からぶら下がって胴を発光させるランタンスパイダーが映し出す部屋の壁をわしゃわしゃと埋め尽くすギガントスパイダーの群れ。そして壁に設けられた蜘蛛の巣上で妖しげに笑う蜘蛛の下半身を持つボンテージ女。
「出よったな蜘蛛女ぁ!」
「久しぶりね、デザートちゃん!」
「誰がデザートやと! いてこますぞダボがぁ!」
(姉ちゃんがデザート…… ? ごふぉ!)
ガラスの器内で生クリーム、チョコソース、アイスクリーム、バナナやチェリーと共にスイーツデコレーションされたスク水英里子を妄想し、セルフ悩殺してしまった須田丸は鎧の中で咳き込む。
「あなた達がここに来たと言う事は……コレをお探しかしら?」
「御鐵院さん!」「生徒会長!」「ヤンデレ女!」「パシャっとな!」
「う一っ! ううん一っ!」
一糸まとわぬ姿で拘束されたまま4人の前に引き出された茜は必死で足を閉ざし、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして叫ぶ。
「動くな!」
蜘蛛女はどこからか取り出した刀を茜の喉元に突きつけ、駆け寄ろうとした4人をけん制する。
「よし、いい子ね……今からこの子をどうするか教えてあげる」
サデイステイックな笑みと共に蜘蛛女が取り出したのはあの黒い透明なゼリー球がたっぷり詰まった白い泡塊だ。
「これはアラネイア族のメスが生まれるクイーンしか産めない貴重な卵。そしてこれを孵化させる方法はね……こうするのよ!」
茜にヘッドロックをかけ、無理やり上を向かせたクイーンアラネイアは首を振って抵抗する茜の口にそれを押し込もうとする。
「ほら暴れるんじゃないわよ! 丸呑みしなさい!」
「あ一っ! ああ一っ!」
『エレメントプラス・フリーズ!』
美香にエレメントプラスをかけられたクイーンの卵塊は氷で覆われて氷塊化し、クイーンの手から滑り落ちたソレは地面でぐちゃぐちゃにつぶれる。
「キィィィィ!」
目の前の惨劇に壁でスタンバイしていたギガントスパイダーの雄達は激昂。本能的憤怒のまま4人に飛び掛かる。
『ヴォルトパンチ!』
須田丸がエレメントプラス・サンダーを付与した大籠手を上に突き上げると電撃衝撃波が発生。空中で感電ショック死した蜘蛛はボトボトと地面に落ちる。
『ヒートボンバー!』
探の放った複数の火球は火と熱をまき散らして爆発。バラバラに焼け焦げた蜘蛛の残骸がバラバラと地面に落ちる。
『ゥォーターバースト!』
英里子の水神紋が水色に光ると共に瀑布の如き水を放出。蜘蛛の群れを押し流し、一瞬で凍結して崩し潰す。
「キィィィィ!」
それでもなお数の暴力で向かってくるギガントスパイダーの雄。3人がマヨイガエレメント技再チャージ体勢に入ったその時だった。
『ゴーレムビンタア!』
3人の頭上360度を巨大な岩が薙ぎ払い、残りの敵を一気にはたきおとして叩き潰す。
「ジョン!?」
『ちゃうで、ゥチゃ!』
英里子が召喚したゴーレムアームかと思った3人は部屋の中央にそびえ立つ巨大な人型ゴーレムに驚く。
「えっ、英里子ちゃんなの?」
『せや、ウチが搭乗して戦う人型ゴーレム・ゴーレムアーマーや!』
「おお、すげえ! スーパーロボットみたいだぜ!」
英里子が搭乗したコクピット付きゴーレムに須田丸は目を輝かせて喜ぶ。
『ありがとな、須田丸君! それより雲隠さん、あいつ御鐵院抱えて逃げよったで! 早う追わんと!』
クイーンアラネイアが部下を囮にし、茜もろとも消えた事に気づいた3人。
『ハイドロフォイル!』『ファイアージェット!』
探と美香は各々の探知エレメント技で敵の位置を把握した高速移動追跡開始する。
「くそっ、あいつら何なんだ!? いくらオス共を喚んだところで太刀打ちは無理だ!」
蜘蛛の糸でミイラ巻きにした人質を背負い、刀を持ったまま逃げるクイーンアラネイア。
「とにかく私がいればオスはいくらでも増やせる、雌を産むなら……コレを食って栄養源にすればいい!」
「ううーっ! うーっ!」
ミイラ巻きにされて運ばれていた茜は恐ろしい言葉を聞きつけてしまい、必死で逃げようとする。
「こら暴れるな! お前は大人しく私に喰われていればいいんだよ!」
「う一っ! うぅ一っ!」
「こら、大人しくしろ! ああもう、麻痺毒しかないか!」
