80 / 83
最終章。勇者との御前試合
80話。勇者アベルの光の聖剣を両断する
しおりを挟む
「おもしろい! その剣が切り札だってか!?」
怪物勇者アベルが手を掲げると、太陽のように眩い光の大剣が出現した。
それは俺も良く知っているゲーム中最強の聖剣だった。
「勇者最強の力! 光魔法の奥義、聖剣【カリバーン】だぁああああッ!」
アベルが得意の絶頂で叫ぶ。
「あっ、あれは! 私のドラゴンゾンビを滅ぼす寸前まで追い詰めた光の大剣!?」
解説席のアンジェラが、恐怖で息を飲んだ。
「ハハハハハッ! そうだぁあああ! こいつを魔王の力を手にした僕が振るえば、世界樹だろうがなんだろうが断ち切れないモノは無い! 究極の聖剣の力を見せてやる!」
魔王と勇者の力を融合させて振るう聖剣の破壊力は、まさに世界最強だろう。
だが、俺に恐れはない。
今からこの【世界樹の剣】で放つ技こそ、俺の集大成──コレに勝る技は無いと自負している。
「その剣を真っ二つにして、真の絶望を味合わせてやる! さあ勇者の前にひれ伏せえぇええッ!」
アベルが雄叫びと共に突っ込んでくる。
たった一歩で間合いが潰される神速の踏み込み。
俺の頭上に聖剣【カリバーン】が振り下ろされた。
「カイン兄様、勝ってください!」
セルヴィアの真摯な祈りが響く。
その瞬間、【世界樹の剣】を覆う鞘が生成され、納刀状態となった。
この武器の真骨頂は、【世界樹の聖女】の力を宿したことで、遣い手の意を汲んで形態が変化することだ。
俺はランスロットから剣の奥義として【居合い】を伝授された。しかし、この技には剣を鞘に納める必要があるという致命的な弱点があった。
では、その動作を省くことができたら、どうだろうか?
超神速の居合い斬りを、一瞬で放つことができる。この技は絶対に見切れない。
「はぁあああああッ!」
鞘走りを使って超加速させた剣が、光の弧を描く。
キンッ! と硬質な音を立てて、最強の聖剣【カリバーン】が両断された。
「な、何だとぉおおおッ!?」
俺の刀はそのままアベルの胸板を深く斬り裂いた。
心臓を断ち切ってやろうかと思ったが、【カリバーン】との激突で、刀の威力も減衰されて、そこまでは叶わなかった。
アベルはドス黒い血を撒き散らしながら、慌てて飛び退いて距離を取る。
「や、やりましまたぁあああッ! 勇者最強の聖剣を、カイン選手が撃ち破りましたぁああああッ!」
「ちょ、ちょっとエリス!?」
実況のエリス姉上は興奮のあまり、隣のアンジェラに抱き着いていた。
「うぉおおおおおッ! これが刀を使った真なる【居合い】でありますかぁああ!? このランスロット感服いたしましたぞぉおおお!」
「真なる【居合い】!? ランスロットさん、それはどういうことでしょうか!?」
「はっ、エリスお嬢様! 元々【居合い】とは、東方の剣術から生まれた技。反りのある片刃の刀で使ってこそ、真価を発揮するのです!」
その通りだ。
相性の良い武器を使うことで、技のポテンシャルが最大限に引き出され、完成形へと至る。
「これが俺が到達した最強の剣技だ!」
「ち、ちくしょうぉおおおお! き、傷が再生しないだとぉおおおッ!?」
アベルは光の回復魔法を必死にかけるが、その傷口は開いたままだった。
「これが世界樹に宿った破邪の力です。【世界樹の剣】で斬られた魔物は、回復不能のダメージを負います!」
セルヴィアが胸を張って凛々しく叫ぶ。
その一言に、会場中から大歓声が上がった。
「つ、つまりは勇者アベルは不死身では無くなった!?」
「そうか。その通りでありますな、アンジェラ皇女!」
解説席で、アンジェラとランスロットが身を乗り出して喜んでいる。
「残念だったな勇者アベル! お前は力の代償に最大の長所を失った!」
安易な方法で強くなろうとした者の末路だ。
「こ、この僕を……世界最強の勇者アベルをクソ凡人ごときが見下すなぁああああッ!」
アベルは敗北を拒絶するかのように絶叫した。
「スピードもパワーも、僕の方が圧倒的に上なんだ! まだ負けていない、僕は負けていない! 僕は神をも超える存在なんだぁああああッ!」
アベルは、まだ闘志に満ちている。
その不屈の精神だけは、まさに勇者の貫禄だな。
その時、突如、俺の頭の中にシステムボイスが鳴り響いた。
『剣術スキルの熟練度を獲得しました。
剣術スキルがレベル6に上昇しました!
