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初恋の終わり
08.イリューリアの思いこみ
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クーガン公爵…王弟ザッツはイリューリアの頬にそっと触れ顔を自分にむけさせた。
イリューリアは、驚き、耳まで真っ赤になり、焦って口ごもった。
「あ、あの…クーガン公爵様…」
「ん?」
「お手…が…あのっ…お顔が近くて…」とそっと体を離そうとすると、反射的にザッツは左手をイリューリアの腰にまわしぐっと引き寄せた。
ちなみに右手はイリューリアの頬に触れたままである。
「きゃっ」と小さな声をあげてバランスを崩したイリューリアはザッツの逞しい胸にぶつかりそうにになった。
イリューリアの顔はますます真っ赤になりまるで熟れた林檎のようである。
「くくっ、すまない。わたしが怖いか?だが、どうか逃げないでもらいたい…私は貴女とまだ一緒にいたいのだ」
あまりにも初心で可愛らしい反応のイリューリアにザッツは笑みをこぼしつつ、怖がらせないようにと、そっと体を離した。
イリューリアは、ザッツの少し無遠慮ともとれる乱暴な振る舞いにうろたえ驚いたが親戚筋と言う事もあってか、それほどまでに恐ろしいとは感じなかった。
どことなく父と似ているせいもあっただろう。
「そ、そんな、怖いだなどと…。でも何故?クーガン公爵様でしたら、私などよりもっと美しくて素敵なお話し相手が…あ、もしかして父に頼まれたのでしょうか?」
ふいに、そんな考えが浮かんだ。
そうだ、社交界が初めての自分を心配した父が従弟でもあるクーガン公爵に娘のお守を頼んだに違いない!
いきなり、こんなに素敵な人がそもそも自分のような貧相な娘にダンスを申し込むこと自体ありえないではないかと確信する。
宰相の娘が誰にもダンスにも誘われず壁の花にでもなっていたら、体裁も悪いし私が傷つくと配慮してくれたに違いないと考えが思いいたった。
「え?」とザッツは眉をしかめる。
「そうなのでございましょう?でなければ、いくら公爵家の娘とはいえ私のような冴えない娘のお相手など進んでしてくださる筈もございませんもの…。私が壁の花になってしまっては面目が立たないからと従兄である父に私の相手をするように頼まれたのではございませんか?私、分はわきまえております。私の事などお気になさらず。どうか…」
「ち、ちょっと待て!」ザッツはイリューリアの言葉を途中で遮った。
「え?」
「なぜ、そうなる?」
「は?」
「貴女は、ご自分が美しい事を知らないのか?」と呆れたようにザッツが言うと、イリューリアは、その言葉が理解できずにまた首を傾げた。
「は?」
「は?ではない。大体、貴女の周りのものは、貴女を美しいとは誰も言ってはこなかったというのか?」
「まぁ、それは父や召使たちは、私を喜ばせようと褒めてはくれますが、さすがに身内びいきの言葉を鵜呑みにするほど子供でではありませんもの」と寂しそうに微笑んだ。
「はぁあ?何を言ってる。身内びいき?じゃあ、父親や召使以外は?貴女が今まで関わった者達は皆、目が悪いのか?それとも口がきけぬ者ばかりだったのか?」
「まぁ、私、そういえば12歳の頃から屋敷からほとんど出た事がありませんでしたし家の者以外と接する事など、今までございませんでしたわ…。でもクーガン公爵様、そんなに無理をして褒めて下さらなくても鏡は見たことがございますわ。全体的に色素の薄い目立たない幽霊みたいな地味な私ですもの」
「なっ、何を言ってるんだ?」とザッツは思わず呆れて大きな声をあげてしまった。
ザッツは思った。
自分が美しいと鼻にかけるような女は嫌だが、イリューリアのそれは、ちょっと嫌味なぐらい自信がなさすぎだろう。
むしろ可哀想なほどの思いこみである。
淡い水色の瞳も光沢のある白銀の髪もこの上なく美しくまるで天使のようだと言うのに…。