クイーンアラネイアは背中でびちびち暴れる人質を下ろして8本の足で押さえつけ、むき出しにした毒牙を首辺りにに突き立てようとする。
『ウォータースナイプ!』
動きを止めたところで頭部を狙撃されかけたクイーンアラネイアはバックジャンプで回避。高圧水がかすった顔の切り傷から青い血がしたたる。
『アイスツインガトリング!』
ミイラ茜と壁に張り付いたクイーンアラネイアの間に滑り込んだ英里子は人差し指だけを立てて握った両手を敵に向け、小さなつららを猛速連射する。
「うおつ! くっ、この!」
クイーンアラネイアは蜘蛛の身軽さで壁を飛び跳ねて壁を穿つ氷柱弾を交わす。
『ハイアクセラート』『ハイパワード』『エレメントプラス・フアイア!』
美香の弾幕陽動に合わせて超加速強化モードと化した探は猛火を帯びた刀を上段に構えつつクイーンアラネイアに突撃。
『パワードスラッシュ!』
そして一撃必殺の火炎刀で切り倒そうとする。
「あっ……あれっ?」
「ぐっ……どっ、どういう事だ!?」
パワードスラッシュを敵が持つ刀で受け止められた探。
「ぬううう、よく分からんが好機!」
クイーンアラネイアは刀を無茶苦茶に振り回し、探を追い詰める。
「先輩のあの一撃を受け止めるなんて、あの刀は……何なの? それより生徒会長! 無事ですか」
探に敵を任せてミイラ巻にされた生徒会長を助けた美香はすぐに心拍と呼吸を確かめる。
「……良かった、生きてる。だけど呼吸が苦しそうだわ!」
美香は急いで口の辺りの糸を引きちぎろうと引っ張るが、強靭な糸はとても切れそうにない。
『マーメイドハート リカバリー・ジェル!』
応急措置として回復ウォータージェルベッドを生成し、そこにミイラ巻き茜を寝かせた美香は気道確保すべく蜘蛛の糸と奮闘する。
【第34話に続く】
オカルト研究会マヨイガ探索隊は美香のウォーターエコーと探のヒートエコーの生体反応を頼りに茜がいる可能性がある大広間に到着。
「……随分静かやね、それに広すぎて松明じゃ何も見えへんな」
松明を持った英里子は警戒しつつ暗闇を見回す。
「気を付けろよ、どこから来るかわからないからな」
須田丸が警戒していたその時……天丼や壁に光が点々と現れ、それは大きな光源となって部屋の全容を明らかにしていく。
「久しぶりね、人間。うふふ、うふふふ……」
天丼からぶら下がって胴を発光させるランタンスパイダーが映し出す部屋の壁をわしゃわしゃと埋め尽くすギガントスパイダーの群れ。そして壁に設けられた蜘蛛の巣上で妖しげに笑う蜘蛛の下半身を持つボンテージ女。
「出よったな蜘蛛女ぁ!」
「久しぶりね、デザートちゃん!」
「誰がデザートやと! いてこますぞダボがぁ!」
(姉ちゃんがデザート…… ? ごふぉ!)
ガラスの器内で生クリーム、チョコソース、アイスクリーム、バナナやチェリーと共にスイーツデコレーションされたスク水英里子を妄想し、セルフ悩殺してしまった須田丸は鎧の中で咳き込む。
「あなた達がここに来たと言う事は……コレをお探しかしら?」
「御鐵院さん!」「生徒会長!」「ヤンデレ女!」「パシャっとな!」
「う一っ! ううん一っ!」
一糸まとわぬ姿で拘束されたまま4人の前に引き出された茜は必死で足を閉ざし、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして叫ぶ。
「動くな!」
蜘蛛女はどこからか取り出した刀を茜の喉元に突きつけ、駆け寄ろうとした4人をけん制する。
「よし、いい子ね……今からこの子をどうするか教えてあげる」
サデイステイックな笑みと共に蜘蛛女が取り出したのはあの黒い透明なゼリー球がたっぷり詰まった白い泡塊だ。
「これはアラネイア族のメスが生まれるクイーンしか産めない貴重な卵。そしてこれを孵化させる方法はね……こうするのよ!」
茜にヘッドロックをかけ、無理やり上を向かせたクイーンアラネイアは首を振って抵抗する茜の口にそれを押し込もうとする。
「ほら暴れるんじゃないわよ! 丸呑みしなさい!」
「あ一っ! ああ一っ!」
『エレメントプラス・フリーズ!』
美香にエレメントプラスをかけられたクイーンの卵塊は氷で覆われて氷塊化し、クイーンの手から滑り落ちたソレは地面でぐちゃぐちゃにつぶれる。