剣技の命中率と攻撃力が100%上昇します!』
「なっ!?」
あまりに意外なことだった。
剣術スキルのレベル上限は5のハズだ。
いや、この世界のスキルレベル上限は5で統一されている。
剣術レベル6など、システム的に有り得ない。
「……いや、待てよ、そうか!」
この世界に転生する直前、ゲームの公式運営から最後の大型アップデートのアナウンスがされていた。
記憶がおぼろげだが、そのアップデート内容に、確か『スキルレベル6の解禁』があったような……
「まだまだ、やりこみ要素満載だな!」
思わずゲーマーとしての血が騒いでしまった。
何周もクリアしたけど──この世界は、まだまだ俺の知らない謎と冒険に満ち溢れているんだ。
怪物勇者アベルが手を掲げると、太陽のように眩い光の大剣が出現した。
それは俺も良く知っているゲーム中最強の聖剣だった。
「勇者最強の力! 光魔法の奥義、聖剣【カリバーン】だぁああああッ!」
アベルが得意の絶頂で叫ぶ。
「あっ、あれは! 私のドラゴンゾンビを滅ぼす寸前まで追い詰めた光の大剣!?」
解説席のアンジェラが、恐怖で息を飲んだ。
「ハハハハハッ! そうだぁあああ! こいつを魔王の力を手にした僕が振るえば、世界樹だろうがなんだろうが断ち切れないモノは無い! 究極の聖剣の力を見せてやる!」
魔王と勇者の力を融合させて振るう聖剣の破壊力は、まさに世界最強だろう。
だが、俺に恐れはない。
今からこの【世界樹の剣】で放つ技こそ、俺の集大成──コレに勝る技は無いと自負している。
「その剣を真っ二つにして、真の絶望を味合わせてやる! さあ勇者の前にひれ伏せえぇええッ!」
アベルが雄叫びと共に突っ込んでくる。
たった一歩で間合いが潰される神速の踏み込み。
俺の頭上に聖剣【カリバーン】が振り下ろされた。
「カイン兄様、勝ってください!」
セルヴィアの真摯な祈りが響く。
その瞬間、【世界樹の剣】を覆う鞘が生成され、納刀状態となった。
この武器の真骨頂は、【世界樹の聖女】の力を宿したことで、遣い手の意を汲んで形態が変化することだ。
俺はランスロットから剣の奥義として【居合い】を伝授された。しかし、この技には剣を鞘に納める必要があるという致命的な弱点があった。
では、その動作を省くことができたら、どうだろうか?
超神速の居合い斬りを、一瞬で放つことができる。この技は絶対に見切れない。
「はぁあああああッ!」
鞘走りを使って超加速させた剣が、光の弧を描く。
キンッ! と硬質な音を立てて、最強の聖剣【カリバーン】が両断された。
「な、何だとぉおおおッ!?」
俺の刀はそのままアベルの胸板を深く斬り裂いた。
心臓を断ち切ってやろうかと思ったが、【カリバーン】との激突で、刀の威力も減衰されて、そこまでは叶わなかった。
アベルはドス黒い血を撒き散らしながら、慌てて飛び退いて距離を取る。
「や、やりましまたぁあああッ! 勇者最強の聖剣を、カイン選手が撃ち破りましたぁああああッ!」
「ちょ、ちょっとエリス!?」
実況のエリス姉上は興奮のあまり、隣のアンジェラに抱き着いていた。
「うぉおおおおおッ! これが刀を使った真なる【居合い】でありますかぁああ!? このランスロット感服いたしましたぞぉおおお!」
「真なる【居合い】!? ランスロットさん、それはどういうことでしょうか!?」
「はっ、エリスお嬢様! 元々【居合い】とは、東方の剣術から生まれた技。反りのある片刃の刀で使ってこそ、真価を発揮するのです!」
その通りだ。
相性の良い武器を使うことで、技のポテンシャルが最大限に引き出され、完成形へと至る。
「これが俺が到達した最強の剣技だ!」
「ち、ちくしょうぉおおおお! き、傷が再生しないだとぉおおおッ!?」
アベルは光の回復魔法を必死にかけるが、その傷口は開いたままだった。
「これが世界樹に宿った破邪の力です。【世界樹の剣】で斬られた魔物は、回復不能のダメージを負います!」
セルヴィアが胸を張って凛々しく叫ぶ。
その一言に、会場中から大歓声が上がった。
「つ、つまりは勇者アベルは不死身では無くなった!?」
「そうか。その通りでありますな、アンジェラ皇女!」
解説席で、アンジェラとランスロットが身を乗り出して喜んでいる。
「残念だったな勇者アベル! お前は力の代償に最大の長所を失った!」
安易な方法で強くなろうとした者の末路だ。
「こ、この僕を……世界最強の勇者アベルをクソ凡人ごときが見下すなぁああああッ!」
アベルは敗北を拒絶するかのように絶叫した。
「スピードもパワーも、僕の方が圧倒的に上なんだ! まだ負けていない、僕は負けていない! 僕は神をも超える存在なんだぁああああッ!」
アベルは、まだ闘志に満ちている。
その不屈の精神だけは、まさに勇者の貫禄だな。
その時、突如、俺の頭の中にシステムボイスが鳴り響いた。
『剣術スキルの熟練度を獲得しました。
剣術スキルがレベル6に上昇しました!
剣技の命中率と攻撃力が100%上昇します!』
「なっ!?」
あまりに意外なことだった。
剣術スキルのレベル上限は5のハズだ。
いや、この世界のスキルレベル上限は5で統一されている。
剣術レベル6など、システム的に有り得ない。
「……いや、待てよ、そうか!」
この世界に転生する直前、ゲームの公式運営から最後の大型アップデートのアナウンスがされていた。
記憶がおぼろげだが、そのアップデート内容に、確か『スキルレベル6の解禁』があったような……
「まだまだ、やりこみ要素満載だな!」
思わずゲーマーとしての血が騒いでしまった。
何周もクリアしたけど──この世界は、まだまだ俺の知らない謎と冒険に満ち溢れているんだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,500
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる