上 下
68 / 94

第68話

しおりを挟む
「ナルカミノモノ様、いかがですか?」
「キゴコチハドウダ、ナルカミノモノ?」
 ナルカミノミヤが倒されてから数日後、マヨイガポータル内のタタラの店。
 最後の一人となった五武神・カゼノミヤが待ち構える風乃宮に挑まんとするもののふ達は装備の修復整備と調整を行っていた。
「ああ、前のより軽くなった感じがするぜ……ありがとうなシルバーデストロイメン!」
「私ハシルバーデストロイメンデハナイ、デストロイメンHG80デアル。ダガソノ名前ハシンプルデトクチョウヲトラエテオリワカリヤスイ……ソシテナニヨリ浪漫ガアル。改名ヲ検討シテモヨイナ」
「お前ホンマにアンドロイドか? 中におっさんでも入っとるんちゃう?」
 ナルカミノミヤ戦で大破したデストロイアーマーを予備スーパーデストロイメン素材で補修し、デストロイメンHG80の魔物素材を組み合わせて強度はそのままに軽量化と自己修復機能も加わったデストロイアーマーMk.IIと重籠手デストロイアーム改を試着してシャドーイングする須田丸は工房主タタラとナルカミノミヤの使者としてそこを訪れたデストロイメンHG80に感謝する。

「先輩かっこいいですう! 写メさせてください!」「私もだ!」
デストロイメンHG80改め、シルバーデストロイメンがナルカミノミヤからの贈り物として探に渡した新装備でフイッティングルームから出て来た探。
「どっ、どうも……もらっておいてアレだけど、これは薄すぎじゃないか? マヨイガに挑む装備としては大丈夫なのかな?」
 五武神の白狩衣にも用いられる強大な神力を内包する霊力布で壇条学院高等部制服を完全再現した衣服『モノノフ』上に同素材で探愛用の『火のマント』を補修強化した『紅焔のマント』を羽織り、腰に3本目の太刀『麒麟(きりん)』を差した探は美香と茜の黄色い声にサービスカメラ目線を送りつつ自問する。
「ソレハシンパイナイ、ソコノカベニタッテミロ」
「えっ、ああ」
 探は壁に立ち、シルバーデストロイメンは右腕をそちらに向ける。
『デストロイガトリング』
『アイスウォール!!』『ストーンウォール!!』
 至近距離で内蔵兵器を無茶苦茶にぶっ放したシルバーデストロイメンに美香と英里子は慌ててミニ防壁を創生して身を守る。
「アニキがミンチになっちまった!」
「須田丸君! それを言うならハンバーグやろ……じゃなくて何しとるんやこのアホンダラァ!!」
『ソウサワグナ、 ミテミロ』
 デストロイガトリングを撃ち終えたシルバーデストロイメンは壁を指さす。
「……何とも、無い。だと……?」
 壁際の探は驚きのあまり腰が抜かしてはいるが、装備で完全に守られた全身を触って無事を確かめる。
「先輩! 無事で良かったです……その服ってすごいんですね!」
『ダカラ言ッタダロウ、私ノコウゲキテイドデハ傷モツカン……ムカツクナ!』
「アンドロイドって拗ねるもんやったかな? やっばリアンタの中身は……」
「おいーす、失礼するぞタタラ。ダンジョウ何とかオカルトうんちゃらのもののふ共ってまだここにいるぅ?……うっわ、なんだこの鉄が焦げた臭い! お前何やってたんだよ!」
「フウ様!」
 そんなドタバタ劇の最中に来店したのはボサボサツンツンな銀髪頭の額から1本角を生やし、大きな白い袋を肩にかけて着物を腰巻状態にした上半身裸の赤銅色で筋肉質な人型魔物だ。
「姉さま! 女子らしからぬトップレスはおやめくださいと何度言えばいいのですか!?」
 その後から浮遊移動で駆け込んだ虎毛皮胸巻きと腰巻姿で白ロングヘアの額から2本の短い角を生やした細い女性はすぐに先客の上半身に着物を被せ着せる。
「かたいこと言うなよお、ライ。ふんどし付けてるだけマシだろ?」
「ちぃともよくありません! それはモラルにして最低限の常識ですわ!」
「ふぅん……腰巻一枚の下はノーパン派のライちゃんがそれを言うんだ」
「それは……ガサッで暴れん坊なお姉さまと違って見えないから許されるのですわ!」

「あの、すみません……お2人は私達に御用でしょうか?」
 先ほどの発言からこの凸凹コンビ姉妹(?)が壇条学院オカルト研究会、マヨイガ探索隊に用事があるのだと察した探は嵐のように現れて姉妹喧嘩コントを始めた2人にそっと声をかける。
「ああっ? なんだおめぇはよお……ヒノモノ様、お初にお目にかかります! 我々はカゼノミヤ様に仕える眷族式神姉妹、ライとフウでございます!」
 話しかけて来たモヤシ男が雲隠家の末裔にして火神紋を持つもののふ達のリーダーだと気づいた2人はすぐに敬意を示すべく立ち膝の姿勢を取り、頭を下げる。
「我らの見苦しい様で雲隠様の目をお汚ししてしまい申し訳ありません!」
「大丈夫ですよ、フウさん……この程度オカルト研究会では日常茶飯事ですし……」
「なっ、なんや……なんで皆ウチを見るんや? この淑女レディーの鑑たるウチに嫉妬しとるんか? 見苦しいで?」
 探の後ろで展開を見守る3人の目線が英里子に向けられる。

【第69話に続く】
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

僕はボーナス加護で伸し上がりました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,988pt お気に入り:189

転生ババァは見過ごせない!~元悪徳女帝の二周目ライフ~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,790pt お気に入り:13,503

龍爪花の門 ― リコリスゲート ―

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:163pt お気に入り:1,395

ネトラレクラスメイト

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:34

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:34,133pt お気に入り:649

処理中です...