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第三章
1 反省と逡巡
しおりを挟む街の彩りが変わった。すっかりと。
紅葉から落葉まであっという間だと嘆いたあの日から、もう三週間が過ぎているんだから当たり前と言えば当たり前なんだけど。
「クリスマスカラーが目に沁みるなぁ」
とぼとぼと歩く道筋には、クリスマス定番の三色が散りばめられている。多くの店舗がクリスマスセール中だ。
セピア色の季節に入った世界を暖かく彩る定番カラーは例年なら僕の心を浮き立たせてくれるものだけど、今年は違う。それどころじゃない。
イベントを楽しむどころじゃない。
あの日、秀次くんの恋の相手と対面した。させられてしまった。
あまりにショックで、幼稚な僕は二人の前から逃げ出した。途中で負傷して、結局そのまま、助けてくれた島津先生に全ての連絡を任せて、そこから連れ出してもらった。
助かった、と思った。
病院へ行くという名目で、秀次くんが恋する相手がいる場から離れられた。
「でも、どう考えても、あれは良くなかったよなぁ」
さすがに、すぐに反省した。自分の都合でレクリエーションの場から逃げ出すなんてことは、やってはならないことだった。
学校を代表して行ったボランティア活動を放棄した形になったんだ。僕は、ばかだ。
今更だけど、すごく反省してる。
「謝りたい……けど……」
無理。
秀次くんに謝りたい。それは本心。
秀次くんが僕たち五年一組チームの班長だったと、その後に桧山に聞いた。なら、自分がやらかしたことを、僕はきちんと謝罪するべきだ。
「でもさ、怖いんだよ」
謝罪に行きたい。行くべきだとわかってる。
けど、怖くて行けない。桧山にはすぐに謝れたのに……。
いつもの僕なら、部活が無い日は必ず陸上部の練習見学に行ってる。ほんの少しでもいいから彼の傍に近づきたくて必死だった。
けれど今は、わずかな触れ合いをなんとか手にしようと足掻いていた、それもしていない。
もう三週間、彼の前に顔を出せていない。
コーラス部の冬の恒例イベント、チャリティーコンサートの練習がいよいよ大詰めにきているから、という理由をつけて、行きたいけど謝罪には行けていない、という建前を作ってしまっている。
「……いや、行かない、が正解なんだよ。僕はそういうヤツだ」
卑怯者なんだ。
本当に、僕という人間はどうしようもない。
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