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内政親愛編

17話

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「もう!
 御子様は無理難題を仰られます。
 このような状況で眠れるわけがないではありませんか!
 眠ると飢えで苦しむ民の夢を見てしますのですから」

 側仕えさえ下がらせたアリアンナは、一人寝室でプリプリ怒っていた。
 アリアンナもちゃんと眠らなければいけないことは分かっていた。
 今自分が倒れることが最も国を混乱させ、民を不幸にすると分かっていた。
 分かってはいたのだが、その通りにはやれないのだ。
 今も飢えに苦しむ人が多くいると思うと、好物であっても喉を通らないのだ。
 悪夢にうなされ眠れないのだ。

 だが、そんなアリアンナを眠らせるべく、クリスティアンが動いた。
 今アリアンナが使っている寝室は、前皇帝、いや、歴代の皇帝が使っていた最も護りの魔法が強く働いている部屋だ。
 しかもその部屋に、クリスティアンが魔法で隠し部屋を作り、アリアンナとアリアンナを絶対に裏切らない者だけしか入れない、結界魔法を施していたのだ。
 はっきり言って過保護である。

 クリスティアンの過保護はさらに強くなる。
 密かにアリアンナの寝室の隣室に現れると、強制的に強力な眠りの魔法を使ったのだが、しかもその上から夢を見ない特殊な魔法を重ね掛けしたのだ。
 伝説の魔獣である獏を研究して創り出した、クリスティアンだけが使える秘術なのだが、惜しげもなく使うのだ。

「フランチェスカ」

「はい!
 皇叔!」

 何の前触れもなく表れたにもかかわらず、皇帝陛下の側近達は一切咎めなかった。
 誰もがクリスティアンが皇帝陛下にとって特別な存在だと知っていた。
 新たに側近に取立てられた者達も、皇宮で行われた一連の騒動で、クリスティアン皇叔が皇帝陛下を助け戴冠にまで助力した事を、その場で皇帝陛下と一緒に助けられた姫騎士達から聞いていた。

 まあ、神々の御子であることを知っているのはアリアンナだけだ。
 これだけは皇帝しか知ってはいけない秘中の秘だからだ。
 だから想像逞しい女官の中には、クリスティアンの事を皇帝陛下の命の恩人であると同時に、愛人だと妄想して楽しんでいた。

「これを与えておく。
 一口飲めば一食食べたのに相当するほど栄養価の高いスープだ。
 皇帝陛下が目覚められたら飲ませてあげてくれ。
 三人ほど毒見をしろ」

「承りました。
 あの、その、でしたら、今飲んでいただいた方がいいのではありませんか。
 皇帝陛下は最近はあまり眠れなくなっておられますので、今も眠れず苦しんでおられるはずです」

「心配いらぬ。
 魔法で朝まで熟睡できるようにしてきた」

 過保護である。
 しかも姫騎士や側仕えに思いっきり誤解させてしまっていた。
 みなクリスティアンが皇帝陛下の寝室に出入り自由だと思ってしまった。
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