ザッツはこのイリューリアのとんでもなく見当違いな思いこみを覆したいとそう思った。
イリューリアは、驚き、耳まで真っ赤になり、焦って口ごもった。
「あ、あの…クーガン公爵様…」
「ん?」
「お手…が…あのっ…お顔が近くて…」とそっと体を離そうとすると、反射的にザッツは左手をイリューリアの腰にまわしぐっと引き寄せた。
ちなみに右手はイリューリアの頬に触れたままである。
「きゃっ」と小さな声をあげてバランスを崩したイリューリアはザッツの逞しい胸にぶつかりそうにになった。
イリューリアの顔はますます真っ赤になりまるで熟れた林檎のようである。
「くくっ、すまない。わたしが怖いか?だが、どうか逃げないでもらいたい…私は貴女とまだ一緒にいたいのだ」
あまりにも初心で可愛らしい反応のイリューリアにザッツは笑みをこぼしつつ、怖がらせないようにと、そっと体を離した。
イリューリアは、ザッツの少し無遠慮ともとれる乱暴な振る舞いにうろたえ驚いたが親戚筋と言う事もあってか、それほどまでに恐ろしいとは感じなかった。
どことなく父と似ているせいもあっただろう。
「そ、そんな、怖いだなどと…。でも何故?クーガン公爵様でしたら、私などよりもっと美しくて素敵なお話し相手が…あ、もしかして父に頼まれたのでしょうか?」
ふいに、そんな考えが浮かんだ。
そうだ、社交界が初めての自分を心配した父が従弟でもあるクーガン公爵に娘のお守を頼んだに違いない!
いきなり、こんなに素敵な人がそもそも自分のような貧相な娘にダンスを申し込むこと自体ありえないではないかと確信する。
宰相の娘が誰にもダンスにも誘われず壁の花にでもなっていたら、体裁も悪いし私が傷つくと配慮してくれたに違いないと考えが思いいたった。
「え?」とザッツは眉をしかめる。
「そうなのでございましょう?でなければ、いくら公爵家の娘とはいえ私のような冴えない娘のお相手など進んでしてくださる筈もございませんもの…。私が壁の花になってしまっては面目が立たないからと従兄である父に私の相手をするように頼まれたのではございませんか?私、分はわきまえております。私の事などお気になさらず。どうか…」
「ち、ちょっと待て!」ザッツはイリューリアの言葉を途中で遮った。
「え?」
「なぜ、そうなる?」
「は?」
「貴女は、ご自分が美しい事を知らないのか?」と呆れたようにザッツが言うと、イリューリアは、その言葉が理解できずにまた首を傾げた。
「は?」
「は?ではない。大体、貴女の周りのものは、貴女を美しいとは誰も言ってはこなかったというのか?」
「まぁ、それは父や召使たちは、私を喜ばせようと褒めてはくれますが、さすがに身内びいきの言葉を鵜呑みにするほど子供でではありませんもの」と寂しそうに微笑んだ。
「はぁあ?何を言ってる。身内びいき?じゃあ、父親や召使以外は?貴女が今まで関わった者達は皆、目が悪いのか?それとも口がきけぬ者ばかりだったのか?」
「まぁ、私、そういえば12歳の頃から屋敷からほとんど出た事がありませんでしたし家の者以外と接する事など、今までございませんでしたわ…。でもクーガン公爵様、そんなに無理をして褒めて下さらなくても鏡は見たことがございますわ。全体的に色素の薄い目立たない幽霊みたいな地味な私ですもの」
「なっ、何を言ってるんだ?」とザッツは思わず呆れて大きな声をあげてしまった。
ザッツは思った。
自分が美しいと鼻にかけるような女は嫌だが、イリューリアのそれは、ちょっと嫌味なぐらい自信がなさすぎだろう。
むしろ可哀想なほどの思いこみである。
淡い水色の瞳も光沢のある白銀の髪もこの上なく美しくまるで天使のようだと言うのに…。
ザッツはこのイリューリアのとんでもなく見当違いな思いこみを覆したいとそう思った。
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