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第86話

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「アニキは大丈夫か!?」
 埴輪兵士の数の暴力にヤンキー喧嘩技とデストロイ装備内蔵兵器で対抗していた須田丸は遠方より聞こえる爆発音と衝撃に耳を澄ます。
「復活ポイントに戻って来ないっちゅう事は大丈夫って事や! しかしこの数の暴力はどうにかせんとあかんよ!」
 モーニングスターランスを振り回して敵を粉砕していく英里子。
「デカボ院さん! どうにかなりませんか……早く先輩を助太刀しないと」
 魔導杖をエレメントプラス・アイスで補強し、ハンマー化して振り回す美香は風矢を連射する茜に叫ぶ。
「それは私もわかっている! だが……私達にこいつら相手は分が悪すぎる、先に進めん!」
 風と水エレメント使いの自身と華咲の技でこいつらを一気に大量破壊するには連射が効かなくて魔力も大量消費する大技を何回も使わなくてはならず、須田丸の雷エレメント技はノーダメージ、呉井の十八番エレメント技・アーススパイクは同属性相殺効果によりほぼ無効化。
 エレメントの相性の悪さはさておき、埴輪兵士の体が素焼きの陶器製で武器はもろい銅剣、動作は緩慢なので呉井の武器・モーニングスターランスの振り回しと須田丸の肉弾戦&デストロイウエポンで十分対抗できるとは言えその無限召喚能力を前に体力・魔力共に有限な4人は一騎打ち中の雲隠れから確実に引き離されている。
その事実に気づいていた茜は焦りを押さえつつこの現状で出来る打開策を模索していたがひとまずは倒しても倒しても増え続ける敵を1体でも多く倒す事に専念するしかない。
「なんかこう……ウチらのエレメント合体技でオート攻撃して自壊させるサムシングを考えるんや、ヒラ部員!」
「このクソ女……」
 この戦いが終わったらアイツを絶対に華咲のスライムでくすぐり拷問公開処刑させ、泣き叫ぶ様を動画撮影してやる。絶対に負けられない決意と共に茜は考える。
「オート自壊……オート自壊……皆、エレメントプラスの準備だ!!」
「ええ!」「わかったで!」
「須田丸はマグネットプラス・ランダムだ!」
「えっ、ああ!!」
 両手に渦巻く風エレメント塊を生成していく茜の後ろで3人はマヨイガエレメント技をチャージする。
『トルネードボール!! エレメントプラス・ウインド!』
 茜が斜め上に射出した風エレメント塊球はスタンバイ中の埴輪兵士のど真ん中に着弾。
 それと同時に茜のエレメントプラスで強化されたそれはそのまま拡大して全高5、6メートルの竜巻と化す。
「エレメントプラスだ!」
『エレメントプラス・アイス!』『エレメントプラス・アース!』『マグネットプラス・ランダム!』
 茜のエレメントプラスに3つ追加上乗せされた竜巻は石礫と雹を内包して物理的破壊力増強、さらに須田丸のマグネットプラス・ランダム効果で接触する埴輪兵士にランダムにプラスかマイナスの磁力を付与。
 空からの竜巻アタックによる物理的敵被害にマグネットプラス磁力付与による斥力・引力で動きの自由を奪われ、お互いに衝突して弾きとばされ、竜巻に粉々にされるばかりの埴輪兵士ファランクスは大混乱に陥る。
「すぐに雲隠の下へ!! 私は竜巻を維持して足止めする!」
「茜さん、ありがとうございます!『ハイドロフォイル!』」
『ゴーレムハンド・ジョン!』『ヴォルトアクセラート!!』
 エレメントプラス・ウインドで超強化ツイントルネードを維持し敵陣の真ん中に突撃ルートを設けた茜に感謝しつつ3人は各々の高速移動スキルで敵陣に斬り込む。

「これは……茜さんのエレメントプラス技か!!」
 突如出現した竜巻で崩壊していく埴輪兵士達に驚き、手合わせを中断していた探とタメシヤノミコト様。
「ほほほ、まさかこのような方法でわらわの埴輪兵団を壊滅させるとは……実に愉快であるぞ!!」
 竜巻の間をすり抜けて助太刀に向かってくる3人を前に鉄扇で口元を隠しつつ、細目で優雅に笑うタメシヤノミコト様。
『ウォータースナイプ!!』
 人差し指だけ立てて重ね握った美香の手指先から細く撃ちだされた高圧噴射水はタメシヤノミコト様の両肩と腕に足の人体急所たる関節8か所を撃ち抜いて貫通。
 膝をついたタメシヤノミコト様の巫女装東にじわりと血が滲むと共に鉄扇が手から滑り落ちる。
『ゴーレムハンド・マルゲリータ!』
 そこに足元から突き上げパンチを喰らわせた英里子のゴーレムハンド・マルゲリータにガードブレイク状態のタメシヤノミコト様はあえなく打ち上げられる。
「アニキ!! 合わせてくれ『ハイパワード!』『ハイアクセラート!』」
「須田丸君、わかった!! 『ハイパワード!』『ハイパワード!』『ハイアクセラート!』
『ハイアクセラート!』」
 重籠手を神紋エレメントプラス強化済みの須田丸の意図を察した探はサポートスキルニ重強化しつつ炎エレメント塊を拳に集中させる。
『ダブルオーバードライブラッシュ!!』
「スダスダスダスダスダスダスダスダスダスダスダスダスダ!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
 須田丸が雷神紋を完全化して探の火神紋と肩を並べるパワーを手に入れた事で完成した近接パワー系合体超奥義。
 タメシヤノミコトと言う武神が可憐な少女の見た目に反してこれまで戦った来た魔物や五武神達と比べ物にならない力を持つ存在である事を理解していた2人は反撃の隙も与えず無呼吸連打を一分の隙もなく叩きこむ。

【第87話に続く】
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