「キィィィィ!」
目の前の惨劇に壁でスタンバイしていたギガントスパイダーの雄達は激昂。本能的憤怒のまま4人に飛び掛かる。
『ヴォルトパンチ!』
須田丸がエレメントプラス・サンダーを付与した大籠手を上に突き上げると電撃衝撃波が発生。空中で感電ショック死した蜘蛛はボトボトと地面に落ちる。
『ヒートボンバー!』
探の放った複数の火球は火と熱をまき散らして爆発。バラバラに焼け焦げた蜘蛛の残骸がバラバラと地面に落ちる。
『ゥォーターバースト!』
英里子の水神紋が水色に光ると共に瀑布の如き水を放出。蜘蛛の群れを押し流し、一瞬で凍結して崩し潰す。
「キィィィィ!」
それでもなお数の暴力で向かってくるギガントスパイダーの雄。3人がマヨイガエレメント技再チャージ体勢に入ったその時だった。
『ゴーレムビンタア!』
3人の頭上360度を巨大な岩が薙ぎ払い、残りの敵を一気にはたきおとして叩き潰す。
「ジョン!?」
『ちゃうで、ゥチゃ!』
英里子が召喚したゴーレムアームかと思った3人は部屋の中央にそびえ立つ巨大な人型ゴーレムに驚く。
「えっ、英里子ちゃんなの?」
『せや、ウチが搭乗して戦う人型ゴーレム・ゴーレムアーマーや!』
「おお、すげえ! スーパーロボットみたいだぜ!」
英里子が搭乗したコクピット付きゴーレムに須田丸は目を輝かせて喜ぶ。
『ありがとな、須田丸君! それより雲隠さん、あいつ御鐵院抱えて逃げよったで! 早う追わんと!』
クイーンアラネイアが部下を囮にし、茜もろとも消えた事に気づいた3人。
『ハイドロフォイル!』『ファイアージェット!』
探と美香は各々の探知エレメント技で敵の位置を把握した高速移動追跡開始する。
「くそっ、あいつら何なんだ!? いくらオス共を喚んだところで太刀打ちは無理だ!」
蜘蛛の糸でミイラ巻きにした人質を背負い、刀を持ったまま逃げるクイーンアラネイア。
「とにかく私がいればオスはいくらでも増やせる、雌を産むなら……コレを食って栄養源にすればいい!」
「ううーっ! うーっ!」
ミイラ巻きにされて運ばれていた茜は恐ろしい言葉を聞きつけてしまい、必死で逃げようとする。
「こら暴れるな! お前は大人しく私に喰われていればいいんだよ!」
「う一っ! うぅ一っ!」
「こら、大人しくしろ! ああもう、麻痺毒しかないか!」
クイーンアラネイアは背中でびちびち暴れる人質を下ろして8本の足で押さえつけ、むき出しにした毒牙を首辺りにに突き立てようとする。
『ウォータースナイプ!』
動きを止めたところで頭部を狙撃されかけたクイーンアラネイアはバックジャンプで回避。高圧水がかすった顔の切り傷から青い血がしたたる。
『アイスツインガトリング!』
ミイラ茜と壁に張り付いたクイーンアラネイアの間に滑り込んだ英里子は人差し指だけを立てて握った両手を敵に向け、小さなつららを猛速連射する。
「うおつ! くっ、この!」
クイーンアラネイアは蜘蛛の身軽さで壁を飛び跳ねて壁を穿つ氷柱弾を交わす。
『ハイアクセラート』『ハイパワード』『エレメントプラス・フアイア!』
美香の弾幕陽動に合わせて超加速強化モードと化した探は猛火を帯びた刀を上段に構えつつクイーンアラネイアに突撃。
『パワードスラッシュ!』
そして一撃必殺の火炎刀で切り倒そうとする。
「あっ……あれっ?」
「ぐっ……どっ、どういう事だ!?」
パワードスラッシュを敵が持つ刀で受け止められた探。
「ぬううう、よく分からんが好機!」
クイーンアラネイアは刀を無茶苦茶に振り回し、探を追い詰める。
「先輩のあの一撃を受け止めるなんて、あの刀は……何なの? それより生徒会長! 無事ですか」
探に敵を任せてミイラ巻にされた生徒会長を助けた美香はすぐに心拍と呼吸を確かめる。
「……良かった、生きてる。だけど呼吸が苦しそうだわ!」
美香は急いで口の辺りの糸を引きちぎろうと引っ張るが、強靭な糸はとても切れそうにない。
『マーメイドハート リカバリー・ジェル!』
応急措置として回復ウォータージェルベッドを生成し、そこにミイラ巻き茜を寝かせた美香は気道確保すべく蜘蛛の糸と奮闘する。
【第34話に続く】
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