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第六章

第87話:支援

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「まずは食糧を支援させてくれ。
 集落を失った状況では食料の確保と保存が難しかったんじゃないか」

 アルファにそう言わせると。

「おお、それは助かる。
 それと図々しくて申し訳ないのだが、周囲の警戒を頼めないだろうか。
 低レベルの魔獣や魔蟲を狩ること自体は難しくないのだが、火を使ったりすると亜竜や高レベル魔獣が襲いかかってくるんだ。
 集落を失った状態では安心して食事もできない。
 アルファ達に護ってもらえれば女子供や老人も安心してゆっくり食事ができる」

 オーク族最強の戦士ビリルギルドが何の躊躇もなく言ってくる。
 誇り高い性格のコボルト族とオーク族は、どうしても弱みを人に見せない。
 しかもこちらから支援しようとすると怒り出す場合すらある。
 こう言う風にぶっちゃけて話してくれると助かる。
 持って生まれた性格なのか、誰にも負けない強さからの自信なのか。

「分かった、任せてくれ。
 なにも気にせずゆっくりと食べてくれ。
 ここでいいのなら臨時の集落を作ってくれてもいい。
 俺達の誰か一人が残って手助けしよう」

「そうか、頼むよ。
 その代わり俺達もできるだけ魔石と魔晶石を集めるよ」

 コボルト族とオーク族の大族長を無視して約束しているが、大丈夫か。
 
「参ったな、これでは誰が大族長なのか分からんぞ。
 いい加減もう族長を代わってくれてもいいだろう」

 オーク族の大族長デイヴィッドが苦笑いしている。
 この大凶事に大族長の地位を譲ろうとしたのだろう。

「馬鹿な事を言わんでください、大族長。
 俺は大戦士長の役目を頂いているんだ。
 何時死ぬか分からない戦士が大族長を兼任できるわけがないでしょ。
 俺が前線に出ないと、死ななくてもいい人間が死ぬ事になる。
 それに今アルファ殿と話したのは戦士同士の約束事だよ。
 オーク族と人族の契約ではなく、個人と個人の漢気からの盟約さ」

 流石大戦士長ビリルギルドだ。
 オーク族全体に負担をかけることなく、いち個人の約束でオーク族とコボルト族を救おうとしている。

「待ってくれ、ビリルギルド殿だけに負担をかけ責任を負わせる訳にはいかん。
 この盟約はオーク戦士全体で背負わせてもらう。
 元々戦士は女子供を護るためにいるのだからな」

 他のオーク戦士達も誇りを刺激されたようだ。
 黙っていられなくなって加わってきた。
 こうなるとこの後の流れも予測がつくな。

「待ってくれ、俺達にだって誇りがあるんだ。
 あんた達だけに責任と負担を背負わせる訳にはいかない。
 俺達も魔石と魔晶石を集める」

 コボルト族の戦士、ビクトリア達が加わってきた。
 大族長の娘なのに今でも最前線で戦っているようだな。
 さて、俺もやるべき事を急いでやるか。
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