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第1章

熱く長い1日の収支

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「私はもうこれで大丈夫です」

「お腹一杯になった~」

「花子もお腹一杯になった~」

「そうか、じゃあそろそろホテルに行こうか?」

「勝也さんはお腹一杯になられたんですか?」

「小腹が空いたらコンビニで何か買うよ」

「そんな、時間ならまだありますし、満腹になるまで食べられてください」

「ねむい~」

「花子もねむい~」

「旦那さん、夜食用に幾つか握りましょうか?」

「そうしてくれるかい?」

「すし~」

「花子もすし~」

「夜食で食べたい物が有るのかい?」

「厚焼き玉子~」

「花子も~」

「綾香さんもどうですか? 食べられなかったら僕が食べますから」

「はい、あの、お願いします」

「じゃあ先ほどのように握らせてもらって、お土産用の折に詰めさせてもらいますね」

「頼みます」

「いか~」

「花子もいか~」

「あかがい、つぶがい、いわし、しらうお~」

「花子もあかがい、つぶがい、いわし、しらうお~」

「あまえび、えんがわ~」

「花子もあまえび、えんがわ~」

「あぶりさーもん、さーもんまよねーず、あぼがどさーもん~」

「花子もあぶりさーもん、さーもんまよねーず、あぼがどさーもん~」

「あぶりいわし、うなぎ~」

「花子もあぶりいわし、うなぎ~」

 おいおいおい、太郎君も花子ちゃんも凄いな、俺が美味しいと思った海の物だけ注文している。味覚が敏感なんだろうか?

 いや、綾香さんの感情を的確に読み取っていたように、俺の心の中も読みとって、俺が美味しいと思った物を注文してくれているのかもしれない。

「おじさんあれはなに?」

「あれはホタテ貝だよ」

「あれも~」

「花子もあれ~」

「大将、この子達が食べたい物1貫づつ4つ握ってお土産に加えて下さい」

「承知しました」

「あれも~」

「花子もあれ~」

「はい、ハマチですね」

「あれも~」

「花子もあれ~」

「葱トロですね」

 この後も太郎君と花子ちゃんは、食べた事のないものを沢山注文していった。鉄火巻き、白身魚のカルパッチョ、マグロ、中トロ、アワビ、中落ち、鯵、とてもじゃないが食べ切れないと思うのだが、欲しいと言うのを止める訳にはいかない。何といっても金運をもたらす座敷童様なのだから。

 太郎君と花子ちゃんは妖怪の所為か、全然疲れた様子を見せないが、困った事に俺はヘロヘロだ。綾香さんも表情には出さないようにしているが、明らかに疲れているのが見て取れる。近すぎて気が引けるのだが、荷物も多いしタクシーを使うことにした。現金を減らしたくないので、たった420円だったがカードで支払わせてもらった。引き落としは1カ月以上先になるしポイントも付く、何よりこれから大金が振込まれるネット銀行から引き落とされるのがいい。

「ついた~」

「花子もついた~」

「こらこら、もう遅いんだから騒ぐんじゃないよ」

「予約していた山本勝也と申しますが」

「はい、御待ちしておりました山本様、御予約では大人2人に5歳児の方が2人と御伺いさせていただきましたが、それで宜しいですか?」

「ええ、それで間違いありません」

「今回はフォースルームを4人分で予約して下さいましたが、ツインを添い寝で予約して頂く事も可能でございます」

「大人2人分の料金で4人が泊まれると言う事ですか?」

「左様でございます」

「次に利用させていただく時は、その方法を考えさせて頂きます」

「はい、料金の方は1万1500円をチェックイン時に支払わせていただくのですが?」

「このカードでいいですか?」

「はい、大丈夫です、では暗証番号を御願いいたします」

「はい」

「サインを御願いいたします」

「はい」

「こちらがルームキーになります、お部屋は4階の411号室になります」

「ありがとうございます、じゃあいこうか」

「はい」

「おへや行く~」

「花子もいく~」





「せえま~い」

「せまいねぇ~」

「いやはや、本当に狭いですね」

「はい、ちょっと狭いですね」

「花子とねるぅ~」

「花子も太郎とねるぅ~」

 太郎君と花子ちゃんは、シングルベットを2台ひっつけて並べてる上に乗って飛び跳ねている。そうなのだ、狭い部屋に4つのシングルベッドを入れてあるので、2台づつひっつけて並べているのだ。つまり太郎君と花子ちゃんが2台1つとも言えるベッドを使うとなると、同じく2台ひっついたベッドを俺と綾香さんが並んで使う事になる。

「おじさんうれしぃ~」

「お姉ちゃんもうれしぃ~」

「こ、こ、こ、こら! 何を言ってるんだ!」

「なにがぁ~」

「なにがぁ~」

「俺はともかくお姉ちゃんに恥をかかせるんじゃありません」

「うそついてないもんねぇ~」

「花子もうそついてないもんねぇ~」

「あの、いいんです、勝也さん」

「いえ、でも、その」

「本当にいいんです」

「おふろはいるぅ~」

「花子も一緒におふろはいるぅ~」

「ちょっと待ちなさい、2人で一緒に入るのはいいけど、頭や身体は洗えるのか?」

「あらえるもんねぇ~」

「花子もあらえるもんねぇ~」

「おじさんもお姉ちゃんといっしょに入りたぃ~」

「お姉ちゃんもおじさんといっしょに入りたぃ~」

「こらぁ~!」

「「わぁ~」」

「いやもう子供の言う事は困ったもんですね」

「はい、でも、勝也さん」

「え?、なんですか?」

「本当なんですか?」

「え? 何がですか?」

「本当に私と一緒に入りたいんですか」

「え~と、そのぉ~」

「そうですよね、やっぱりそうですよね、私みたいな暗くて何の取り得もない女に興味を抱いてくれる男性なんかいないですよね」

「そんな事はないです! 心から一緒にいたいと思っています!」

「本当ですか?」

「本当です、妖怪に誓って嘘じゃありません!」

「え? 妖怪に誓ってですか?」

「そうです、僕に取ったら神や仏より妖怪の方が信じられるし、祟りが心底怖い相手です」

「やっぱり勝也さんは面白い方ですね」

「そうですか? そうかもしれませんね」

 ありゃ?

 おいおいおい、ここで瞳を閉じるのは止めてくれよ。

 わ、わ、わ、ドキドキしてきたよ。

 しっかりしろ俺!

 いくら相手が娘のように若くても、俺は五十親父だぞ、ビビってたら沽券にかかわるぞ!

 ここはビシッと決めないと、それこそ綾香さんを傷つけてしまうんだぞ。

 ちゃっちゃと度胸決めていったらんかい!

「財布の現金」1000万はリュックサックの中
11/11
ホルモン煮  :     2000円:
ジャンボ焼き鳥:     1600円:
水沢競馬場  :          :    24660円
勝カレー   :      700円:
中華ざる   :      500円:
ラーメン   :      500円:
交通費    :      560円:


「カードを利用したネット銀行の入出金」
11/11
水沢競馬場  :          :   286250円
タクシー代  :     1450円:
交通費    :    39180円:
回転寿司   :    18792円:
ビジネスホテル:    11500円: 
タクシー代  :      420円:
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